第七話 少年と捕獲
家に帰り冷めてしまった食事をまた温めなおした。
「やっと朝食が食べれるな」
「私もおなかがすきました」
魔石時計で確認すると時間はすでに十時を過ぎていた。
食事を終え食器を片づけ、午前の魔法練習を始めた。
最初に初心者用の基本魔法を教えておらって以降、一人で練習する日々が続いていた。
ディルに貸してもらった魔法基礎の教本を読んだり、基本魔法を練習したりして時間を過ごした。
「キュッ」
魔法練習をしているとフォールが後ろで鳴いた。
「もうお昼だね、ご飯にしよっか」
集中するあまり時間はすでに昼近くになっていた。
この世界では一日が三十時間だ。昼は十三時頃に食べるようにしている。
今は十二時半。
「ディルもおなかすいてると思うから早く作らないと」
昼はトマトスープとベーコン、それからポテトサラダを作ることにした。
「私の料理スキルも上達してきたかな」
魔導書に料理スキルが記載されているわけではないがそんなことを考えながら鼻歌交じりに調理を進めた。
料理が完成したタイミングでディルが自室から出てきた。
「どこかへお出かけですか?」
外出用の服に着替えていたディルに気になって質問した。
「この間のオークの件が気になってな、情報収集に行ってくる」
「お昼は食べていきますか?」
「あぁ、もちろん」
ディルはおいしそうに昼食をほおばった。
ディルが席を立ち、昼食の後片付けをしていると。
「シロネ。行ってくる」
「はい、行ってらっしゃい」
ディルを見送り、片づけに戻った。
午後は魔導書について少し調べてみることにした。
私の魔導書、カーストの書は前例がほとんどなく、あいまいかつ、噂程度の情報しかない。
この世界の文字も勉強を進めているので魔導書に記載されている情報を読み直すことにした。
「私のレベルは...6に上がってる!」
レベルは生きていくうえで経験したことが直接経験値となり上がっていく。
カーストの書は成長速度が上がる効果があるとディルから聞いた。
人間は勇者みたいな特別な存在でもない限り、一生かけてもレベル100ほどが限界だ。
「もうこんなに...」
この世界に来てまだ数日しかたっていないのにレベルが6も上がっているのはとんでもない成長速度だと思う。
ステータスもこの世界に来たときよりも上昇している。
「最初は体力値45だったのに」
魔導書には体力値654と記載されていた。
それがどれ位の成長なのかはわからないけど確実に強くなっているのは確かだった。
ちなみに魔力量は398。
ディルが使っていた「ディープ・ディカバリー」を使うにはまだ魔力が足りない。
魔導書に目を通しているとあることに気が付いた。
「もう二十ページもいってる」
カーストの書にはある特性がある。
五百ページある魔導書の最後のページまで情報が記載されると。
その瞬間、魔導書の契約者は死に至るという特性だ。
「まだだいぶあるけど、何でもかんでも書かれるからすぐいっぱいになっちゃいそう」
魔導書にはステータス以外にも今までに使った魔法や調合した魔法薬のレシピなど、様々な情報が記載されていく。
特にカーストの書はほかの四種類の魔導書の特性もあわせもつことからさらに多くの情報が記載される。
五百ページ目にたどり着くのも時間の問題かもしれないと思った。
「案外早く死んじゃうかも...」
別にしに死んでも生きてもどちらでもいい。そんな熱のこもらない冷たい目で魔導書を眺めていると。
ドーン!
大きな音がした。
「なに!」
急いで家を出て音がしたほうを確認すると百メートルほど先に私と同い年くらいの少年がいた。
「魔王はいるか!」
まだこちらには気づいていない、だけど少しづつこちらに向かってきている。
少年は自分の位置が目立つよう光の魔法を使い照明を作っていた。
「どうしよう、ディルがいないから一人で何とかしないと。フォールついてきて」
「キュッ!」
そういって私は少年の前に出た。
「魔王に何か用」
「貴様、何者だ。魔族か?」
「魔王は今外出中。それで、何の用」
少年は怒っていた。
「よくも村のためにオーク討伐依頼を受けた兵士たちを皆殺しにしたな!」
「何のこと」
どうやらこの少年もビィーンに騙されているらしい。
「とぼけても無駄だ。女だからって容赦はしない!」
少年は剣を抜き走りこんできた。
「仕方ない」
「水の巫女・風の妖精・真の眠りで・包み込め」
「スリープ」
剣を落とし少年はその場で倒れこんだ。
このまま放置するわけにもいかないし...。
「連れて帰るしかないか...。少年捕獲。」
はぁ、とため息をついて少年を担ぎ上げた。
「ディルに怒られるかな...」
不安を感じながら家に向かって歩き出した。
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