第183話 シビルの指摘

「それはね・・・・助けた人の、自立。そして・・・・しもんさんが、自立する足場を提供するの。」


 うん?どういう事だ?


「あれ?違った?人の考えを理解していたつもりなんだけれど・・・・間違ったかなあ?」

「いや・・・一寸待って。」


 俺は・・・・考えてみる。


 そうだ・・・・確かに助けた人はその後、自らの足で歩んでもらわないと。

 だが・・・・現実は厳しいだろう。

 俺の親は、貧乏だった。

 そして、死ぬまで貧乏から抜け出させてやれなかった。

 俺は運よく大手に入社できたから泥沼から抜け出す事がきたが、俺の両親は・・・・ようやく俺が手を差し伸べる事が出来ると思っていた矢先に、事故に遭った。

 ようやく両親に楽をさせてあげられる・・・・そう思っていた。

 突然の死。

 ショックだった・・・・

 そして・・・・悲しかった・・・・

 そうだ・・・・せめて俺が関わった人達には、手を差し伸べてあげたい。

 俺が両親にしてあげられなかった事を。


 何?自己満足だって?

 だからどうした、自己満足上等!


 エゴだろうが自己満足だろうが、それで救われる人がいれば、いいじゃないか。


 そして・・・・これは決して無償で行ってはいけない。

 え?さっきも似たような事考えてただろって?いいんだよ、大事な事だから。


 これから色々考えないといけないが・・・・先ずは健康、そして・・・・金だ。


 この世界も金がないと何もできない。


 健康な体があっても、まともな生活が出来ないと、身体が不調をきたす。


 そして、また・・・どうやってこの負の連鎖を断ち切るか。


 そうだ!金を稼ぐ場を提供すればいい!

 どうやって?


 うーん・・・・工場で働いてもらう?


 で、何を作るんだ?


 そう言えば・・・・服を作るとか考えてたっけ。糸を紡ぎ、生地を作り、服を縫う。


 あ・・・これはどうなんだ?主に女性向けか?

 男性向けのも考えないとな・・・・


 ここまで考えて・・・どうやら随分考え込んでしまっていたらしく、皆が心配そうにこちらを見ていた。


「ああ。すまんな・・・・ある程度考えはまとまった。」


「どうするのかしら、士門さん?まさか慈善事業でも立ち上げるのかしら?」


 およ?慈善事業・・・・俺はよく分からない。後々やってもいいが・・・・


「ちょっと違うよ、佐和。先ずは人を助け、その後俺が作る予定の工場で働いてもらう。」


「えっと・・・・どういう事でしょうか?」


「ああ・・・せつ、俺は色々何をするか考えてたんだが、なかなかいい案が思いつかなくてな。そして無い知恵を捻り出した結果、工場を立ち上げ、そこで働いてもらおうかと思ってな。」


「あの物件ですか?倉庫を工場にするとか。あそこで働いてもらうの?」


「うん、そのつもりだよイベッテ。」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る