第46話 反抗期~自嘲2

 遥貴が瑠璃子の元へ赴いたのは、翌々日の事だった。特別室ではあるが、監獄である。面会室で面会する際には、やはりガラス越しだった。

 瑠璃子は手錠などはされていなかった。部屋に入ってきて、遥貴を見た途端、驚いた顔をした。未来は、瑠璃子に対してお辞儀をした。顔を上げると、瑠璃子もお辞儀をした。

「瑠璃子様、こちらは尊人様のお子様で、現国王の遥貴様です。」

未来がかしこまって言うと、遥貴は頭を下げた。瑠璃子はじっと遥貴を見つめ、そして微笑んだ。

「尊人さんにそっくりですね。そうですか、国王になられたんですね。」

穏やかに言う瑠璃子は、あの時の危険な雰囲気はまるで感じさせない、王家の人間らしい物腰だった。

「瑠璃子さん、あなたは、父を殺そうとしたのですか?仲が良かったと聞きました。それなのに、なぜ?ご自分が国王になりたかったのですか?」

遥貴がいきなりそう言いだしたので、未来はぎょっとした。そして、遠慮がちに瑠璃子の顔を見た。怒るか、青くなるか、と思ったが、意外にも穏やかな表情は変わらなかった。

「尊人さんには、本当に申し訳なかったと思っています。あの時は、自分がどうなるのか不安で、何も見えていませんでした。後悔しています。今も、そして昔も、国王になどなりたくはなかったのです。ただ、どうしたら良いか分からなかった。本当に、申し訳ありませんでした。」

瑠璃子は深々と頭を下げた。未来は思わず頭を下げた。遥貴は頭を下げなかったが、未来を見て言った。

「恩赦だ。瑠璃子さんの罪を許そう。」

と言った。

「えっ。あ、陛下、それはここですぐには決められません。政府が決める事です。」

未来が言うと、

「そうか。それは失礼。瑠璃子さん、もし、無罪放免になったら、この先何がしたいですか?」

遥貴は堂々としていて、未来を驚かせた。

「何も。いえ、もし国民の皆さんのお役に立てる事があるなら、それをしたいと思います。」

瑠璃子が答えた。未来は、瑠璃子を改めて見た。瑠璃子もまた、しかるべき教育を受けて来た王室の人間だ。あの時だけ、乱れた。もしかしたら、反抗期が遅く来たか、などと変な事を考えた未来だった。

 宮殿に帰る道すがら、遥貴は言った。

「未来、録音しておいたか?」

「ああ、していたよ。」

「あれを聞かせれば、政府も恩赦を認めるだろう。」

未来は穴が開くほど遥貴の顔を見つめた。いつの間に、こんなに大人になったのか。そういえば、また少し背が伸びたな、などと考えながらしばらく見つめる未来だった。

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