第50話 露出狂かよ、お前は
「おのれ、
禿頭の男は焦っているようだった。
奴はイリーナのほうに向き直り、呪文を唱えようとした。
「させねえよ!」
俺は素早くイリーナと男の間に割って入り、放たれた魔法を身体ではじき返す。
「残念だったな。俺は死ぬほどお前と相性がいいらしい」
「汚らわしきアルザードの眷属が! 〈来たれ、我が手のうちに。闇の刃よ〉!」
男が今度は別の呪文を唱えると、奴の
奴は刃を上段に振りかぶり、打ちかかってくるが、俺は易々と炎の剣で受け止める。
炎と闇の刃がぶつかると、キラキラとした粒子のようなものが周囲に飛び散った。衝撃により、互いの武器の魔力が飛散しているのだろう。
「おりゃあああああ!」
俺は力任せに剣を押し返す。
炎の剣が闇の刃を打ち砕いた。炎が男の鼻先をかすめ、肌を灼いた。
「へへ、残念だが、あんたの神の力とやらより、俺の使っている武器のほうが上等のようだぜ」
「ぬかせ、小僧!」
男が顔をゆでだこのようにして吼える。
そのとき、俺の視界の隅に白い光が広がった。イリーナが兵士にとりついた黒い影を除去したらしい。
「せいやぁあああああ!」
「グオオオオオオオオオ!」
同時に、背後からはリリアの気合いの声。続いて、魔獣の悲鳴が耳朶を打った。
目をやる余裕はないが、リリアがキメラを圧倒しはじめたのだろう。
俺は剣の切っ先を男に突きつけ、一歩前に出る。
「さて、あんたの手駒はもうおしまいだ。まだやるかい?」
男は歯ぎしりしながら俺の顔をにらみつけてきた。
ぶっちゃけかなり怖いのだが、ここで気合い負けするわけにはいかない。
「投降しろ。そしてお前らがここで何の儀式をしようとしていたか吐け。あと、リリアを〈竜の娘〉と呼んだな? あれはどういう意味だ?」
矢継ぎ早に質問をぶつけると、男は「愚かな……」と頬を歪めた。
「なんだと?」
「もう勝った気でいるのか、愚か者よ」
言うなり、男は両手で羽織っていたローブの前をはだけた。
「ぬおっ!」
俺がのけぞったのは、やつの露出狂的な動きにではない。
ローブの下にやつの肉体には、隙間もないほどびっしりと黒い影が貼り付いていたのだ。
「殺してやる、異教徒ども……! 来い!」
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