十三話 マイペースな男
運営サイドより大型のアップデートの発表があったとき、多くの人々がてんやわんやになっていた。
まずはプレイヤー。リアル・リアライズは発売から約一年経っている。つまり、発売当時からこのゲームをプレイしている人たちからすれば「ステータスの数値表記の完全撤廃」というのはこれまで積み上げてきたものが目に見えなくなることを示唆しており、モチベーションの大幅ダウンに繋がる。ここにきてこのゲームを続けるかやめるのかの分岐点に立ったものが多く出てきた。
またはマスコミ、マスメディア。このゲームの注目度は高いからこそ、もはや非常識とも言えるアップデートが数字を持っていると感じ、数多くのメディアが運営本社に直接取材や電話などでアプローチをしようと躍起になりだした。
そして最後は運営サイド。メディアへの対応やプレイヤーからのクレーム対応に限らず、少しでもゲームシステムをより完全なものにしようと日夜格闘している。
そんな感じで周りが大きく動いているなか、この男は慌てる様子はない。
「アップデートは明日実装か、まさかもともと準備してあったのかな?それにしても急ぎすぎな気はするけど。」
どこかから「何的外れなことをほざいているんだ!!」とツッコまれた気がしたが気のせいです。ちなみに今日はリアル・リアライズ史上始めてサーバーアクセスができなくなった日である。むしろこれだけ落ち着かない状況でたった一日でアップデートを終わらせようという運営の神経が疑われる。
「とりあえず、明日からどうしようかな?自分の状態を確認したら、適当にクエストを受けようかな?……いや、クエストは当分いいや。」
昨日はあまりにも疲れていたため、最低限のことだけ終わらせてログアウトしてしまったため、新たに手にいれた装備がどういうものなのかまったくわからない。それをまず確認しないことには何も始まらない。
クエストに関してはしばらくは受けないでおきたい。理由はまぁ、言わずもがなトレントのクエストのときのデスマーチからの謎のアナザークエストとやらのせいである。全部が全部あんな大変ではないのだろうが、正直今はクエストという字面を見るのすらつらい。
「ちょっと早いかもしれないけど、次の町に向かおうかな。」
リアル・リアライズにおいて、次の町にいくためのノルマは基本存在しない。始めたての人ですら全ての町に行ける。その代わり町から町への移動に使える獣車を利用するのにお金がかかる。ゲーム内の財力で差別化を図っているのだ。
「………そうだ、俺今全然お金ないじゃん。」
トレントのクエストもキャンセルしたため、収入は得られなかった。アナザークエストの報酬も装備品だけだったので、お金がもらえていない。
………ゲームにログインした状態で気づいていたら速攻ログアウトしていただろうなあ。
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