第十三話 魔王後継者と日常
私の名前はシロネ、魔王後継者です。
今日は私の一日について紹介しようと思います。
まず、後継者の朝はゆっくりです。
八時ごろになりやっと目を覚まし、それから朝食を作ります。
「ふふぅふぅん。あ、ディル、おはようございます。」
前世で気に入っていた音楽を鼻歌しながら料理を作っていると九時ごろにディルが起きてきます。
ディルは席に着き、私の作った料理を楽しみに待ってくれています。
「今日の朝食は何だ?」
「今日は和食です。お味噌汁と焼き魚です」
私は元居た世界の料理を作るのでディルは食べたことのない料理ばかりでいつも興味津々です。
「オミソシル、なんだそれは」
「豆を熟成させたものに味をつけたりしてからお湯で溶かしたものです。今日は豚肉と野菜を入れて豚汁にしてみました。体があったまっておいしいですよ」
「てぅんじる...。豆と豚を使ったスープのようなものか、楽しみだ」
「今よそいますね」
私はディルがテーブルに着いたらすぐに料理を出せるよう準備していた食器に豚汁を盛り付けて出した。
「お魚はもう少し待っていてください、先に豚汁をどうぞ」
「ありがとう。では早速てぅんじ...」
ディルは口を開けたまま顔を真っ青にした。
「シロネ、大変だ!てぅんじるが泥になってるぞ!」
「お味噌を使うとそういった色になるんです。トマトスープみたいに素材の色が出てるいるだけなので安心してください」
「そ...そうなのか」
ディルは額に汗を浮かべながら食器に口をつけた。
「あぁー、やさしい味だー。具材にもしっかり火が通っている、何より味噌と豚肉のコンビが最高だ!」
「ありがとうございます」
母の料理の手伝いをよくやっていたし、こっちの世界に来てからも毎日料理をしている。
まともに作れなくてどうします。
と思うが、やっぱりおいしいと喜んでもらえると嬉しい。
次に、ディルが豚汁を穂奪っているところに焼きあがった魚を運んでいく。
「お待たせしました、メインの焼き魚です。今朝表の川に仕掛けた網にかかっていた魚です。温かいうちにどうぞ」
「うむ」
焼き魚はこっちの世界にも普通にある料理なので、魔王であるディルを喜ばせられるかは料理人の腕次第だ。
ディルは焼き魚をほぐし口に運んだ。
「旨い、シロネの料理はどれも旨いな!」
「ありがとうございます」
最近分かったのだが、料理をあまりしてこなかったディルにとって、食事とは生きていくための栄養補給であり、結局のところ何を出しても「旨い」というのだった。
ディルは食事を済ませると席を立った。
今日は国境付近の見回りと、帝国の情報収集のため外出する。
「弁当も楽しみにしているぞ。行ってくる」
「はい、行ってらっしい」
弁当を渡すとディルはカバンにしまった。
ディルのカバンは魔法のカバンで入れたものを入れた時のままの状態で保つことができる。
冷凍食材とか、温度管理とか、面倒なことは気にしなくてよいのだ。
「キュッ!」
「おはようフォール」
ディルが出発したころにフォールも起きる、だいぶお寝坊さんだ。
フォールにもご飯を出し、私も一緒に朝食をとる。そのあとはおかたずけとお洗濯をする。
「今日もがんばるぞ!」
家事全般が終わり、昼ご飯を済ませると午後からは魔王後継者としてのお勉強をする。
日によって異なるが、魔法の勉強や武術、座学、レインの見回りなどいろいろな勉強をする。
基本的にはディルが勉強については均等に伸ばすために指示を出してくれる。
「今日は武術の練習...タオルと水持ってかないと」
武術の練習は主に体術と剣術。ゴブリンの住む森に行き、修行する。
・・・
「お邪魔します。シロネです。修行に来ました」
「グォー」
一声かけると近くにいるゴブリンが許可を出してくれる。
これで森に入ることが許される。
警備の関係でゴブリンに許可を取らないと森に入れないようになっている。
ゴブリンの許可なく森に入ると魔法が発動し、森の外にはじき出されてしまう。
「お邪魔します」
私はいつも森の入り口から少し歩いたところにある太い木が何本も生えているところで体術や剣術の練習をする。
毎回ディルに課題を出されて、それを出来るようになったらディルに見てもらい、クリアしたら次のレベルに行くというものだ。
最初は木の枝を切ったり、石を持ち上げたりして体力をつける修業がメインだったけど、魔王後継者の特性で成長速度が速くなるらしくて、今は太い木を一刀両断したり、岩を突きで砕くといった人間離れした課題を出されている。
「キィーン」
森の中に甲高い音が響く。
「あぁー!惜しい、あと少しで切れたのに!」
もうちょっとでこの課題もクリアだ。
武術の修行を終えると家に帰ってディルを迎える準備をする。
それが私の魔王後継者の生活。
・・・
「ゴーン」
国境付近で黒い雷が落ちた。
「ここが俺の新たな支配地か」
その魔族は黒い不吉なオーラを放ち、魔族の軍隊を連れて帝国に向かって歩き出した。
私たちの知らないところで新たな敵が進行を始めていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます