第十八話 帝都と皇帝

 「地図だとそろそろかな」


 村を出発してから1時間半以上飛んだ。

 ディルにもらった地図を確認した。


 「見えた!」


 山の隙間から帝都の城壁がうっすら見えた。

 あと数分で着きそうな距離まで来た。


 「あと少し、でも、どこに着地しよう」


 ディルには障壁で検問されると聞いた。


 「時間かかるし、面倒くさいな」


 ということで皇帝のいる城に直行することにした。

 空を飛びながら城壁の中を見渡した。

 町の中心に明らかに皇帝がいそうな巨大な城が立っていた。

 白塗りで高さが三十メートルほどある巨大な建築物。

 私は最上階のテラスに着地した。

 テラスの窓からなかを覗き込んだ。


 「奴らはどこから現れたというのだ!」

 「わからぬ、そもそも敵はどこのどいつなのだ」

 「勇者クロバの情報によると異世界の魔族の襲撃だとか」

 「あの勇者のことなどあてにできるか。素質はあっても所詮はその場しのぎの存在」

 「敵は精鋭ぞろいと聞くぞ!そんな信憑性のない情報にかまけている暇は無い!」


 なかでは数人の老人が過激な話をしていた。

 

 (クロバ、裏ではあんな風に言われてたんだ...)


 「やめろ。勇者クロバは我らの身勝手でこの世界に転生させられた被害者なのだ。悪く言うものではない!」


 そう声を上げたのは一人だけ大きな椅子に座り、マントを羽織った人間だった。

 見た目からして多分皇帝だと思う。


 (盗み聞きしてる場合じゃないや)


 窓を開け中に入った。


 「失礼します!」


 席についていた老人たちが驚いてきょとんとしていた。

 でもそのうちの一人が立ち上がった。


 「貴様、何者だ!警備兵、であえ!」

 

 男の号令でそばに待機していた兵士が剣を抜き迫ってきた。


 「私は魔族の国レインの使い、皇帝にお話があってまいりました」

 「我に何か用かね。レインの使いとやら」


 皇帝が前に出た。


 「我々レインの魔族は、帝国同様、異世界からやってきた魔族によって国を奪われる危機にあります。目的は同じ、危険な魔族から国を守りたい」

 「あぁ、そうだな」

 「そこで共闘し、異世界の魔族を打とうという話を持ってきました」


 帝国にとってレインの魔族はまだ信用されてはいない。

 この話を進められるかは、私の立ち振る舞いに全てかかっている。

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