十六話 プレイヤーに狙われた男

 すみません、リアルが若干忙しくなったので、少し遅くなりました。あと数日はまた空くかもしれません。





「オラオラァ、こん中にいるんだろ?耳生やしたゴデゴテ装備の野郎がよぉ?」


 御者(ノンプレイヤー)につっかかるリーダー格と思われるプレイヤー。

 ……なぜかわからんが俺のことを探してないか?


「……お前一体何をやらかしたんだ?」


「このゲーム始めてからほとんどプレイヤーと話してないのにどうしてプレイヤーに被害与えるようなことになるんだよ。」


「………なんか…すまん。」


 グランツの一言で思わぬ形で精神ダメージを食らっていると、こちらに気づいたらしい。


「へっへっ、いやがったぜ、カモが。うちのボスがお前の刀をご所望だ。さっさとそれをよこしなぁ!!」


 その言葉が合図だったのか、全方向から男たちが一斉に襲いかかってきた。


 ……しかし、やけにスローだなぁ。

 こんな早さじゃ奇襲の意味がないだろう。


 そんなことを考えながら味方サイドの三人を見ると一向に臨戦体制にならない。

 まるで、自分だけが別次元の世界にいるような感覚だ。仮面ライダーの昆虫モチーフのあの人達もこんな気持ちだったのかな。


 ここで気付く。みんなが遅いんじゃなくて、俺が早いのか。

 そして思い出した。あの装備の能力を。



 神狼の天眼(装備解除不可)


 戦闘時、空間認識能力が大幅に向上する。それに伴う脳内情報処理能力も大幅に向上する。

 また、攻撃時の照準を合わせる補助をする。



 これはカテゴリーとしては頭装備という扱いだが、正確には自分で装備したものではない。いつの間にか装備されていたもので、自分の勝手な推測だがフェンリルとの戦いの後で不用意につかんでしまい文字通り痛い目を見た後に体内もとい眼球に埋め込まれたのではないかと思っている。それだけのものだから当然といえば当然なのだが思った以上の能力を持った装備らしい。ここまでくるとゲームバランスとか大丈夫なのだろうか。


 こんな余計なことを考えている間にも攻撃が届いてしまう。


 神狼の天眼の能力を最大限に利用し、照準を敵へと合わせる。

 レーザーポインターのように敵の体に点とその外に1つの円で形成されるターゲットが一人につき2~3個ほど見える。


「〈アイスソード〉」


 そう念じると敵の数と同じだけの氷の剣が空中に現れる。

 それを全員に共通して表示された心臓部のターゲットに向かって一斉に飛ばす。


「ガハッ、な、なんなんだ!?どうして俺の腹に剣が!?!?」


 そんな阿鼻叫喚の声とともに襲ってきた連中が膝をつく。


「い、今のはヴァイスさんがやったんですか?」


 驚愕の表情を浮かべる三人のうち、いかにも魔法職な格好のコウが疑問を投げ掛けてくる。


「ああ、そうだ。対人戦は初めてだったんだが、うまく対処できてよかった。」


まともに戦ったことあるのはトレントとフェンリルくらいだしな。


「そんなバカなこと「は、はは。あっはははははは!!!こりゃあ、いい!」


 驚いた表情で俺の言ったことを否定しようとするグランツの言葉を遮るように目の前で蹲る男が話し出す。


「なるほどな、只者じゃねーとは思っていたがここまでとはな。だがうちのボスは狙った獲物をみすみす逃すほど甘くはねーぜ。ボスが望む限り俺たちはお前を地獄の底までも追い詰めてやるよ!!!」


 そんな一言を残したあと、光の粒子となって消えた。それに続くように他の男たちも光の粒子になって還っていく。

 …これがゲーム内で死んだときのエフェクトか。なんだかんだで初めて見たな。




「……なんだが面倒なことに巻き込まれたみたいだなぁ…。」


「そうだなぁ。」


「そうだなぁ。じゃねーよ!!」


 俺のあまりにものどかな反応に思うところがあったのか、口火を切ったように質問責め、というよりはもはや尋問でもされているかのような剣幕で詰問を受けた。……三人から。

 まさかあんなおとなしい感じのコウですら、いやむしろコウが一番恐ろしい表情をしていた。


 ………般若って実在したんだなぁ。



 ゲリラ的に始まった質問責めタイムはノンプレイヤーである御者の一言でなんとか収まった。

 結局獣車の中でも続いたけど。




 そんな落ち着かない移動をしつつ、ときどき襲ってくるモンスターを倒していく。…俺一人で。この日俺は、ゲームの世界でも理不尽があるということを学んだ。



 戦闘と質問責めという二つのサイクルを続けていくと、ようやく第二の町、ワイルに着いた。


「やっと着いたーー!!!」


 門の前で降りて欠伸をしながら体を伸ばしていると、


「この気配…御柱〈みはしら〉様だ!御柱様がいらしたぞぉーーー!!!!」


 野太い声で何か聞こえたが、何かイベントだろうか?にぎやかだなぁー。

 そんな能天気なことを考えていると、


  ドドドドドドドッ、ズザッ


 なんだこの集団は?

 目の前に少なく見積もっても百人は下らない数の獣人が夥しく並んで片膝をついている。


「「「「「「「ようこそおいでくださいました!御柱様!!!」」」」」」」


 後ろの三人による第二回本格尋問の実行が決定した瞬間だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る