七話 一人で戦い始めた男

 やっと武器を手に入れた俺は再び冒険者ギルドへと入っていった。ちなみにこのゲームにおいて冒険者ギルドはクエストを受注・依頼するという以外の機能を持たない。言ってしまえば派遣の仕事斡旋所みたいなもので、クエストも早い者勝ちで誰でもどれでも受けられる。一応目安となる難易度は書かれているのでそれを見てクエストが選べる。ちなみに今回受けるクエストはトレントの討伐、及びその素材の納品だ。木が突然変異を起こして生まれたモンスターであるトレントは森の奥に生息しており、迷い人を捕まえては絞め殺し、己の糧へと変える。

 というわけで俺は森の奥へと足を運んだ。普通に考えたら考え無しの行動と思われるかもしれないが、これは死に戻りができるからという楽観的思考が為せることだ。本来ならトレントは駆け出しの冒険者が戦うような相手ではない。しかし、この前のコボルト3体を単独討伐した際にレベルが大幅上昇したのだ。ちなみに現在のステータスはこんな感じである。


 名前  ヴァイス

 職業  導師

 レベル 10

 体力  2000/2000

 攻撃力 240

 防御力 140

 素早さ 160

 魔力  100

 スキル 鑑定

 魔法  ウォーターショット

    ウォータージェット<new>

    消費魔力 15

    ウォーターカッター<new>

    消費魔力 10


 レベル1のときと比べるとステータスは均等に倍加されている。さらに魔法は2種類増えていた。ウォータージェットは自分の足元から水を噴出する魔法だ。どうやら素早さを上げられるらしい。近距離戦闘をする俺には最適の魔法だ。そして、ウォーターカッターは剣を振りながら発動することで水の刃が飛ぶ魔法だ。

「狭い森の中だと使うの大変かもな。」

 そう呟きながらもトレントを探しているといきなり尖った木の幹が俺を串刺しにせんとばかりに襲ってきた。ただ、トレントが1体だけだったことが幸いし、不馴れながらもなんとか刀で捌ききることができた。

「まさかここまで森に溶け込んでいるとは思わなかった。」

 しかし構え直し、ウォータージェットとウォーターカッターを併用し、トレントの周りを走りながら斬撃を飛ばす。しかし魔力にも限界がある。なので、確実に当たるタイミングを狙って攻撃を続けた。ウォーターカッターが4度ほど当たったところでトレントの攻撃が止んだ。トレントはダメージを回復することに専念しだした。さすがに回復されたら困るので魔力を使わず近距離攻撃をしかける。刃は非常によく通り、トレントがどんなに身を固めても遮られることはなさそうだ。止水の真刀の能力である、魔力を流すことによる攻撃力上昇を使う必要もなさそうで安心だ。近距離で斬り続ける内にトレントはその場で崩れ落ちた。目の前には直方体型に整形された木材が残った。コボルトの際には1体もアイテムをドロップしなかったため起こらなかったが、今回トレントはアイテムをドロップしてくれたために見ることができたゲーム内の演出だ。

「よし、この調子でトレント狩りまくるぞ!!!」

 これからヴァイスの壮絶なデスマーチが始まるのだった。別に強いられているわけではないのに。








 本作「氷帝と呼ばれた男」は不定期更新になる予定です。(ボソッ)

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