二十三話 正面から迎え撃つ別の男
「あいつらを通してよかったのか?」
目の前に立つ獣人の大男に質問を投げかけたのはさっきまで腹を抱えて笑っていたとは思えないほど真面目な雰囲気のグランツ。今回のクエストが既存のものとは明らかに違った何かがあると察しているからこそ一つ一つの障害を確実に打破しようと考えている。
「おうよ!うちのボスからもあのヴァイス(?)とかいう男以外の誰か一人を足止めしてくれれば問題ないとお達しが来てるからな。」
目の前の大男はグランツの問いに律義に答えたが、その内容にグランツは違和感を感じる。
(こいつ、なんで今までの獣人みたいにヴァイスのことを<御柱様>って呼ばないんだ?それになぜこいつは他の奴等みたいに理性を失ってない?あの
「だーー!!!もうよくわからん!とにかくお前をぶちのめせばわからんこともある程度はわかるだろ。」
グランツはそう割り切ると目の前の敵に集中することにした。
「どうやらお前の中で考えがまとまったようだがこの俺、ソーラー様を倒すなんてことはできねーよ!!」
自身に満ち溢れた顔で突撃してくる大男、ソーラー。グランツは「またさっきと同じ攻撃かと思いつつもその手にはグランツの武器、二丁のリボルバー拳銃が握られている。
リアル・リアライズにおいて初期の職業は戦士、狩人、導師の三種類あり、その中でグランツは狩人を選んでいた。さらにヴァイスにはまだ先の話ではあるが、職業のランクアップが存在し、現在は第二開放、つまり二回のランクアップまでが確認されており、二つ名がリアル・リアライズ界隈で知られるほど有名なグランツは当然第二開放を済ませている。
グランツの今の職業は調薬銃士。自身が調薬したものを銃弾として射出することで銃弾の効果を発動させることができる。自分が調薬したものでさえあるならばどんなものでも効果を発揮するため、回復薬を装填することで被弾した相手を回復させることすら可能だ。
「さっきはどうやって攻撃を無効化されたかわからなかっただろうから、今度はもう少しわかりやすくしてやるよ。」
そういうと同時にどこからか銃弾が宙に現れると拳銃へと吸い込まれていく。
「<奇術>薬筒装填・サイレントボム」
その一声とともに両銃からそれぞれ二発ずつ放たれる。
放った銃弾は振り下ろされる大剣の腹に当たると軌道を大きく逸れていく。これがヴァイスたちがいる前で回避した時のカラクリである。
さっきまでの自信はどこへ行ったのか、ソーラーの顔は苛立ちと悔しさに歪む。
「さあ、イライラしてる場合じゃないぜ。せっかく最初の攻撃を譲ってやったんだ。今度は俺の攻撃を防いでみろよ。」
右手の銃の先で帽子の鍔を軽く上げる仕草をしながら攻撃態勢に入る。その目はガンマンにしては随分猟奇的な目をしていた。
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