第十六話 仲間割れと説明

 クロバは柄に手をかけた状態で突撃してきた。


 「シロネ、話をするためには拘束する必要がある。連携していくぞ」

 「はい!」


 私は初めてクロバと会った日のことを思い出していた。

 私とディルが帝国の兵士を皆殺しにしたという嘘を聞いてやってきた日のことを。


 「クロバ、最初と何にも変わってないじゃない。少しは戦術を考えないと、また負けるよ?」


 そう言いながらも警戒は解かなかった。

 最初にあったときはいきなり切りかかってきた。

 あれから修業を積んだことで居合に近いスタイルに変わっていた。

 クロバなりに考えているようだった。


 「水の巫女・風の妖精・真の眠りで・包み込め」

 「スリープ」


 「キャンセル」


 私の魔法がクロバの魔法によって打ち消された。

 この間模擬戦をしたときに分かった、クロバは無詠唱で魔法を唱えることができる。

 勇者の能力ってことかな。


 「ブースト」


 クロバは模擬戦の時と同様、移動速度上昇の魔法を使った。

 私のほうに一直線に突っ込んでくる。


 「風の妖精・空気を固め・盾となれ」

 「シールド」


 ディルが私とクロバの間に壁を作った。

 クロバは自分の目の前に壁が出るのをわかっていたかのように方向転換をし、ディルに標的を変えた。


 「シロネと違ってディルは複数詠唱が二つまでしかできない。先に倒すならディルだ!」

 「なめられたものだな」


 ディルは頬を引きつらせ、魔導書を開こうとした。

 

 「水の巫女・風の妖精・真の眠りで・包み込め」

 「スリープ」


 でも、ディルが魔法を唱えようとする前に私の魔法が先に届いた。


 「水の巫女・風の妖精・真の眠りで・包み込め」

 「スリープ」


 「我を優先して倒そうとする気持ちはわからなくもないが、シロネをそのまま放置するとはな」

 「やっぱり考えが足りないみたいですね」

 「互角以上の相手と二対一だったからな、無理もない。問会えずいったん帰るぞ」

 「はい」

 

 クロバを家に連れて帰り、初めでクロバにあった時と同様、椅子にしばりつけ、目が覚めるのを待った。

 二時間ほどでクロバは目が覚めた。


 「クソ、なんで俺は勝てねーんだ!」

 「もっと周りを見て戦ったほうがいいよ」


 普通に助言しながら話を始めた。


 「クロバ、今回の件は我々レインの魔族は関係ないぞ」

 「え、でも魔族が村人を殺していったんだ!」


 ディルは村からレインにやってきたカルと魔族の軍隊の話をクロバにした。


 「俺は...仲間に剣を向けるなんて」

 「わかればいい、いきなり魔族が攻めてきたら我々がやったと人間は勘違いしてもおかしくないからな」

 「ごめん」


 ディルは優しく微笑んで見せた。


 「だが、奴らは許さない、我々の目的、人間との共存をじゃましてくれた付けは大きいぞ!」


 優しい顔から魔王の顔になったディルは予想以上に激怒していた。

 ディルは魔族の軍団が来た時のために国境付近の魔族に警戒強化を促した。

 クロバには帝国に戻って異世界からの魔族が現れたことと、レインの魔族が無実のことを目撃者として証言しに行ってもらった。


 「さて、いつ攻めてくるかわからない奴らをどうしようか。シロネ、何かいい案はないか?」

 「今の現状は帝国も同じはず、ましてや奴らが潜んでいるのは帝国の森です。人間との中をよくするためにも、共闘をしたほうが良いと思います」


 ディルはニット笑った。


 「いいアイディアだ、カルを討伐すると同時に、人間との関係改善もできる。一石二鳥だな!」

 「はい。」

 「それではシロネ、クロバの後を追って帝国との共闘願いを出してきてくれ」

 「...。私一人ですか!」


 ディルはにこっと笑ってうなずいた。この魔王はめんどくさいようだ...。


 「私も嫌なんですけど、ていうか、王様に会うのに礼節なんてわからないんですけど」

 「何とかなるだろ」


 そういってディルは私を見送りだした。

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