第二期(白鵬引退以降)

令和3年11月場所を象徴する「激しいせめぎ合い」

 さて、令和3年の11月場所は横綱の照ノ富士の全勝優勝、という結末でした。

 照ノ富士の相撲はいよいよ完成されてきたかな、と見ています。右四つが元々の型ですが、右上手でも良いし、外四つでも寄っていけますが、最大の特徴は「極め」なんですよね。これが強烈すぎて、双差しになっても有利に相撲が取れない。懐は深いし、圧力もあるし、照ノ富士を相手にすると「双差しが有利」という大原則が通用しない。なので、やはり阿炎が一つの対抗手段を持っている、となったのかな、と僕は思います。長い腕で突き放してこられると、照ノ富士はやや手こずるか、と見てましたが、あと一歩、もしくは半歩、押しが足りなかった。あれは阿炎の相撲、阿炎の勝ちかと思った。それと、照ノ富士対策として速攻相撲が一つのやり方かとも思うけど、どうだろう。何にせよ、今の照ノ富士は強い。とにかく強い。

 で、今場所の結果で見えてくるのは、上位にいる力士で、強い人がちゃんと強いというか、安定してきている。四股名を挙げると、明生、大栄翔、若隆景、隆の勝、豊昇龍、ですね。この辺りがしぶとく勝ち星を拾うし、負けても大負けしないのが凄い。ここで番付を維持しながら揉み合っているうちに、本当に突き抜けてくる力士が出てきそうで、それがすごく楽しみ。っていうか、来場所の三役はどうなるんだろう? 小結三人にして欲しいけど、たぶん二人だよなぁ。若隆景がちょっと不安かな。何にせよ、この辺りの力士が三年後にどうなってるか、注目。よく聞く「三年先の稽古」が今の彼らの稽古や土俵でしょう。

 それにしても、千秋楽の相撲中継の中で、今年の六場所の優勝決定の相撲の映像が編集されて流れたけど、七月場所の千秋楽、結びでの全勝の白鵬と大関の照ノ富士の相星決戦は、実況からして熱が強すぎたし、相撲もすごいし、あれは相撲史に残る一番なのかもなぁ。白鵬の最後の相撲でもある。実況の人が「上手が切れている! 小手投げ! 小手投げ!」のところが、やっぱりハラハラした。上手が切れる、というのは相撲をあまり知らない人には分からないのかもしれないけど、相撲中継でよく言われる「命綱」が、あの時の白鵬の左上手でした。あそこで上手が離れても構わずに回り込みながら小手投げを打って打って打ち続けて照ノ富士を這わせなかったら、さて、どうなったか。いやはや、相撲の神様ってのは、怖い。そしてあの小手投げで照ノ富士の肘がすごい曲がり方をしてるのも怖い。

 先に何人かの力士の名前を挙げましたが、白鵬が朝青龍とか、魁皇、千代大海、栃東、琴光喜などなど、全部を平らげてまさに第一人者になったように、今の若い力士も最終的には王者と敗北者に分かれてしまうと思うと、なんとも切ない。勝負の世界、勝ちと負けしかない世界なので、淘汰は避けては通れないけど、僕は最近はやっぱり、星には興味が持てなくなった気がしますね。良い相撲が見たい。誰が勝っても負けても、面白ければ良い、というか。今場所の相撲では、やはり照ノ富士と阿炎の一番ですね。あれは良い相撲だった。

 これは少し余談というか、やや私情がダダ漏れですが、豊昇龍はやっぱり面白い。右でまわしを引く相撲だけど、足癖がまぁ、悪い悪い。内掛け、外掛け、どちらもいける。今場所は足をかけに行ったところで寄られてぐらついたけど、足を送って持ちこたえたりして、足腰の強さは群を抜いているのでは。天性のものなのか、何らかの経験によるのかは分からないけど、良い感じです。立ち合いで突いていく中で右でまわしを探る、とか、立ち合いで右で前まわしを引いていく、とか、どうかな、有望かな、と思うけど、これは僕の紛れもない素人考えです。これは相撲をやってる人がわかることだろうけど、下手と上手、どちらが良いかは、素人にはすぐにはわからない要素です。僕にはさっぱりわからない。豊昇龍は右で下手を引いて根こそぎに投げたりしてますが、これが、相手の小手投げの餌食になって、豊昇龍の右肘が壊れそうで怖い。豊昇龍は今場所の終盤は右上手を狙うやり方をしたりしたけど、まぁ、右上手でも取れるようではあった。この、下手か、上手か、どちらが良いのだろう。ちょっと豊昇龍で勉強させてもらおう。

 令和4年の大相撲はどうなるんだろう。誰が照ノ富士を倒すのか、という見方もできるし、次の大関、あるいは横綱は誰か、という見方もできますね。特に大関、三役は大混戦になりそう。

 令和3年が相撲において、相撲史において伝説的な一年、記念碑的な一年であった、という事実が、令和3年の総括でしょうか。

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