第5話 開業の準備をします。

 冒険者を引退して数日、御影はメイドカフェの店舗になる場所を探していた。

できれば、王都の中心地がいいのだが、さすがは王都なだけあって、どこも埋まっているのだ。


「さて、どうしたもんかな。資金は充分あるんだがな」


御影は一人で王都を歩いていた。

クラリスは御影が陛下からもらった家で休んでもらっている。

幸い、部屋は余らせてたから問題なかった。


「あんまり頼りたくはなかったが、陛下の所に行くか」


御影は王城へと向かった。

王城には例のごとく、知り合いの門番が立っていた。


「お! 御影先生じゃないですか! なんで冒険者辞めたんです?」

「まぁ、色々あってな。充分稼いだからもう、隠居生活をしようと思ってね」


門番と少し話した後、王城の中に入って行く。

中に入ると、従者によって応接間に通される。

本来ならきちんとした手順を追って、国王陛下との謁見が許されるのだが、御影はそんな手続きなどしなくても陛下と会う事が出来る。


「待たせて悪かったな」


陛下が応接間に入ってきた。


「いえ、こちらも急に来た訳ですのでお気になさらずに」

「うむ、それで、今日はどういった用件かね?」

「以前、冒険者を引退したら店を開きたいといいましたよね? その店舗を探しているのですが、王都の中心地ではどこも埋まってまして、陛下なら何とかならないかと」

「そうなると思ってな、用意しておいたぞ。ここだ」


そう言って陛下が地図に印を付けてくれた。

そこは王都の中心地であり、かなりの繁華街である。


「ありがとうございます! さっそく行ってみようと思います」


そう言って地図を手に、繁華街へと向かった。


「ここかぁ」


地図を頼りにその場所に行くと三階建ての建物があった。

さすが、王家の所有の土地と建物だ。

かなり、好立地である。

陛下からは自由に使っていいと許可も得ている。


「とりあえず入ってみるか」


御影は鍵を開け、中に足を踏み入れた。

長年、使われていなかっただけあり、埃が溜まってはいるが、その他に問題は無い。


『浄化』


御影はクリーンの魔法を唱えた。

少しの魔法適性があれば、誰でも使える簡単な魔法だが、御影のクリーンは訳が違う。

一瞬にして、部屋全体を綺麗にしてしまった。

同じようにして、二階、三階も掃除してしまった。


「これは、クラリスだけじゃ従業員が足りないな。募集かけるか」


そんな事を考えながら、御影は鍵を掛けてその場を後にする。

その足で、御影は呉服店に向かった。

メイドの衣装を作ったもらうためである。


「いらっしゃいませー! あ、御影さんじゃないですか! 今日は何かお探しで?」

「こういう服を作ってもらいたい」


御影は元の世界の記憶をもとにして描いたメイド服を見せる。


「これは変わった服ですね。でも、任せてくださいよ!」

「どれくらいかかります?」

「そうですね。一週間くらい頂ければ」

「お願いするよ。それと俺の新しいスーツが欲しい」


御影はグレーのシャツに黒のジャケット、紺のネクタイを購入し、その場で着替えた。

少し高くついたが、経営者ならこれくらいは着ないとな。


「よくお似合いですよ」

「ありがとう。お願いした服だが、予算はいくらでもいいから、好きにやってくれ」

「かしこまりました。いつもありがとうございます」


御影は呉服店を後にする。

新しい服というのは気分がいい。


「次は従業員の募集だな」


そんな事を考えながら繁華街を歩いていた。

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