ⅩⅢ―明日への約束―(後編)
辺り一面光に包まれていた。彼が一人立っていると、ソラがゆっくりとやってきた。
「……お兄ちゃん」
ソラは彼にそう呼びかけた。
「まだ、そう呼んでくれるのか?」
「だってお兄ちゃんはお兄ちゃんだから」
ソラは笑顔で言った。
彼は泣き出した。歯を食いしばって必死に嗚咽を抑えた。
「……すまない」
「どうして謝るの?」
「俺のせいで……俺がこんなこと選ばなかったら…!」
ソラの身体が光に溶け込みそうなほど薄くなる。涙で濡れた目で見ると、余計に光がまぶしくソラが消えてしまいそうで目を瞑りかけた。だが彼は瞑るどころか瞬きすらしなかった。記憶に刻み込まなければならない、そう強く思ったからだ。
「いいの。私は……消えるのがわかっていたから…」
「だけど…」
「こっちに来て楽しかった……お兄ちゃんが私にくれたかけがえのない記憶。それがあるから、悲しくない」
「………………」
彼はそれ以上何も言えなかった。
「さようなら……」
ソラは最後まで笑顔のまま、光の中へ消えていった。彼はそれを終始見ているしかできなかった。
**********
出血を抑え、動くたびに身体中にめぐる痛みを耐えながら美守は歩いた。
ミッドナイトスペースの全てを震わせる振動と、全てを照らす光の根源に美守は向かった。そこに天児がいると確信できたからだ。
メモリオンの翼で飛んで行けばすぐに追いつけるのだろうが、それではせっかく残った記憶を使ってしまうことになる。だからどんなに痛くて辛かろうが、メモリオンを使うわけにはいかなかったのだ。
時間はかかったが、天児の姿を捉えることができた。十字路の真ん中に彼は立っていた。
「てん、じ、くん?」
美守は呼びかけた。彼は背中を向けたまま何も答えず佇んでいた。
「俺は、天児じゃない…」
彼ははっきりと自分に言い聞かせるように言った。
「『日下天児』はあいつだ……」
彼が顔を向けた方を見ると、美守の知っている天児の顔と身体と面影持った男が倒れていた。
「俺は『日下天児』の記憶と身体を持っているだけに過ぎない……」
「わかっているわ……でも、私には関係ない、あなたが『日下天児』であろうがなかろうが」
美守はそう答えたが、彼は振り向かずに言った。
「俺が『日下天児』じゃないから、ソラを殺せたんだ……」
「――ッ!」
美守は驚き、よろめいた。
「ど、どうして……何があったの……?」
「未来が消えたからだよ」
彼はミッドナイトスペースの闇夜を見上げた。
「空がソラになる可能性のある未来がこの時間軸から完全に消えた。いや俺が消したんだ……だからソラは消えるしかなかったんだ」
「未来が、消えた…?」
彼がその事を言おうとすると、大地が揺れた。
次いで、空が白くなっていく。朝日が来たわけでもなく、ただ黒から白へと変わっていく。それとともにビルの街並みも轟音を立てて崩れていく。ただ音が響くだけで、破片も爆風も衝撃もなく、崩れて消えていくだけ。
「……これまで歪んできた時間軸がさっきの戦いでとどめをさしちまったんだ…」
彼は特に感情のこもっていない口調でそう告げた。
「もうすぐ、世界は消えて無くなる……そしてエージュは時間逆行を始める…」
「そんな……それじゃあ、これまでやってきたことは……無駄だったの?」
美守は膝をつける。張り詰めていた糸が切れた、そんな瞬間だったからだ。
「だけど、今回は違う……」
ここで彼は力強く言った。
「俺は絶望していない」
美守はその言葉を聞いて顔を上げる。
「オーバーロウ……それで世界を救えるの?」
「……できるさ」
彼は言い切った。その姿はかつて記憶の全てを捨て去る決意した美守の姿と重なった。
美守は自分の事だったからこそ強く連想し、感じ取ってしまった。彼が何しようとしているのか、そして、した後はどうなるのかも。
