第13話 婚礼~内情6

 晩餐会が開かれた。前のテーブルに、尊人と麗良が並んで座る。ワインで乾杯し、フルコースの料理が出てくる。未来と健斗は国王夫妻のテーブルの後ろに左右に分かれて立っていた。二人が食事をするのは、晩餐会が終わってからである。

「あの二人には、お食事はないの?」

麗良がそれを気にして、尊人にこっそり尋ねた。

「ああ、彼らは今仕事中だから、食事はこの会が終わってからだよ。可哀そうだけど。」

尊人はそう言い、やはり麗良には優しい面もあるのだなと思ってにっこりした。そして、

「俺はいつも二人に甘えてばかりだ。守ってもらって、当たり前だと思っている。」

と、独り言のように言い、立っている二人を盗み見た。座る事も許されない二人。二人とも大学を卒業してそのままこの仕事に就いたのだ。自由意志とは言え、前からやりたかった事もあるかもしれない。それを、なし崩し的に近衛兵にさせてしまった。自分の為に。

「尊人さんは、愛されているわね。あの二人に。」

麗良が微笑しながらそう言った。

「え?」

尊人はちょっと赤面した。傍から見たら、仲睦まじい夫婦に見えただろう。そして、後ろから見ても。健斗と未来は、立っていることも、食事が与えられない事もなんとも思わないが、尊人と麗良がこそこそと談笑し、尊人が赤面している事には、耐えがたい思いを味わっていたのだった。

「二人ともイケメンよね。尊人さんがうらやましい!」

麗良がそう言ったので、尊人はナイフを落としそうになった。いや、ナイフが手から離れたので、落としたのだが、健斗が床に落ちる前にさっとそのナイフをキャッチしたので、周りには気づかれなかった。いつの間にすぐ近くに来ていたのか。尊人は内心焦った。

「どうした?動揺してるのか?」

健斗が耳元で言った。

「いや、何でもない。ありがとう。」

尊人はちらっと健斗の顔を見て、すぐに視線を外して言った。健斗が引っ込むと同時に未来が新しいナイフを持きて、そっとテーブルに置いた。

「何話してるんだ?楽しい話か?」

未来も尊人の耳元で囁く。

「べつに、そんなんじゃないよ。」

尊人は、今度は未来の事を振り返って言った。

「取り乱すなよ、尊人。みんなが注目してるんだからな。」

未来は優しくそう言って、さっと自分の持ち場に戻った。二人とも、ちゃんと尊人の事を見ているし、すぐに助けてくれる。麗良は、

「素晴らしいわね。」

心底感心した声で言った。

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