第25話 クーデター~浅薄2

 翌朝、朝食の席に着いた尊人は、まだこの建物の中に部外者がいないので、普段ここに寝泊まりしている職員や近衛兵たちを全員集めた。

「皆、聞いてくれ。私は、クーデターを起こそうと思う。」

一瞬ざわっとしたが、誰もが尊人の次の言葉を待つために、再び静かになった。

「私は、皆も知っている通り、この国の国王制を廃止しようと思っている。しかし、政治的権限のない私には、それは出来ない。しかし、私は・・・私はこんな、意味のない国王でいたくはない。政府の操り人形は嫌なんだ。いや、お飾りの人形かな。私は、ただ、人間になりたいんだ。」

一度言葉を切って、尊人は皆を見渡した。

「クーデターを起こし、国王に権力を再び持たせ、その上でこの国の王制を廃止する。そうしたらまた、元の通りだ。このクーデターを起こすには、皆の協力が必要だ。もし協力してもらえなければ、諦める。」

尊人は一瞬目を閉じた。

「だが、もちろん危険が伴うものだ。今のうちに、ここから去りたい者は、そうしてもらって構わない。ただ、この計画を外に漏らしてはもらいたくない。それだけは、頼む。」

そう言って、尊人は頭を下げた。

「陛下、本気なんですね。」

藤堂が発言した。

「藤堂、すまない。」

また、尊人は頭を下げた。

「陛下、いえ、尊人様。頭を上げてください。私は、尊人様が苦悩なさる姿を、ずっと見てきました。何とかならないかと、私も上司に訴えてみたものの、誰も取り合ってくれませんでした。これは、クーデターしかないと私も思います。あなたが決心したなら、私は従います!」

藤堂はそう言って、後ろを振り返り、他の近衛兵たちを見渡した。近衛兵たちは、口々に

「やります!」

「私もやります!」

と言って手を挙げた。

「皆、ありがとう。恩に着ます。」

尊人は涙をこらえて左胸にこぶしを当てた。


 ほどなくして、内閣改造が行われ、大臣の任命式が行われる事になった。国王である尊人が形だけ、大臣を任命するのだ。それはこの宮殿で行われる。普段SPがくっついている首相だが、宮殿にいる間は、近くにはいない。報道陣も数が限られ、一般人はもちろん入れないので、油断しているのだ。

 この時を狙って、クーデターの計画が練られた。失敗したら逮捕される。いや、命を奪われるかもしれない。それでも、みな快く尊人に協力してくれた。

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