第4話 最強賢者は引退します。

 応接間に通され、数分待つといつものごとく、国王陛下、公爵様、宰相さん、そしてギルド本部長が入ってくる。


「この度は、魔獣討伐ご苦労であった」


国王陛下から労いの言葉である。


「いえ、いくつか魔獣の核を取って来ましたので、ご確認を」


御影はストレージから核をいくつか取り出した。

クラリスは終始緊張している様子でそわそわしている。


「確認した。それで、そちらのお嬢さんは?」


いたって普通の疑問である。

御影の隣には緑の髪の美少女が居るのだから。


「私が森の中で保護した子です。今後は私が雇うつもりです。それで、この子に王都の永住権を頂けないでしょうか?」

「うむ、君には色々世話になっているからな。そのくらいの事は造作もない。おい、手配を頼む」


国王陛下が宰相さんに手配を頼んだ。


「かしこまりました。少々お待ちください」


そう言って宰相さんは部屋を後にする。

数分後、書類を手に宰相さんが部屋に入って来る。


「お待たせ致しました。こちらが永住権に関する書類になります。ここに永住権を所有なさるご本人こ署名と、御影先生の署名もお願いします」


宰相さんからペンを渡され、一通りの

内容に目を通す。

特に問題は無かったので、御影とクラリスは署名欄にサインした。


「これで、そちらのお嬢さんも王都に永住出来るぞ。それで、君は本当に引退するのか?」


国王陛下が真剣な眼差しで御影を見ている。


「はい、これで最後の依頼にすると決めてましたから。もう、充分過ぎるほど稼ぎましたし、これからは隠居しようかと」

「そうか、それは残念だが、君には働き過ぎなほど働いてもらったからな、お疲れ様と言う事にするよ」


陛下は少し目を伏せた。


「ありがとうございます。色々とお世話になりました」

「それと、君の引退についてはギルドを通して発表してもらう。急に、君が居なくなれば皆、不安がるだろうからな」


この時、御影の名前は魔法を使わない最強賢者として知れ渡っていた。

何故魔法を使わないかと言うと、魔法を使ったらこの世界ごと破壊してしまいかねないからだ。

人前で戦う時は手加減の為、剣しか使っていなかった。

職業が賢者であるのに剣一本でA級以上の魔物を狩る姿は度肝を抜くもので、一気に最強の剣使い賢者として名前が広がった。


「分かりました。発表してもらって構いません」

「それで、引退してからどうするつもりなんだね?」

「ああ、ちょっと店でも開こうかと思いましてね」

「君のやる店とは、ちょっと楽しみだな」


この時、皆、魔術書やポーションなどを売る店を開くのだろうと皆が思っていた。

この世界最強の賢者がメイドカフェを開くなど誰が想像しただろうか。


数日後、御影の冒険者引退がギルドを通して大々的に発表されていた。

御影に憧れを抱く冒険者たちからは引退を惜しむ声が多く上がったそうだ。

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