獣人の街ワイル

十四話 出遅れた男

 すみません、だいぶ空いてしまいました。もしよろしければブックマーク、評価等お願いします。




 今日はリアル・リアライズで初の大幅アップデートが完了して初めてのログインである。……俺にとっては。


 まぁ、なんだ、ぼっち大学生にもいろいろあるんだよ。

 本来なら3日前にはログインできたはずなんだが、レポート提出やら何やらあってログインできなかったのである。……まぁ、十中八九提出期限を忘れていた俺のせいです。



 とりあえず、後顧の憂いを断つことができたのでログインする。


「そういえばここでログアウトしたんだったか。」


 目の前に広がるのは冒険者ギルド内の景色。数日前の嫌な記憶(クエストキャンセル)が甦ったので即刻その場をあとにした。


 向かった先は冒険者ギルドの裏側。まずは自分の装備やら所持金やらを確認したい。


「まずは装備を見ておくか。」




 名前  ヴァイス

 メイン武器 神狼の大太刀

 サブ武器  止水の直刀

 頭     神狼の天眼(てんがん)

 外装    神狼の銀套(ぎんとう)

 内装    神狼の雪衣(ゆきごろも)

 腕     神狼の爪籠手(つめごて)

 足     神狼の白束(はくそく)

 靴     神狼の獣脚(じゅうきゃく)

 装飾    神狼の指環(ゆびわ)

       神狼の首飾り




 装備の項目が増えた。上着と足がそれぞれ二つに別れ、武器もメインとサブに別れている。

 何やら装備一つ一つに特殊な能力がついているらしい。それはまたあとで試すことにしよう。



 次は所持金の確認だ。トレントのクエストがクリアできていないからおそらく手元には所持金がないはずだ。そう思いつつ所持金を確認すると、


「………15000G(ゴールド)なんていつ稼いでたっけ?」


 そう、所持金ゼロではなかった。


 よくよく記憶を思い起こしていくとある答えに行き着く。


「もしかしてコボルトの討伐の報酬金か?」


 そう、すっかり忘れていたがコボルト討伐の報酬金が手元にあったのだ。そもそもまだ一度もお金を使っていない。

 ……でもこの見た目でお金を使ったことがないって言ったら嘘だと思われるよな。



 まぁそんなことはどうでもいい。それより早く次の町へ向かおう。


 プレイヤーを遠くへと運んでくれる通称獣車というのがこのゲームの中には存在する。

 基本的には高性能AI搭載の人の姿をしたコンピュータ、便宜上ノンプレイヤーと呼ばれるものたちが動かしているが、中には調教師と呼ばれるモンスターを使役する職業のプレイヤーが小遣い稼ぎでやることもあるらしい。



 今回の目的地である第2の町〈ワイル〉は獣人という動物の耳や尻尾が生えた者たちが住む町だ。今いる町〈ビギン〉から見て北東にあり、そこへ向かう獣車が停車しているのがビギンの北門の前である。そこから道なりに進む予定だ。


「おっ、あの獣車ちょうど一人乗れそうだ。」


 ということで運転するノンプレイヤーにお願いして乗車料を払い、腰に差していた二刀を手に持ち、ちょうど空いていた席に座る。するとすぐに進み始めた。


 ………ちなみに10,000Gかかった。


 世知辛い世の中だ。


 ちなみに4人乗り、御者含めると5人乗りの獣車を曳くのは3匹のシャウトドックというモンスターだ。モンスターの気配を感じるととにかく吠えるという習性を持つ。


 今のところは吠える様子はないため、車内では静かな時間が流れる。

 しかし、その時間を断ち切るように隣に座る男が俺の方を見て言葉を発した。


「なぁ、お前さんって人間か?」

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