第49話

 大地は急降下したが間に合わず、シキミの姿を完全に見失った。



「どこだ…………シキミ!」



 梅の声が、遠くから聞こえる。



「……世界を繋ぐ、空間が…!」



 久遠様の叫び声が前方から聞こえる。


「大地!こっちへ来い!!早くしないと人間の世界へ戻れなくなる!」



 既にみんなは空間の向こう側へ行ってしまった様だ。



 空間は裂けて歪み、どす黒い火花に似た闇があちこちからバチバチと、嫌な音を立てながら大地を襲った。


「……うっ!」


 闇は鋭くて大きな炎の破片となり、大地の翼を燃やしながら裂いている。


「大地!!!大丈夫?!」


 神殿の庭があった場所に近づこうとしていた大地は、もう一度大きな闇の火花に両翼を焼かれ、大きな悲鳴を上げた。




「……うわあああっ!!」




「大地!!」




 闇の火花は徐々に大きくなり、それは黒蛇カシャの姿に変身した。





「…………私の娘はどこ?」






「…カシャ…」






 大地は、痛みによって朦朧とした様子で目を開けた。






「シキミはどこへ消えたのです!!あの子が…………あの子がいなくなってしまった…………!!!」






 黒蛇カシャは、うろたえていた。






「お前が城を粉々にしたからだろ…あの子が落ちていったのは多分、人間の世界だ」






 大地は答えた。






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