エピローグ

「わかったよ、みさと――」

「あなた、どうかしましたか?」

 気が付けば、私はまた、寝入っていたようだ。目を覚ました向こうで、やさしい表情で私を見つめる妻の姿があった。

「ちょうど、ご飯ができましたよ。ごめんなさい。ちょうど買い忘れていたものがあって。」

「ああ、いや。早く帰ると伝えなかった私も悪い」

「そうそう、あなた。寝室にあった額装の写真。びっくりしましたよ。あなたがあんなものを買ってくるなんて。よほど気に入ったんですね」

「ああ、まあ。なんだか懐かしい気がしてな。ちょうど、そんな夢を見ていた」

「あらあら。幸せそうな顔をしてらっしゃいましたよ。子供たちが生まれたときでも思い出していたのかしら」

「まあ、そんな感じだ」

「それと、その写真、壁に掛けてしまったけど、いいかしら」

「ああ、問題ない」

 そうだ、これからは妻と二人で、生きていこう。彼女とふたり、手を取り合って。

 額装の写真は、これからの私たちの生活を見守るように、私たちの間をそっと、彩っていた。




(終わり)

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丘の向こうで 河原四郎 @kappa04

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