第182話 俺に出来る事
あの少女を助ける事はできるだろう。
あそこにいた、他の不幸な人も助ける事はできる。
だが・・・その後はどうする?
助けてはい、さようならでは再び同じ事になるだろう。
それに、あの人は助けたのに何故私は助けてくれないの?という人も出てくるだろう。
付け加えるならば俺が知らないだけで、この都市でも悲惨な事になっている人は沢山いるはずで。
その人達を全員救う事が出来るのか?
そう考えていた時、せつがこちらを見つめてる。
目が合う。
「あの、しもんさん、私はまだ人生経験が豊富ではありませんが、全てを背負い込む必要はないのではないでしょうか?」
俺はそう言われてハッとなる。
聖人君子でもあるまいに、全ての人を救おうとか、そんな大それた事をする必要はない。
そして今度はみつえが・・・・
「知らない人を助けても、それは助けにならないのじゃないかな?助けた相手は、助けてくれた人に感謝したいだろうし恩を返そうとするのじゃない?だけど、知らない所で勝手に助けられたのは、それは救助ではなく・・・・何て言ったかな?忘れちゃった・・・・」
みつえのいう事は・・・・わかる。
そうだよな。
そう・・・・知らないうちに、知らない人から勝手に施しを受ければ・・・・そりゃあ運がいいってもんだ!となってしまうからなあ。
それでは意味がない。
そして佐和が俺に聞く。
「士門さんは、助けた相手に感謝されたいとは思っていないのですよね?その・・・感謝されるために助ける、のようなのでは・・・・」
「ああ、それは違う。」
「よかった・・・・善意の押し付けは助けた側の自己満足になってしまいますもの。士門さんが考えているのは・・・・相手に手を差し伸べ、自立させる。特に・・・・見返りは求めないけれど、相手にはそれ相応の何かをしてもらう・・・・それも相手の為に・・・・」
「その通りだな。助けっぱなしでは、何かあった時にまた頼られる。そして・・・・独り立ちできず、何時までも俺に依存してしまう・・・・これでは折角助けた意味がない。彼、彼女等には助けた後、自ら進んでほしいと思っている。だが・・・・現実は手助けを・・・・救助をしないと、その一歩を踏み出す事ができない。いわゆる負の連鎖と言う奴だな。これを・・・・底辺と言われる場所にいれば、それれそ抜け出すのは容易ではない・・・・」
「士門さんそこまで考えていたのが驚きです。」
イベッテが言う。
「こう言っては何ですが・・・・見返りがないと、人は無償の善意の裏に何かがあるのでは?と疑うものだから。」
「ああ・・・別に・・・・見返りは・・・・考えてはいるんだ。」
俺がそう言うと、シビルが反応する。
「あ・・・・私、しもんさんが何を求めているのか分かった気がする・・・・」
え?俺別に求めてはないよ?何か勘違いしてない?
だが、シビルが言った次の発言に、俺はハッとさせられた・・・・
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