二十話 方針を固めた男

 猫耳獣人ミルから話を聞かされた俺以外の三人は疑問と怒りがないまぜになったような顔をしていた。その心の内までは俺にはわからない。

 ただ一つ、これだけは言える。


「俺何も悪いことしてないやんけ!!」


 つい感情的に本音を大声で漏らした結果、なんか微妙に気の抜ける感じになった。


 痛っ


 グランツから無言の拳骨が飛んできた。


「いきなり何すんだよ!!」


「1番の当事者が1番腑抜けたこと言うからだろ!!」


 その顔はさっき以上に複雑な感情を内包していた。


「お前いくらゲームとはいえ自分の命が蔑ろにされようとしてるのに何とも思ってないような顔してるんだ!!」


 どうやら俺のことを心配してくれているらしい。ミルの話を聞いた感じだと俺が踏み入れてはいけない領域に片足どころか両足突っ込んだことは理解できる。その上で俺の心配をしてくれているなら素直に嬉しいと思う。けど、


「俺は別になんとも思わない。俺が犠牲にならず乱れた世の理とやらを正せばいいだけだろ?」


 目の前にいきなり現れた、出会ってすぐの相手が提示してきた選択肢しか存在しないと思い込む必要はない。選択肢は提示されるものではなく生み出すものだ。

 そんな意志を込めて返答するとグランツだけでなく他二人もハッとした表情の後、その目に決意が表れる。


「そうだな、自分の選択肢を絞るのは良くない。なら常識を覆す方法で覆すほうがいいな!」


「ですね。それに危うく詐欺の被害に遭うところでした。」


 二人も俺の事を信頼してくれていたのか、前向きな返事が返ってくる。ただ一言言っておくがコウ、俺は別にあの猫耳獣人をそこまで貶したつもりはないぞ。


「とにかく現状を打開するためにもここから出て俺の武器を探しにいこう!」


 これまでの意見を纏める形で俺が意思表明をするとミルは頭を掻きながら


「そうか、御柱様は敵対を選びますか。なら仕方ない。」


 そう呟いたあと大きく息を吸う。


『これより!「あ!ちょっと待った!!」


 あの宣言を許すと戦いが始まりそうだったのでここで無理やり遮る。


「一旦ログアウトしようか?」


 この一言がブリザードが吹き荒れたように感じたのは俺の勘違いだと思いたい。……だって仕方ないじゃん。なんかいろいろ疲れたし。

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