第159話 大騒ぎのクラン”御国台”

 士門がゲートを使ってダンジョンへ向かい、ゲートを使えなくした直後・・・・


「前重先生!ゲートが・・・・ゲートが使えません!」


 せつが悲鳴に近い言葉を放つ。


「え?そんな?ほ・・・・本当・・・・どうして?このままでは士門さんが1人に・・・・危険だわ?」


 さわが急いでゲートを使おうとするも、反応なし。


「そんな・・・・きっと私の所為だわ・・・・しもんさんはゲートを使うなと言ったのに、無視して使ったから怒ったのよ、きっと。」

 泣き出すみつえ。


「ど・・・・どうすれば?しもんさん・・・・大丈夫ですよね?ね?」


 狼狽えるイベッテ。


「そんな・・・・私まで置いていくなんて・・・・酷い・・・・私は・・・・しもんさん・・・・精霊様のますたーがいるからここに留まっているのに・・・・」


 シビルが悲しそうな顔をして言う。


「と・・・・とにかくダンジョンですよダンジョン!今からでも遅くはないです!我々だけでもダンジョンへ向かいましょう?」


 本白水が、やはり狼狽えつつも言う。

 だがここでさわが反論する。


「それは悪手だわ。しもんさんは・・・・彼は何か思う所があって出ていった・・・・そもそも彼は私達に何の責任もないの。単に巻き込まれ、そして私達は同郷というだけの繋がりで、元を正せば全くの知り合いでもない赤の他人なのだわ。だから彼が出ていったところで、咎める理由はないのよ、残念ながら。」


「前重さん、どうしますか?どう考えてもこのクランは彼の存在あってのもの。このままでは空中分解。」


 イベッテが言う。


「彼は・・・・戻ってきます、私は信じてます。」


 せつが言う。



「でもね、繁在家さん、しもんさんは・・・・相当精神的に追い込まれていたわ。精神疾患・・・・うつ・・・・かなり危険な状態ではないかしら。そんな彼をひとりで行かせてしまうのは危険・・だけど・・・・このまま追いかければ、さらに追い込む事に・・・・」


 それからの混乱はすごかった。

 クランの、士門の所有物である、この建物で暮らす女性達が騒ぎを聞きつけ、混乱に拍車がかかる。


 しかし・・・幸いに?士門はカバンを残していった。

 色々なアイテムと、お金になるドロップアイテムが収納したまま。

 これを有効利用し、換金すればかなりの期間暮らせるだろう・・・・・


 この日から2日後、ゲートから一人の男性がやってきた。


 白河小次郎だ。


「やあお嬢さん達、暫らくぶりだねえ。それにしても・・・・折角の美人がそんな顔をしては台無しだねえ。」


「何ですかあなたは!混乱してる私達を見て、そんなに面白いですか!」


 本来なら、こんな対応をしなかったであろうさわが、白河さんに詰め寄る。


「まあ、ちょっと落ち着きなさい。なぜ私が此処に来たのか、不思議に思わないのでしょうか?」


 にこやかに言う小次郎氏。


 何かに気が付き、問い詰めるさわ。


「しもんさん・・・・口田さんがいるのですね?そちらに。」


「ええ・彼はやってきました、私の所へ。そうですねえ・・・・今からひと月、彼を預かるので、心配無用ですよと言いに来たのですよ、前重先生・・・・・」


「え?ひと月?それはどういう?」


「彼は色々平穏な生活を送らないと、今後さらに危険な状態になりますよ?以前の私がそうでしたから分かるんですよ?それに・・・・何やら学びたい様子。まあ、彼は無事なので。あ、そうそう、例のダンジョンですが・・・・S級冒険者が2組まだ残っているという話ですが、彼等は問題ありませんとギルドに伝えておいて下さいね。」


 彼はそう言い残し去っていった・・・・

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