第6話 点滅
再び沈黙が走り出した。それと同時に天井の電気の光がチカチカと点滅しだした。そのチカチカという効果音が文字通り、僕と彼らの耳に届いているような気がした。今、僕を含め、おじさんおばさん優子が光と闇の間を行ったり来たりしている。
そんなことをも気にせず、おばさんが遂に裕子の主張に返答をする。まるで、おばさんと優子の間に日本とアメリカくらいの時間のズレがあるくらいの、遅れた返答だった。
「優子、、ごめんね、本当にごめんね、、私たちはずっと、学費のために、優子が学校で楽しい生活をすることを願って、ずっと働いてた。優子のために働いているつもりだった、、でも私たち、間違ってたね、、。学費を払えば優子は幸せになると思ってた、、お金を稼げば、優子の幸せは増えるものだと思ってた、、全然優子のことをわかってやれなかったね、、」
だんだんおばさんの涙袋が大きくなっていく。優子の両肩に手をのせ、それから優しく抱きしめた。
「優子、そんな辛い思いしてたのに、俺たちはずっと優子の思いから逃げてたかもしれないな。本当にごめん。そして、言ってくれてありがとうな」
おじさんも少しだけ涙を目に浮かべ、抱きしめられている優子の顔を見ながら言った。優子もおばさんの肩にのった顔を動きづらそうにしながら、縦に振った。
これで優子の問題が解決したわけじゃない。この状況で、優子に対するいじめが無くなったわけではない。それでも彼女は全ての問題が解決されたかのような透き通った青空のような表情を魅せていた。僕はそれを見て、彼女の一番望んでいるものは、平穏な学校生活ではなかったのだと確信した。
突然、天井の電気が点滅しなくなり、浮き沈みのない白い光がこの狭い空間を照らし出した。おじさん、おばさん、そして優子の距離感は日本とアメリカくらいのものから、この狭い空間にすっぽり収まるくらいに縮まった。
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