第二十三話 ケーキと協力者

 一応料理ができる私はケーキを担当、ディルは飾り付けや、軽いゲームのようなものを担当することになった。

 ディルはチョコレートが好きなので、今回はチョコケーキを作ることにした。


 「せっかくだからすごいケーキにしたいな」


 私はケーキの案を考えながらキッチンに立っていた。


 「フォール、お願いがあるの。ケーキの飾り付けに使うリーアの実を取ってきてくれる?」

 「ピィー!」


 フォールは元気よく飛び出して行った。

 最近、フォールには何かを取りに行ってもらってばかりだった。


 (今度遊んであげないと)


 フォールを見送ってからケーキの試作を始めた。


 「誕生日会まであと半月、素敵なケーキを作ってディルを脅かしてみせる!」


 私はケーキ作りを始めた。

 まずはパンから、パンをこねる時にチョコを少し練りこんだ。

 よりチョコの風味が出て美味しくなるに違いない。

 次にパンを焼く。

 ふわふわで柔らかいパンになるよう火加減に注意して焼く。

 パンにチョコと一緒にいれた少量のバターが溶けていい匂いがする。


 「よし、試作品一合完成!」

 

 次はチョコのクリーム作り、牛乳と卵、砂糖にチョコレートを混ぜ、ダマになったり、ムラが出ないよう、丁寧に混ぜ合わせる。

 クリームも完成。


 「ピィー」


 ちょうどいいところにフォールが返ってきた。


 「おかえり、ナイスタイミング!」


 フォールは、取ってきたリーアの実を私に渡した。

 それをケーキに乗せ、練習に作ったスモールケーキが完成した。

 見た目だけなら店に出ているケーキと同じぐらい美味しそう。

 ケーキを切り分けてフォールと試食した。

 

 「いただきます」


 私とフォールはケーキを同時に口へ入れた。

 自分で言うのもんだけど、とてつもないおいしさだった。

 フォールも美味しさのあまりのたうち回っている。


 「やばい、私料理の天才かも。この世界で料理人として生きていく!」


 ということで魔王後継者としての人生は終わり、パティシエとしての人生が始まったのだった...。


 作業に戻った。


 誕生日会は、クロバも参加してくれるとのこと。

 プレゼントを持ってきてくれるらしい。

 クロバは大食らいなので、ケーキは多めに作らなければならない。


 「クロバも来るし、ホールケーキかな」


 そんな計画を立てながら、誕生日会の準備をした。


 ・・・


 我はディル。魔王だ。

 今日は我とシロネの誕生日会に備え、イベント系の準備をするため、レイン北部に来ている。

「この辺りか。」


 レイン北部には、通常より、濃度の濃い魔力を持った水の巫女達がいる。

 普段は魔法を唱える時にしか目にすることが出来ない水の巫女だが、中には日常的に姿を見ることができるほどの魔力を持った巫女も存在する。


 「邪魔するぞ」


 林を抜けると彼女はいた。

  水の巫女、テリカ。

 池の周りを、鼻歌交じりに飛びがっている彼女が、この辺りの水の巫女の主だ。


 「魔王さん、お久しぶりやね~」


 甘い声で囁きながら飛んできた彼女は、外見は人間で、青白いオーラを纏っている。

 身長は、中学生女子くらいだった。


「あぁ、久しいな」


 千年近く生きている我と、二百年近く生きているテリカは顔見知りだ。

 たまに濃度の濃い水の巫女がいる地域にのみさく植物を採取するために、森を出入りし、世話になっている。


 「今日も、草取りに来たんかい?」

 「いや、今日は頼みがあってきた」


 テリカはキョトンとした目で我を見てきた。


 「我が後継者を作ったのは知っているか?」

 「えぇ、風の噂でね」

 「そうか、話が早い。それで...」


 我は、シロネとの誕生日会の話をし、会場の飾り付けと、ゲーム制作の手伝いを巫女主に頼んだ。

 最初は腹を抱えて笑われていたが、古い関係あってか、すぐに了承された。


 

 「それではよろしく頼む」

 「分かった。それじゃぁ~、こちらから赴きます」

 「あぁ、またな」


 後日、会場設営のため、合流することを決め、その場をあとにした。

 そんな感じで、全ての属性の協力者代表の者の地へ赴き、協力を頼んだ。

 皆、我と共に面白おかしく何百年も生きてきた者の達だ。暇を持て余していたのが、面白半分なのか、皆二つ返事で了承してくれた。


 (これでよし、後は我が準備をすれば完璧だな)


 誕生日会一週間前にして、根回しが完了した。

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