第二十五話 五色の空と繋がり

テーブルには私が作った料理以外にもいくつか料理が置かれていた。参加者の誰かが作ってきてくれたのだろう。

 私が作った料理を含め、すべての料理が魔法によって保温されていた。

 

 「ついに今日が来たな」


 興奮気味のディルは開始が待ちきれないといった様子だ。


 「そうですね、最高の誕生日会にしましょう!」


 ディルは頷くと手を挙げパチンと指を鳴らした。

 すると山のほうから何かが飛んできた。

 目を凝らしてよく見てみると、五つの飛行機雲のような煙がこちらに向かってきているのが見えた。

 煙はそれぞれ違った色で、空に掛かる虹のようだ。

 その色は水の巫女、風の妖精、火の魔神、闇の精霊、光の天使。

 いつも魔法を唱える的の協力者、それらの色だった。


 「さぁ、誕生日会の始まりだ!」


 山に囲まれたこの草原の上を虹のように美しい五色のラインが空を染める。


 「すごい…」


 イベント管理はディルの担当。この光景を見るだけでその意気込みがわかる。

 この世界に来て今まで見た景色の中で一番きれいで壮大だった。


 「ディル、凄いです!」


 ディルはニッっとこっちを見て言った。


 「まだだ」 


 五色の光は空を端から端まで飛び、大きな五色の虹を作った。

 その雲から雪のような光の粒が降ってきた。

 そして、五色の花火のような爆発の魔法が唱えられ、誕生日会が始まった。

 

 「ディル、ありがとうございます!」


 空の美しさに自分も知らないうちに涙を浮かべていた。

 家族からの愛情を久しく忘れていた私は、ディルと同じく誕生日会を楽しみにしていた。

 山向こうまで飛んで行った煙の主である五人の協力者がこちらへ戻ってきた。


 「ディル、シロネ。誕生日おめでとう!」


 協力者達は私達の誕生日を一緒に祝ってくれたのだ。


 「皆ありがとう、最高のスタートになった」

 「どういたしまして」

 「初めまして、シロネ。改めまして我は水の巫女、レン・サルバー二そして彼は...」


 ディルを挟み、初対面である五人との挨拶を終えると、周りに集まってきた魔族達やクロバとの食事会が始まった。

 テーブルに置かれた見慣れぬ料理はレンやほかの協力者達が持ってきてくれたものらしい。

 水の巫女、レン・サルバー二は果物のジュースを。

 風の妖精、ドラエ・ジンダは木の実や野菜のサラダを。

 火の魔神、ジーク・ヴォーラは鍋物の料理を。

 闇の精霊、ダリアと光の天使、フォーリア・ソルシィヤはディルの甘いもの好きをら知っていたらしく、協力してチョコレートフォンデュを作ってきてくれた。


 「皆さんありがとうございます!」


 協力者達はニコッと笑ってった。

 くだらない世間話に始まり、魔法を唱えるコツや、転生してからこれまで起きたことなどを話した。

 会話の中でふと思った質問をした。


 「ディル、どうして誕生日が分からないのに自分の年齢が分かるんですか?」

 「魔導書のステータス欄に年齢が書いてある。誕生日の記載はないがな」

 「誕生日になると毎回更新されると?」

 「あぁ」

 「じゃぁ、毎日確認していれば自分の生まれた日が分かるんじゃないんですか?」

 「やろうとしたことはあるのだが、めんどくさくて続かなかった」


 無表情、いや、少し呆れた顔でディルを見た。


 「そんな顔で見るな」

 「能力値以外の欄はあまり意識して見ていませんてました」


 自分の魔導書を取り出した。

 ディルも、自分の魔導書を取り出し確認した。


 「あっ」

 「どうしました?」

 「年齢の隣に生年月日の欄が追加されている」


 魔導書は、能力値や属性適正値以外の本人の知らない情報は記載されない。

 今日のことでディルの誕生日が更新されたのだ。

 もちろん私の魔導書にも誕生日が記載されていた。

 ディルと同じ、八月十五日と。


 「これでは正式に同じ誕生日ですね」

 「あぁ」


 ディルはこの世界に来て初めて見せる笑顔を見せた。

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