「ダメよ…!」
美守は立ち上がって彼に言い寄った。
「そんな、そんなことをすれば……あなたの記憶が…!」
「俺の記憶じゃない」
「いいえ、あなたの記憶よ!」
美守は声を張り上げ、彼を背中から抱きかかった。
「あなたがあなたでなければ、私はここにはいなかった……あなただったから私は救われた……だから」
美守はそう言っている間にすすり泣き、その涙は彼の肩に流れ落ちた。
「……俺も美守がいなかったら、俺でいられなかった……だから俺もこうしてここにいられる……」
「だったら、ずっとここにいましょう……あなたのいるべき場所はここよ」
「いや、俺はあの向こうだよ……ミッドナイトスペースよりも深い闇の中、そこが俺のいるべき場所なんだよ……」
彼は寂しげに、しかしはっきりと言った。
「でも、ずっとこっちにいたいとも思っていた……『日下天児』として……」
「『日下天児』じゃなくても、あなたはあなたのままでいい……将君や空も……ソラだってそんなあなたを受け入れてくれたじゃない……だから、行かないであなたはこの世界に必要なのよ……」
美守は必死に彼を止めた。こうしなければもう二度と会えない、だからこそ必死だったのだ。そんなことをすれば世界は『今日』で終わり、『明日』はやってこないとしても止めずにはいられなかった。
だが、それでも彼の決意は揺らぐことはなかった。
「ダメなんだ……俺がやらないと消えた今までの人達の想いは無駄になってしまう…」
彼はそう言うと、彼の身体から光を放つ。美守はその光に触れてはいけないと反射的に動いてしまった。
「この記憶は、たくさんの人の記憶の上で成り立ったモノなんだ……時元牢に内包されている記憶に触れることでわかったんだ……『昨日』まで歩んできた記憶があるからこそ、『明日』も生きていける……生きている限り、苦しんで悩んで辛い想いをする……だけど人はそれでも生きて、記憶という松明を頼りに絶望の暗闇の中に希望の光を手にするために走る……そうしてあがき抜いた『昨日』までの人達の結果の上に『今日』の俺達が成り立っていたんだ……」
「あなたもその『昨日』の人なの?」
「そうだ……今まで『明日』を守り続けてきた『昨日』の人達のためにも……俺はやらなければならないんだ」
「……そう、わかった…」
美守は涙を拭いて言った。
「ソラのため、なのね…」
「やっぱりわかるんだな…」
彼も背中で笑いかけているようだった。
「この時間を繰り返す度に、またソラが生まれる可能性もある……ソラにあんな想いをさせるのは二度とゴメンだ……どんなに取り繕ってもそれが俺の意志なんだよ……そして、」
「そして?」
「君にも『明日』を生きて欲しいんだ」
「――ッ!」
彼は美守の方を振り向き、笑顔で言った。
「でも、その『明日』にあなたがいなくちゃ……」
「俺も『明日』に行くさ。遠い遠い『明日』だけどな……」
「遠い遠い『明日』……」
美守はまたこみ上げてくる涙を堪えて言った。彼が笑顔で言うのならその遠い遠い『明日』を信じたくなった。そうすることが今自分にできることだと思った。
「……待っている」
美守は精一杯の笑顔を作ってもう一度言った。
「……遠い遠い『明日』で待っているから」
「ありがとう」
彼は笑顔で答えた。
そして背中を向け、白く染まったミッドナイトスペースの地平線の先へ歩いていった。美守はその姿が見えなくなってもいつまでも彼を見送った。
「……やっぱりこれしかないな」
彼は黄金の大剣を手にした。そして今持っている限りのありったけの記憶をメモリオンに換えて、剣に光を注ぎ込んだ。
――期待に応えてくれそうだね
そこへエージュの声が響いた。
「お前のためじゃない」
――わかっている。だけど本当にこれでいいのかい?
