第14話 引退しても王様から頼られます。
王様から呼ばれたので御影も前に出て膝を突いた。
「面を上げよ」
陛下の言葉で御影は顔を上げた。
すると、陛下はニヤリと笑みを浮かべた。
あれは、何か企んでいる顔だ。
「叢雲御影、王国騎士団、宮廷魔法師、特別顧問を命ずる」
その言葉に他の貴族たちは騒ついた。
「お断りします」
御影はキッパリと言い放った。
それにより謁見の間は静まり返った。
国王陛下からの任命を断るなど前代未聞の事である。
「い、今なんと言ったか?」
これには流石の陛下も驚いたようである。
「ですから、お断りすると。そんな役職に就いたらメイド喫茶の経営自体に差し支えるではありませんか?」
「し、しかしだな、これは国にとっても大変、重要な役職でな。君以外、適任が居ないという判断なのだが」
陛下は何としてでも御影を顧問の座に就けたいようだ。
「仕事量が少ないのなら考えてもいいですが?」
「頼むやってくれ!」
「分かりました。謹んでお引き受け致します」
他の有力貴族からも反対意見は出なかった。
御影を敵に回すとろくな事が無いのは百も承知だろう。
「以上で謁見を終了する」
貴族たちは公爵から順に謁見の間を後にする。
御影は最後に帰ろうと謁見の間を出ると執事さんに止められた。
「御影様、陛下がお呼びです。こちらへ」
「やはり、帰してはくれんか」
執事の案内により、応接間に通された。
そこには既に、陛下と公爵様、宰相さんが座っていた。
「お待たせしました」
御影は少し機嫌が悪そうな顔をした。
「そんな顔するなよ。どうせ、お前さんは普通に頼んでも断ると思ってな。謁見の場で他の貴族の目のあるところで発表したのだ。まさか、あの場でも断るとは思わんかったがの」
陛下は豪快に笑った。
「それで、何をしろと言うのですか?」
御影は未だ不満げに聞いた。
「何、特別顧問と言っても形だけの役職みたいなもんだ。お前さんは魔法はもちろん武術、剣術にも優れているのだから、その技術を国の連中に教えてやって欲しいのだ」
「まぁ、それくらいならやりますよ」
「本当かね!? これでうちの国も強化できるというものだ」
「しかし、武術はともかく、魔法は生まれ持った適性が大きく関わるので教えてどうこうなるものでも無いですよ」
御影の場合、世界神様からのご加護を受けているので、チートな程の魔法が使えるのだが、普通の人間ならそうはいかない。
御影はその話を終えると王城を後にした。
そして、御影は帰路に就いた。
「おかえりなさいませ。陛下からまたしても厄介なことを頼まれたご様子ですな」
執事のロイクが声をかけてきた。
「分かるのか?」
「ええ、旦那様のそのような顔は何度も見てきましたから」
「ああ、そうだったな。お前とももう、長い付き合いだもんな」
ロイクとは御影が転生してから二年ほどたった時に王様から派遣してもらったのだ。
「それで、陛下は今度は何を押し付けてきたのですか?」
「宮廷魔法師と王国騎士団の特別顧問になれだと」
「それは、それは。引退してもゆっくりはできそうにありませんね」
二人は同時にため息をついた。
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