第220話 Side 佐和

 うっ・・・・気持ち悪い・・・・

 ある日、それは突然来たわ。


 これはひょっとして?と期待したけれど、違った・・・・

 トイレで妊娠検査薬を使用したけれど・・・・線は現れなかった・・・・

 そう、私、かなり期待しちゃっていたわ。だから・・・・ショックで寝込んでしまった・・・・

 負の連鎖は怖い。落ち込んで寝込むと何故か体調がどんどん悪くなるのよね。

 生理もきていなかったから・・・・


 最近は何を食べても駄目。

 臭いが駄目。味も駄目。

 何故かトマトとヨーグルトは大丈夫だったわ。


 これ悪阻よね・・・・?でも・・・検査薬反応なかった・・・・

 そして・・・・私がこれほど妊娠を焦る理由・・・・それは・・・・私の人生、嘘だらけだから。


 私は、自分で言うのもなんだけれど、容姿に恵まれたわ。親に感謝ね。

 ただ、油断するとお腹が・・・・毎日の運動、美容が欠かせない。

 日課のヨガ、これが無ければこのプロポーションは維持できなかったのじゃあないかしら?

 この世界に来てからも、密かに続けている。


 繁在家さんや安楽座さんは、どうやったらその素敵なプロポーション維持できるんですか!と聞いてくるけれど、努力なのよ・・・・正直私の事を何か勘違いしているわ。それを壊すのも申し訳ないので・・・・秘密に。

 しかも・・・・あの2人レベルが高いのよ?何もしていないらしいけれど、何もしないであのスタイル?こっちこそ聞きたい・・・・


 そして・・・・頑張って、未国大高校の教師になれたけれど、この学校の生徒、先生は皆裕福。私以外は・・・・


 私もお給料は沢山頂いてるけれど、殆どは親の借金の返済に充ててるわ。

 ここまで育ててくれた両親に感謝しているけれど、そろそろ・・・・


 いつも私の服が、素敵と生徒たちは言ってくれるけれど、しかもどこのブランドですか?と聞いてきますが・・・・

 ノーブランド、メイドイン前重佐和なのよ。


 古着屋で、ブランドの服を格安で仕入れ・・・・もう何シーズン前のか分からないけれど・・・・それを分解し、生地はどうなのか、縫製はどうなのか、型紙を作り、最新のブランド服の生地を見て、それに近い生地を購入、自ら作った型紙を使い、裁断、縫製。

 勿論、最新のデザインに似たようにしているの。

 偽ブランド?いえ・・・別にどのブランドとか誰にも言えないわ。


 普通に購入すると高くつくけれど、生地だけでいいので、わずかな金額で、驚くほど服が作れるの。


 そして何回か着ては、また違うデザインに加工。


 カバンは・・・・憧れるけど、高くて買えないわ・・・・だから、オリジナルを自分で作ったわ。使いやすいように。

 生徒がカバンはどうされたのですか?と聞いてくるけど、まさかお金が無いから自作したとも言えず・・・・趣味なのよ?と言ってかわしたわ。


 何故か私もやってみます!と言われ・・・・


 私に近づく異性は・・・ほとんどが顔と身体しか見ていないわ。確かに見た目には自信があるけれど・・・・何故か碌なのが周りにいない。いても・・・・妻子あり。


 もう疲れてしまって。そんな折、このトラブルに巻き込まれ・・・・士門さんと出会ったわ。

 正直、なぜあんな良い人と結ばれたのか・・・未だに疑問だけれど・・・・士門さんを見ると、何故私はあんな事を考えたのだろうと、思ってしまうわ。


 士門さんは存在そのものが魅力にあふれ、何故か周りには見目麗しい女性ばかりが集まる・・・・競争率が高いわ。

 だけど・・・・運が良かったのか、私の年齢は士門さんと近く、これが私のアドバンテージ。


 気が付けば・・・・士門さんと結婚した女性の中では、最初に抱かれたわ。あれだけ素晴らしい士門さんの、この中で最初だったのは、嬉しい。

 気が付くと、もう私は士門さんなしでは生きられなくなってしまったわ。

 どうしてかしら?(スキルの所為です”いえ!女神の設定ミスです!”)何か聞こえる?


 士門さん曰く、女神のいい加減な設定のせいだと言うけれど、もはやどうでもいいかな。


 まだ士門さんは気が付いていないけれど・・・・お腹の中には、愛の結晶がいるの。


 最近、もう一度試したら・・・・濃い線が現れ、歓喜したわ。


 今はお店の開業準備で忙しいので、何時言おうか悩んでいるのよね。


 でも・・・・こんな女を孕ませて、よかったのかしらと不安に思う時もあるわ。

 嘘で塗り固めた、三十路女。私の本性を知ったらどうなるか・・・・?


 でも、見捨てないでね、旦那さま・・・・そしてパパ・・・・

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