二十一話 人の戦いを初めて見る男

 ログアウト提案後のなんとも気まづいな空気を何とか乗り切ったあと、次に一斉にログインできるタイミングを相談、すると2日後の夜8時からということになり、その場でログアウトした。バトルらしいバトルはほとんどしていなかったためセーブポイントでログアウトしなくても問題ないだろうと思っていたが俺以外の三人は円盤型の使い捨てセーブポイントを持っていた。どうやらそれに乗ることで周りを光の壁が覆い、セーブポイントとしての機能を果たすらしい。まさかそんなものがあるとは……。

 呆然とする俺の様子から察したのかコウが無言で俺に1つ渡してくれた。持つべきものは適度に察しの良い子供だな。




 そんなことがあってから二日経ち、定時になったのでログインする。


 するとそこには既にログイン済みの三人が立っていた。


「遅れたか?」


「いや、時間通りだよ。」


 そんな定番のやりとりをグランツとしたあと、丸二日放置した猫耳獣人のミルの方を見る(ダジャレじゃないよ)。


『これより獣の再誕ビーストリバースを開始する!』


 前に見たときより明らかに厳格さが滲み出るミルの宣言とともにそれまでは威嚇しながらもその場に張り付いていた獣達が一斉に襲いかかってくる。


「よし!早速魔法を


 使おうとすると三人から突然止められた。


「なんだよ!?」


「いや、お前が暴れ出すと俺らのやることが無くなりそうだからな。」


「ヴァイスはそこで見ていて下さい。」


「あたしらがこの獣道を切り開いてやる!!」


 そう言うと三人がそれぞれ自分の武器を取り出す。


 先陣を切ったグランツはガンマンの雰囲気にあった二丁のリボルバー拳銃を取り出すと、敵の眉間を正確に撃ち抜いていく。それが当然であるかのように。しかも眉間を撃ち抜かれた瞬間頭が次々と爆ぜていく。どうやら理性を失った獣人はモンスターと同列のものだと考えることにしたらしい。


 そんなグランツの後ろから仕掛けることにしたコウの手にはいつの間にか身の丈ほどある長杖が握られていた。というか今までどうやってしまってたんだ?そんな疑問を吹き飛ばすかのように雷の矢が次々と飛んでいき、触れた敵が一切の例外なくその場で動けなくなっていた。コウは無力化することに重きを置いているようだ。


 そんなコウの背後から一気に駆け抜け、グランツすらも抜き去ったエイラはその両手に巨大な両手斧を持ち、横向きに一振り。それだけで相手は宙を舞う。やってることはどう見ても野蛮人なのに攻撃一つ一つにどこか気品が感じられるのは些か疑問ではある。


 そんな感じで戦っている三人は余裕があるためか雑談しながら敵を蹴散らしていく。


「ウェスタンの恰好に二丁の拳銃、やっぱりお前が『瞬撃』だったか。」


「そういうお前らも『大薙ぎ』と『魔童子《まどうじ》』だろ?お前らの構えた武器でやっと確信が持てたぜ。」


 そんなやり取りを聞いていた俺は何を言っているのかいまいちピンとこなかったが、その疑問は一旦後回しにする。


「お前ら!ここを真っすぐ進んで階段を降りるとこの城の出入口が見える。そこまでの道をあたしが切り開くから合図を出したら一気に駆け抜けるぜ!!」


 その指示にグランツとコウは頷いていたので、併せて頷いておく。


 その様子を確認したエイラは両手斧を大きく振りかぶった。


「<武技>攻派・大薙ぎ」

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