令和六年九月場所の開かれた扉

 令和六年の九月場所は関脇の大の里が十三勝二敗で優勝しました。これで三役で直近三場所の勝ち星が三十四に達して、場所後に大関に昇進しました。いやはや、これは驚いた。先場所が九番で、この場所はもう少し苦労するかと思った。しかし実際には、まったく他を寄せ付けませんでした。その辺を考えてみることにします。

 大の里の相撲に関しては、先場所と今場所で取り立てて大きな変化はなかったかな、と思ってます。立ち合いで強く当たって右を差し、そのまま体を寄せて土俵を割らせてしまう。何番か、左からの激しいおっつけを見せましたが、この場所もやはり回しにはこだわっていない。その辺に何か可能性があるような気がするのですが、しかし、すでに充分に強いので、回しなんてどうでも良いのかな……。ともかく、変わったと言えば左のおっつけをちらほら見せてきたのは、変化だったのかも。もっとも、大の里は左を固めているようでもないのだけど。解釈が困難だけど、右を差しておけば、相手に右を差されても良い、という方針なのか? 少し思い出してみると、若隆景に負けた相撲は、終わってみれば若隆景が右の下手を離さなかったことで大の里が負けたような形になった。もし若隆景に右を差されなかったら、というifを考えたいところだけど、この相撲は当たってすぐに双差しになられたので最初からダメだったかもなぁ。この辺りに大の里の攻略法があるのかな、と思ったりもするけど、はっきりしません。ただ、この場所の段階では「回しを引きにこない」ようなので、そこが隙といえば隙なのかも。ちょっと脱線しますが、大の里が回しを引かないと最初から決めているなら、攻める時に考えることは最適化されているのかも。右を差して、左をおっつけて、あとは相手を正面に置いて前に出る、ということだけ考えれば良い。まわしを引くタイミングや引く位置とか、相手に差し負けた時の対処とか、そういう全てを無視すると、思考はクリアになりそう。まぁ、それでも混乱する場面はあると思うけど。ちょっと、大の里は例外的過ぎて、その発想を簡単に想像させません。

 この場所は横綱の照ノ富士は休場でした。この先がどうなるか、よく分かりませんが、出れば勝って、具合が悪ければ出ない、という形は番付が変わらない横綱の特権みたいになっていて、難しい気もする。まぁ、来場所、どうなるか。

 さて、この場所、そして場所後に寂しいニュースがいくつもありました。まずは貴景勝がこの場所は関脇で取りましたが、勝てないまま休場して、そのまま引退となりました。まだ早い気もするけど、相撲を見ても体に力が入らないし、思うように動けていないのがはっきりしていたので、仕方ないかな、とも思いますね。いつかきっと部屋を持つと思いますが、指導者として頑張って欲しい。それと、場所後に碧山と妙義龍が引退しました。あまりこういう感覚にはとらわれないまま来たのですが、現役の関取がどんどん自分より年下になってしまって、寂しいというか、時間の流れを感じる。今、現役で取ってる関取で昭和生まれって何人いるんだ?

 そういえば、この場所で玉鷲が連続通算出場が史上一位になりました。凄いことです。ここのところ、なかなか勝ち越せてませんが、それでも七勝八敗で踏ん張っていて偉い! という気持ちです。いつまで現役を続けるかは本人の意思とはいえ、まだ頑張って欲しい。

 この場所では苦労した人もいましたね。平戸海はなかなか難しい感じでしたが、しかしまだ終わりではないので、今後に期待です。熱海富士もあと一歩で三役に上がれそうでも、その一歩がここ数場所なかなか出ない。それでも来年には三役には手が届くと信じてます。

 そう、幕内に戻って来て二場所目の若隆景と、少し番付を下げた若元春がどちらも二桁勝って凄かったな。二人で同時に三役になったら、などと想像してしまう。これは夢で終わらないと思いたい。

 この場所で活躍した力士は、錦木が三賞を取る活躍をしましたが、この人はかなり歳を重ねてるはずが、頑張ってて見ているこちらが元気になる。この人も長く土俵にいて欲しい人です。

 大関に関しては、ちょっと何も言えない。豊昇龍を応援する気持ちは変わりませんが、まだ強くなれるはずです。右からしか攻められないし、投げにこだわってるようなので、どうかそこで寄りか、突きがあれば、と素人の僕としては思ってしまう。もっと幅広い相撲を見たいです。

 十両では尊富士が躍動していて、これは来場所はともかく、来年は幕内で暴れてくれそう。この先が気になります。

 そんな具合の九月場所でしたが、来場所の注目は間違いなく大の里です。まさかこのまま優勝を続けて、ノンストップで横綱に上がることはないはずだけど、しかし、なぁ……、誰が壁になるんだろう? 「大の里包囲網」的なものが出来上がるとしても、大の里は全てを薙ぎ倒していきそう。もはや、大相撲はすでに新しい扉が開かれている。その扉を真っ先にくぐるのは、大の里なのか、それとも……?

 いずれにせよ、来場所は今年の結びにして、同時に来年を占う場所になると思います。注目です!

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