「よくないと言えば、また時間を遡るだろ?」
――お見通しか
「身勝手な管理者だ」
――否定はしない
「だからお前の管理を否定するんだろうな、いつだって」
――君は記憶が戻ったのかい?
「さあな。どっちにしても、もう消える記憶だからな」
彼は最後に微笑みを浮かべてそう言うと、黄金の大剣を振り上げる。
そして振り下ろすまでに、彼はこれまで持っていた記憶がメモリオンの光と共に浮かんでは消えていき、最後に残ったのは――
**********
『今日』がやってきたことを告げる朝日が差し込んできて、アパートの部屋の住人は目を覚ました。
日下天児は『今日』も新聞配達をした。決められた順路に沿って、新聞をポストに入れる。それが終わると今度は、アパートの部屋に帰って弟の将と妹の空を起こす。
「起きろ!」
配達で疲れた身体に鞭打って大きいモーニングコールをかける。
「おにいちゃん、おはよう」
「おはよう、空」
素直な妹の空はこれですぐに起きた。だが弟の将はそれでも眠っている。
このへそ曲がりの弟を起こすにはとっておきのモーニングコールが用意してある。
「朝ごはん、できてるぞ」
この一言で将は飛び起きた。
「今日の飯はなんだ」
「ご飯と味噌汁だ。というかその前に挨拶だろ」
「おう、いただきます」
「おはようだろ」
天児は呆れながら言った。
将が起き上がってテーブルに向かうと、今ゆっくりと起き上がった美守に目を向ける。
「おはよう」
二人は挨拶を交わしてから、テーブルについた。
「パンが食べたいな」
将はトーストをほお張りながらぼやいた。
「前にはご飯がいいって言ってただろ?」
「前は前だ」
天児は首をかしげる。
「そらはごはんがいい」
空が元気よくカラになった茶碗を掲げる。それを見て天児はますます首をかしげた。
「おねえちゃんはどっちがいいの?」
「私は…」
美守は、一口程度しか入れられていない茶碗を置いて、目を上げて答える。
「どっちでもいいかな。私は食べられないから」
「ダメだよ、たくさんたべないとおおきくなれないよ」
「そうね」
美守は微笑んで一口の米を口に入れる。
「ごちそうさま」
一言そう言って、自分の分の茶碗を台所へ持っていく。
「兄ちゃん、ソラ姉ちゃんはどうしたんだ?」
不意に将に訊かれて、食を進めていた天児の手が止まる。
「ソラはな……」
これはちゃんと言わなければならない事だと天児は自分に言い聞かせ、真剣な面持ちで口を開こうとする。
「ソラは遠いところに行ったのよ」
そこへ美守が代弁した。
「とおいところ?」
「そう、遠いところよ」
優しげに言う美守の言う事を二人は信じたようだ。表情に疑いの色は無かった。
「じゃあ、もうあえないの?」
「そんなこと、ないわ……いつか、いつかきっとまた会える日がくるわ」
美守は微笑んで願うように言った。
いつか会える日がくる。ソラだけではなく彼ともまた……
どちらも遠い『明日』だけど。
**********
朝食を食べ終えると、すぐに登校の準備が始めた。
「なにやってるんだよ」
準備に手間取ったせいで将が文句を言ってきた。
「もうすぐいく」
即答して、制服を着込むと教科書をたっぷり入れた鞄を持って部屋を出る。
(『いってきます』言う相手はもういない、か……)
誰もいなくなった部屋に鍵をかける。
最初のうちはみんな同じ方向だったが、小学校に近づくと将はそっちの方へ駆け出す。
「今日は早く帰ってこいよ」
「ああ、わかってる」
天児と将はそれだけ言って校門をくぐる。
次は幼稚園についた。
「いってくるね」
「いってらっしゃい」
空は笑顔で手を振ってから幼稚園に入っていった。美守は笑顔で見送った。
「これから行かなきゃいけない場所があるんだ、ついてきてくれるか?」
天児は学校へは向かわず、反対の方向を向いて訊いた。
「ええ、かまわないわ」
