第十九話 共闘と交渉

 皇帝が右手を上げると後ろにた男が兵に指示を出した。


 「全員、指示があるまで待機!」


 兵士たちは気を付けの姿勢で待機した。

 交渉スタートだ。


 「我々レインの魔族は人間との共存を望んでいます」

 「証明することはできるのか?そもそも貴様らもこちらに危害を加えてきているではないか」

 「危害、と言いますと?」

 「先日、割れの側近だった男が村を襲撃したレインの魔族に反撃するため、軍を率いて立った。しかし帰ってこない。どう説明する」


 どうやらビィーンの一件は皇帝の耳に入っていないようだった。


 「今その側近がどこにいるかお教えしましょうか?」

 「言ってみろ」

 「帝国内の牢獄にとらえられています」


 皇帝は信じられないといった顔をした。

 

 「証拠ならあります」


 ビィーンが作った偽のギルド依頼を見せた。

 皇帝も書類にビィーンの印鑑が押されているのに気が付き悔しい顔をした。


 (さすが皇帝、一目で書類のおかしな点に気づいちゃった)


 「確かにこれが証拠になりえるのはわかった。しかし、レインとの戦闘で罪もない兵士が死んだのは確かだ!」

 「それについてですが、その時の戦闘で死亡した帝国兵は一人もいません」

 「なんだと!」


 皇帝、そして周りにいた兵士たちも驚きの声を上げた。


 「調べていただいてかまいません。あの場にいた兵士は指揮を失いばらばらに帰途に就いたでしょう」


 これでビィーンが行ったことに対しての照明はできた。

 交渉のためにはまず、レインに対する悪いイメージを払拭する必要がある。

 第一段階クリア!

 

 「では、話を戻します。異世界から来た魔族に帝国、レインは襲撃を受けています。共闘をしませんか?」


 皇帝は悩んだ。


 「正直に言います。今回の戦い。私と魔王だけでも勝つことができます」


 この間カルに会ったときは作戦を立てるために一時撤退した。

 戦って負ける?

 そんなにうちの魔王はそんなに弱くない。

 

 「それではなぜ共闘の話を持ってきた」

 「この戦いが終わったら、帝国との間に平和条約を結びたいのです」

 「平和条約?」

 「はい、詳しい内容は書面でかわしますが。簡単に言えば帝国とレインの間で無駄な争いを無くし、平和に暮らそうということです」


 これが私の考えた共闘をし、帝国との関係も改善する一石二鳥の交渉。

 その結果は...。


 「わかった。その話受けよう」

 

 皇帝との共闘交渉が終了した。

 ディルに良い報告ができそうでよかった。

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