第37話 おまけ 銀髪盗賊と聖女様
「アンジェラ、ちょっと話があるんだけど?」
朝早くにクリスさんが教会に訪ねてきた。なんかちょっと怒ってる様な不穏な感じだ。
とりあえず私の私室に来てもらう。真面目な要件の様なのでヘレンにも席を外してもらった。
ちなみにヘレンは背中まであった長い髪の毛をバッサリ切っていた。ゴブリンに長い髪を掴まれて倒された為だが、心機一転の意味もあったようだ。
クリスさんは怒っている様な照れている様な表現しがたい微妙な表情をしている。
「どうされました? 何か気になることでも有りましたか?」
「あのさ…」
深刻な雰囲気。こちらも気を引き締める。
「…はい」
「噂で聞いたんだけど…」
「…はい」
「アンジェラがカズマに告白したって本当?!」
「…はい???」
「『煙突の樹の下』で2人が仲良さそうに話してたって何人もの目撃証言があったからさ…」
「あぁ、そういう事ですか…」
クリスさんが顔を近付けてくる。
「で、どうなの? 告白したの?!」
「してませんよ。ヘレンの件でちょっとお世話になったからお礼を言おうとしただけですよ」
安堵の表情を見せるクリスさん。
「なんだ良かったぁ。本当だったらどうしようかと心配してたんだよ」
「心配だなんて大袈裟な。第一カズマさんとはそこまで親しくないですから」
「そうなの? じゃあ何故煙突の樹の下で?」
「カズマさんも気にしていましたね、あそこは何かあるんですか?」
「何かじゃないよ! あそこで告白して結ばれたカップルは永遠に幸せになるって伝説がある有名な恋愛スポットだよ?」
力説するクリスさん。
「えー? そうなんですか? 全然知りませんでした。私はただアクアさんに邪魔されたくなくて…」
「そっか、天然と言うか何と言うか… 罪深い女だねぇキミは」
大きく息をつくクリスさん。神様に『罪深い』とか言われたよ、どうしよう?
「でも彼の周りには素敵な女性がたくさん居ますから、私の入り込む余地はきっと有りませんよ」
そもそもカズマさんに興味無いですし。
「何にせよアンジェラはカズマに近寄ったらダメだよ。彼にセクハラされて泣いた女の子はたくさん居るんだから」
「え? 彼セクハラするんですか?」
「そりゃあもうセクハラ大王だよ! あたしなんて初対面でパンツ剥ぎ取られたからね!」
「いきなりパンツですか? 普通に犯罪じゃないですか?」
私だったらボコボコに殴ってると思う。
「ま、まぁ賭けに負けたようなもんだから、そこまで
「え? じゃあ以前エリス様が下着を盗られたって言ってたのは…?」
「そう! あのカズマだよ! …って、えっ?」
驚いた顔で私を見るクリスさん。
「どうしました?」
「…もしかしてあたしの正体、知ってたの…?」
「はい」
「ウソ?! いつから?」
「えーと、『友達になって』ってお願いした辺り?」
「それ出会った初日だよね? なんで? めちゃくちゃ序盤じゃん!」
「はい、私もクリスさんとどう付き合っていくか結構悩みました」
「なぁんだ、じゃあアンジェラの前ではキャラ作る必要無かったのね」
「まぁそうですねぇ。エリス様とクリスさん、どちらかに統一して頂ければ私も助かります」
「この格好で居る時の対応はクリスで頼むよ、誰が聞いてるか分からないからね」
「はい、かしこまりました」
「しかし、カズマ以外にも正体がバレてたとはショックだなぁ…」
ポツリと呟くクリスさん。カズマさんも知ってたのか… 本当にあのパーティの人達は色々な意味で規格外だ。
「それでさ、話は変わるけどアンジェラって今好きな人は居ないの?」
唐突ですね。
「居ませんねぇ。て言うか私は『恋』というものをした事がありません」
「そうなの? それも可哀想な話だねぇ」
あらためて他人に言われると傷つきます。
「昔から私に寄ってくる男はこないだのアクシズ教のチンピラみたいなのばっかりですよ…」
「でもギルドでは結構男の人に声とか掛けられてるみたいだけど?」
「ギルドでは社交辞令かナンパのどちらかですからね。ただの挨拶みたいなものです」
「じゃあさ、アンジェラはどういうタイプの男性が好みなの?」
コイバナ苦手なんですよねぇ…。
「…顔は別に注文付けません。気が利いて硬派な人が良いです」
「意外と難しいねそれ」
「どのみち私には恋なんて早いし、なにより似合いませんよ」
「えー? そんな事無いよ、アンジェラは可愛いよ? 良い恋すると思うけどなぁ」
神様が巫女にそんな事を言って良いんですか…?
「じゃあ良い人が居たら紹介して下さい」
「んー、紹介は無理だけどおまじないならしてあげられるよ。恋を知らない不憫なアンジェラに良い人が見つかりますように『
不憫って言うなよな…。
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