二人はしばらく並んで歩いた。その間、会話を一切かわすことはなかった。
**********
「いらっしゃい」
郊外で車が行き交うことの少ない交差点に建てられた喫茶店に来客を告げる。鈴が鳴り、バイトの桑木猛は迎える。
「珍しいな」
猛をそう言って、やってきた白衣の女性のためにコーヒーを入れる準備をする。
「そんな気分なのよ」
白衣の女性は落ち着いた面持ちでそう言った。
「何か大事な事を忘れているような気がするんだけどね」
カウンターの椅子に座ってため息混じりに白衣の女性は言った。
「ここに来れば思い出せると?」
「そんな気がしたのよ」
白衣の女性がそう答えると、猛はコーヒーを出した。
「これでも飲めば思い出せるよ」
「そうなるといいわね」
白衣の女性はコーヒーをゆっくりと口に含む。
「……おいしいわ」
「それはよかった」
猛は心からの笑顔を白衣の女性に見せた。
「……あなた、ここのマスター?」
白衣の女性からの問いかけに、猛は笑顔が引きつらせる。しかしすぐに改めて笑顔を治して答えた。
「いいえ、ただのバイトですよ」
**********
天児は墓石の前に線香を立てて手を合わせる。
「遅くなってごめん……父さん、母さん……」
墓石に向かってそう言い、長い時間目を瞑る。
それが終わると、おもむろに立ち上がって美守に顔を向けた。
「墓参りだったのね……」
「今まで知らなかったからね……『日下天児』を捨てている間に二人とも事故で死ぬなんて思いもしなかった……」
天児はそう言って墓石を振り向いた。
「親の死に目にも会えず……泣く事もできなかった……二人と一緒に……」
その目は潤んでいたが、必死で抑えているのが美守にはわかった。
「あなたも辛かったのね…」
「いや、彼に比べたらこんなもの…」
天児は拳を握り締める。
「結局俺は彼に押し付けたんだ……大切な人との記憶が消える恐怖から。いつか『日下天児』としての自分が消える不安から……ある人を見ていたら、それがたまらなく怖くなって耐えられなくなったんだ…」
「でも、彼は幸せだったわ……そうでなかったら、あんなことをしなかった……どうしても守りたい『明日』があったからこそ、『今日』を救えた」
「君にそういわれるとありがたいよ……」
天児は空を見上げた。
「あれからミッドナイトスペースは開かれることは無くなった。彼がオーバーロウで時間軸を安定させたおかげで、エージュは手出しできなくなった……代償として彼は全ての記憶を無くして、こことは違う場所で眠りについた…」
美守はその話を聞いて、
「あの戦いの一瞬だけ、俺は『彼』になった……だから『彼』がこれまですごしてきた記憶もこれから何をしようとしているかもわかってしまった……どうしようもなかった、『彼』でなければ時間軸を安定させることはできなかった……」
「………………」
「本当なら消えるべきは俺だったんだ……『日下天児』を捨てたはずなのに、またこうして『日下天児』として生きているなんて……『日下天児』に相応しいのは彼だったというのに……」
「……でも、あなたは彼の代わりじゃないわ……彼があなたの代わりじゃなかったのと同じように……」
「君がそう言うのなら、そうなのだろうな……」
天児は微笑んだ。
「俺には彼の代わりなんて無理だから」
「だからあなたは『日下天児』でいるのよ」
「……わかったよ」
二人は笑顔を交わすと、墓地に爽やかな風が吹き、美守の伸びてきた銀色の髪を揺らした。
「これから君はどうする?」
天児が訊くと、美守は髪を撫で下ろし答える。
「旅に出てみようかと思うの」
美守は風の吹いた方向を見て続けた。
「私は今まで持っていてよかった記憶がなんて無いも同然だから。これから色々なものを見て、聞いて、この記憶を塗りつぶしていきたいの。それに、彼が守った『明日』がどんなに素晴らしいものなのか、この身体で感じていたいのもあるわ」
