第五話 契約魔神と竜

 この世界に転生してから数日が過ぎた。

 魔王後継者として修業するため、ディルとともに暮らしている。

 最初は慣れないことが多かったけど、今はだいぶ慣れてきた。


 「ふぅ...ん」


 魔王になるための修業は意外とのんびりだ。

 ディルは朝が弱いので九時ごろまでゆっくり寝ている。

 私は八時頃に目を覚ます。


 「体が...おもい」


 私は朝食を作るため、ディルに魔法で作ってもらった自身の部屋からでた。


 「ふっふふ~ん」


 鼻歌交じりに階段を降り、一階のキッチンに向かう。


 「今日は何にしよっかな」


 この世界に来て私はいろいろなことに驚かされた。

 まずは一日の時間が元居た世界より長い。

 一日がだいたい三十時間くらい。

 時計がない代わりに魔石時計で時間を見る。

 時間帯によって色が変わる石だ。

 今でも体内時計が少しずれているので苦労している。


 「決定、鶏肉とスープで洋風な朝食にしよ!」


 一番驚いたのはディルの料理だ。

 私が初めて朝食当番をした日に分かった。

 この世界の味が合わないのではなく、ディルの料理技術が絶望的だったのだ。


 「おはよう」

 「おはようございます」


 噂をすれば本人登場である。

 この魔王、千年近くも生きているらしいが、食に対する欲がないらしく。適当におなかに詰め込んで生きてきたらしい。

 結果、料理は当番制ではなく、私がすべて作ることになった。

 もともと母の手伝いをよくしていたので慣れた手つきで調理を進める。


 「わるいな」

 「大丈夫です。ディルは席で待っていてください」

 「あぁ」


 ディルはしばらく席で読書をした後、思い出したように立ち上がった。


 「どうかしましたか?」

 「契約魔人を使いに出しているんだが、そういえば今日あたり帰ってくるはずなんだ」

 「契約魔神?」


 初めて聞いたワードだった。


 「そんなのがいたんですか?」

 「まぁ、喋らないお手伝いさんみたいな感じだ。魔神は見ようとしないと見えないものだ。シロネも探してくれ」

 「はい」


 調理道具を置き、契約魔獣とやらをさがした。


 (意識して探す...。でてこーい、でてこーい)


 魔力を目に集中させ、意識して探す。

 家の中を見渡すとソファーの下から何かがこちらを除いているのが見えた。


 「もしかしてこれですか?」

 「こんなところにいたのか、こいつ、家に我以外がいたからびっくりして隠れてたんだな」


 ソファーの下からふらっと出てきた魔神は火の玉のような見た目だった。


 「よく帰ってくれた、お帰りレーン」

 「お使いって何をしに行ってたんですか?」

 「契約魔神とはこの世界の習わしでは先人が後を継ぐ者に代々受け継ぐものなのだ。我は師匠から受け継いだ。こいつには受け継ぎのためにために必要な魔石を取りに行ってもらっていた」


 (ディルの師匠...)


 興味をひかれたが思考を戻した。


 「それじゃあ、レーン?は私の契約魔神になるんですか?」

 「そういうことだ。まぁ、喋らないが便利な奴だ、大切にしてやってくれ」


 そういうと魔神がとってきた魔法石をディルが魔法で作った腕輪にはめ込んだ。

 そして、魔導書の契約の時と似た要領で魔法石に私の血と今回は魔神の魔力を刷り込んだ。


 「こいつに名前を付けてやれ。それで解約成立だ。お前の相棒になるやつだからな、いい名前を付けてやるんだぞ」


 火の玉を凝視し、必死に悩んだ。

 たっぷり一分ほど沈黙した後。


「それじゃあ、フォール」


 命名した直後、魔法石が赤色に光りこの世界の言葉で生涯永劫の契約と腕輪に刻まれた。

 そして、さっきまで火の玉だったフォールは竜の子どもに姿を変えたのだ。


 「姿が...」

 「契約者が変わるたびに姿形が変わる。それが魔神だ、だが竜種になるとは、驚いた」

 「キュッ」


 フォールの鳴き声で心臓が飛び出しそうなほど驚いた。


 「こいつ、喋るのか。知性の高い魔神は喋ると聞いたことはあるがまさか実在していたとは!」

 「かわいい...」

 「契約魔神は契約者が成長するにつれ共に成長する。それが相棒ということだ」


 私の相棒、ずっと一人だった私にできた二・人・目・の...。


 (うれしい)


 そして私とディルの生活にフォールが加わった。

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