第49話 三つ目の秘宝を使え
一つのフロアの中で、三組のにらみ合いが発生していた。
一組目は俺と禿頭の男。
男は武器を失い、闇魔法で戦うしかないが、どうやら俺に闇魔法は効かないらしい。状況としては俺の方が圧倒的に有利だが、向こうはまだ奥の手を隠しているかもしれない。迂闊に身動きが取れない。
次は、操られている兵士とイリーナの組。
戦いの技量ではイリーナが上回っているが、黒い影による支配を打ち消すためには相手に接触しなければいけないようで、苦戦を強いられている。
最後の一つは、キメラとリリアの組み合わせだ。
リリアはキメラの攻撃をかわしながら反撃を加えていっているが、まだ大きなダメージは与えられていない。周りにいる負傷者や子供に気遣いながら戦っているので、本気を出せないでいるのだ。
いまはリリアがキメラの注意を引きつけているが、怪物の狙いが無力な者——スレンの弟や、意識を取り戻したばかりの兵士たち——に向いたら、リリア一人では守りきれないだろう。
俺は戦場を素早く見渡すと、懐に手を入れた。
指先が固いゴルフボール大の金属球に触れる。バーバラさんから預かった秘密兵器の一つだ。
「戦えない人間は一カ所に集まれ! リリアの邪魔になる!」
俺が号令をかけると、兵士二人とスレンの弟、古代語学者の四人があたふたと一カ所に固まる。
「〈弱き者を護れ、光の衣〉!」
俺は古代語の合言葉を唱えながら、彼らが固まった場所に魔道具を投げ込んだ。
一瞬の間を置いて金属の球が輝き、光のカーテンが彼らの周囲を覆う。
光のカーテンは、生半可な物理攻撃や魔法攻撃を無効化するバリアだ。ここに来る前に試したところ、炎の剣の攻撃すらはじき返したくらいだから、相当の強度があると思って良い。
光の持続時間は三十分程度、狭い範囲しかカバー出来ないが、いまの状況にはうってつけだ。
これでリリアも俺も、余計なことを気にせずに戦える!
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