09

「だいぶよくなったみたいですね。よかったです。」


胡桃さんの声が先日薬局へ来たときとはあきらかに違うので、私はそう言った。

もう喉の調子はよさそうだ。


ちょっと低くて渋い声だったんだぁ。


「おかげさまで。まだ咳は出るけど。あの喉にシューってやるやつ、あれ効きますね。もっと早く病院にかかればよかったな。」


喉にシューって。

吸入薬のことね。

表現が面白くて、思わず笑ってしまう。


「そうですね、結構ひどい症状でしたよね。」

「治りが遅いのは歳のせいかな?」

「いえいえ、そんなことは。」


私は処方箋を思い出してみる。

確か30歳と書いてあった。

私よりも3歳年上だけど、まだ“歳のせい”とか言う歳ではない。

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