08
声の方を向くと、そこには傘をさしたスーツ姿の男性が立っていた。
私は彼を知っている。
だって忘れようがない、私より背が高くてスーツがよく似合っていて、髪の毛もピシッとセットされている彼。
名字が珍しくて忘れたくても忘れられない“胡桃さん”だ。
「あ、すみません。先日こちらの薬局でお世話になった者です。」
私が一歩踏み出した状態で止まっているものだから、胡桃さんは丁寧に説明してくれる。
「あ、いえ、すみません。はい、先日はどうも。ちゃんと覚えています!胡桃さんですよね。」
私が姿勢を正して言うと、胡桃さんはニッコリ微笑んだ。
街灯の灯りしかなくて薄暗いのに、やけにはっきり見えるその姿。
やっぱり、かっこいい。
…って、私ったら何を考えているんだ。
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