「彼と会えるかもしれないから、か?」
美守は天児の方を向き直して笑顔で言った。
「ええ、彼は遠い遠い『明日』で待っているから」
「……そうか」
天児は美守がそう答えて悟った。彼女が今ここで旅立つつもりだということを。彼の記憶によれば、彼女は突然やってきたりいなくなったりしているから、今すぐにでも目の前から消えてもおかしくないと思えたのだ。
「将と空にもよろしくと伝えておいてね」
「ああ、二人とも悲しむけどな」
「また会えるとも伝えておいて」
「俺もまた会いたい」
「あなたの事を待っている人もいるでしょ、そんなこと言っていいの?」
天児は美守に言われたのは意外だったため驚いた。
「……そうだな、彼女にも会わないとな……あって色々話したい、彼女が記憶の全てが消え去ってしまったとしても俺は彼女を愛していたから……」
天児は空を見上げて遠い場所を見つめながら言った。そして美守に向けてこう言った。
「ちょっと遠いけど、君と彼ほどじゃないからね」
「天児君って嫌味を言う人だったのね」
「俺と彼は違うからね」
「フフ……」
天児は微笑んでそう言うと美守も微笑んだ。
「それじゃあ、もう行くね」
「素晴らしい『今日』になることを祈っているよ」
「ありがとう、天児君」
美守は天児に背中を向けて歩きだした。
行くあてもなく、ただ『明日』を求める旅。『昨日』を捨てるためだけに生きてきた時に比べれば今の心境は軽く弾みそうなほど心躍るものだった。
美守はふと懐中時計を取り出して見た。静かに確実に時を刻み、『今日』から『明日』へと移ろいで行く確かな針の音が、『明日』の先に彼が待っていると示しているようで、足を止めるわけにはいかない気持ちにさせてくれた。たとえ彼が全ての記憶を失い別の人間になってしまったのだとしても交わした約束が記憶に刻み込まれている限り、また出会えばいいだけのことだ。
(私達が今度初めて出会うのはいつになるんだろうね……)
美守は光り輝く青空を見上げた。遠い遠い『明日』へと行ってしまった彼をその情景に重ねて。
**********
光と彼と時計の針だけがその空間にあった。
彼は、仰向けになって頭上に浮かぶ時計の針だけを見ていた。
時計の長針は上に雄大に伸びて、短針は図太く下に短く構えられていた。そして長針と短針の分かつ中央の円には亀裂が入り、今にも長針と短針が裂けそうであった。
――君の願い通りに『今日』は続いているよ
エージュは彼に語りかけてきた。
「それはよかった……」
彼は弱々しい口調で言った。
――君にはいつも驚かされる……時間軸を安定させた上で、私に一撃を与えるなど君にしかできないことだからね
「……お前にこれ以上、『今日』を好きにさせるわけにはいかなかったからな」
――確かにこれではミッドナイトスペースも開けず、ファクターを作り出すこともかなわない。だが代償として君はまもなく全ての記憶が消え去ってしまうことになる。いくら全ての法則を超えるオーバーロウも記憶から作り出すメモリオンが無ければ発動はできない。せっかく甦った記憶も泡沫の夢に過ぎなかったということか
「いいさ、捨てた記憶をまた捨てただけのことだからな」
――今度はいつ目覚めることになるのだろうか?
彼はその問いかけに最後に残った記憶を脳裏に浮かべて答えた。
「すぐ『明日』さ……約束したからな」
そして彼はエージュに向かって微笑んで、瞼をゆっくりと閉じた。意識が深い闇の中へ落ちる中、彼の『日下天児』としての記憶が浮かんでは消えていく。
――おやすみ、次に目覚めたときも君が君であらんことを
ミッドナイトアクター @jukaito
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