【第6生】秘密

真守求夢まもりもとむ……かなり強いサイコキネシスが使える超能力者ね」

 隣のベッドから顔を出した恋華と状況を確認する。

 学生でありながら、超能力特殊部隊と呼ばれる組織に所属している超能力者。

 超能力を持つことが発覚した者は国の訓練施設に集められ、そこで訓練を積んで超能力特殊部隊に入隊するのだ。通常は警察に近いけれど、有事の際は軍としての役割が強くなり、人々を守るために超能力を使う。

 いわゆる、将来を約束されたエリート中のエリートで、一般市民の憧れの的だ。

 求夢の超能力がサイコメトリーなどの精神感応系でなかったことが唯一の救いだった。もしも、求夢に超能力者だとバレたら一瞬で取り押さえられていたことだろう。

「うっかり口を滑らせないように気をつけてね」

「分かってます……俺としては、恋華先輩の方が心配なんですが」

「なんで?」

 引寄は正確にはまだ超能力に目覚めていない状態だ。前世を見ることも超能力の一種だと言われてしまえばそれまでだが、現時点では目に見えるような超能力はない。

 だが、恋華の超能力はパイロキネシス。炎を生み出し、操ることのできる典型的な物理系の超能力だ。

 独自に超能力を制御する訓練はしているだろうが、もしも咄嗟に超能力を使ってしまったら一瞬でバレてしまう。

 そんなことにも気付いていないというように恋華が首を傾げるので、引寄は半ば詰め寄るように訴えた。

「先輩は力を使った時に誤魔化しようが無いでしょう! 超能力が使えるとバレたら……」

 どんな扱いを受けるか分からない……喉から出かかった言葉を引寄は飲み込んだ。

 歴史の教科書で見たような、十字架に吊るされて焼かれる超能力者狩りの光景を思い浮かべて、その自分の発想に恐怖を感じたからだった。

 まさか、そんな前時代的な処罰などあるはずもない。引寄はバカなことを考えてしまったと首を振った。

「そんなに心配しなくても滅多なことがない限り使わないわよ」

「それなら、良いんですけど……」

 真守に関する話題は沈黙に遮られた。

 そろそろ保健室の先生が戻ってきてもおかしくない時間で、これ以上のことを話すのは翌日以降に持ち越されることになった。

 恋華は放課後の部活棟三階のPCR部の部室を指定する。表向きは写真記録部を英語にして略したものだそうだが、実際はさっきも聞いた超能力研究部の略だそうだ。

「超能力研究部って何をするところかだけ聞いてもいいですか?」

 引寄の問いかけに恋華はニヤリと笑い、人差し指を唇に押し当てた。その悪戯っぽい笑みは普通の高校生のようにしか見えない。

「秘密! 来てからのお楽しみだからね!」

 恋華は保健室の先生が戻って来ない内にと、慌ただしく保健室を出て行った。

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