第二十四話 当日と会場

 私とディルはそれぞれ準備を進め、ついに誕生日会当日が来た。

 誕生日会は昼から。

 朝食はいつも通り済ませ、そこから私とディルは別行動となった。

 ディルは会場の最終チェックやイベントごとの指示のために家を後にした。

 私はディルを見送り、ケーキ作りを始めた。

 ちなみにどこが会場かはまだ聞かされていない。

 昼になったら家にむかえにきてくれるらしい。


 「昼までに間に合馳せないと...」


 先日試作したケーキにさらにアレンジを加え、その他の料理の準備も進めた。

 ディルによると誕生日会に参加者は私とディル、クロバに友人らしい。

 友人?


 「今日来る友人って誰だろう。ディルの友人かな」


 そんなことを考えながら料理を進めていると...。


 「お邪魔しまーす!」


 十二時頃、元気な声でクロバがやってきた。


 「いらっしゃい」

 「うわぁ。すごい量だな。運ぶの大変そうだな」


 (あなたが大食らいだから沢山量を作らないといけなくなっちゃったんでしょうが)

  

 内心文句を言いながらクロバの協力で、料理を運ぶ準備を始めた。

 そんなこんな準備をしていたらあっという間に時間が過ぎ、昼になった。

 クロバは料理を乗せた荷車をゴブリンと協力して運んで行った。

 私はディルの迎えを待っていた。

 壁に掛けられた時計から昼を示すベルが鳴る。


 「シロネ、時間だ、行くぞ」

 「はい」


 ディルは時間ちょうどに呼びに来た。

 随分と楽しそうだ。


 「外で待ってたんですか?」

 「うるさい」


 少し頬を赤くしてディルはそう言った。

 実は少し前からディルの気配はしていた。

 そうとう今日が楽しみだったみたい。

 「フライ」の魔法を唱え、楽しく会話しながらディルと一緒に目的地に飛んだ。

 パーティー会場はビィーンと戦闘をした草原だった。

 所々に戦闘の跡が残り地面が荒れている箇所もあったが、ほとんどは魔法で修復されていた。

 会場に設置されたテーブルにはすでに料理が並べられ、その近くでクロバが待機していた。 

 ちなみにその手にはフォークが握られている。


 (気が早すぎでしょう、どれだけお腹減ってるんですか!)


 そんな腹減り勇者に手を振り返してからディルとの会話に戻った。


 「ほとんど元通りですね」

 「なかなか大規模な魔法だったから、時間がかかったがな」


 そんな話をしていると、周りがほんの少し暗くなった。


 「さあ、我々の誕生日会を始めようではないか!」


 ディルに続いて私も言った。


 「はい!」


 待ちに待った誕生日会の始まりだ。

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