2. 愛猫

 カラン、人の出入りを知らせるドアのベルが鳴った。


「イラッシャイマ……」

「おはようございます」


 なんだ、サガシヤの人間か。そう言いたいのが丸分かりな態度で、従業員の女性は事務作業に戻ってしまった。


 仕事を辞めた私はサガシヤという小さな事務所で働くこととなった。運命的ではあるが、断言し難い出会いによって、私は清掃員兼補佐要員として洋服屋の二階に通っている。薄暗い廊下の奥のドアをノックして私は中に入った。


「おはようございます」


 部屋の中は相変わらず小汚い。清掃員として、必要最低限の掃除はしているつもりだ。それなのに毎朝ここに来ると同じような光景が広がっている。


「……また、ため息」


 来客用のソファーに座っていた従業員が呟いた。こんなにすぐに散らかされてしまうのではため息も出て当然だろう。


「おはようございます」


 わざとらしく私は少し声を張った。それにびくつきながら青年は蚊の鳴くような声でおはようございますと言った。

 部屋が毎晩散らかされる原因の一つは彼だろう。ぼさぼさの髪に、だらしのない服装。彼がこの事務所から出ている姿は目にしたことがない。つまり彼はここに住んでいるのだ。佐賀さんに言わせれば彼は事務所警備員ニートだそう。


「少しくらい散らかさない努力をしてください」

「散らかしてるのは社長です……」


 原因のもう一つは社長、佐賀さんもここに住んでいるということだ。彼は使ったものを元に戻そうとしない。使ったら片付けましょうと子供の頃に習わなかったのだろうか。


「その社長は今、何してるのですか」


 仮にも先輩にあたるので、私は多少の敬意を示す。


「奥の部屋で寝ています……」


 彼はそう言って社長用の立派な椅子に腰かけてパソコンを起動させた。


「起こしてきてもらえませんか」


 彼に呼び掛けても返事はない。パソコンに夢中になって聞こえていないんだろう。部屋にはタイピングの音だけがリズムを乱さず響いていた。


「はぁ……」


 やっぱり再就職は考え直すべきだろうか。奥の部屋のドアを強めにノックする。


「佐賀さん、起きてください」


 返事はない。仕方なく私はドアを開けた。目の前には変態が転がっていた。


「僕の寝込みを見に来るなんて、やっぱり痴女だよね」

「誰が好きであんたを起こすんですか……!」


 私はこの変態に会わなければならない朝が憂鬱で仕方ない。お返しに私は変態の腹を殴る。


「社長」


 いつの間にか背後に警備員が立っていた。


「依頼です」

「最近はネットからの依頼も増えてきたねえ」


 変態は欠伸をしながら私の横を通って社長の机のパソコンを覗いた。


「いなくなった猫探しか……」

 

 私も一緒にパソコンを覗く。アイコンが鳥のSNSの個人チャットにそれは送られてきていた。


『大切な家族が一昨日からいなくなってしまいました。見つけてはいただけないでしょうか』


 メッセージとともに黒猫の写真が送られてきていた。黄色く丸い瞳がこちらを見つめている。かわいらしいがあまり特徴らしいものはなさそうだ。


「この人にここに来るようにメッセージを送って」

「この猫を探すのは難しくないですか?」


 警備員はもうメッセージを送り終えていた。


「大事なお客様だよ」


 佐賀さんはそれ以上何も言わなかった。見つからないのなら、出来ないのならいっそ何の期待もさせないほうがいいのでは。私はパソコンの画面をもう一度見た。


「サガシヤのアカウントですか……」


 固定された呟きはここの地図だった。


「依頼の方法もデジタル化していかないといけないので……」


 彼はそう言って様々な情報のチェックを始めた。動体視力のテストでも受けている気分になる。私には彼が何をしているのかはよくわからなかった。まあいい、気を取り直して私は自分の仕事をしよう。変態を奥の部屋から追い出して、私は私の武器を握る。モップに箒とちりとり。水の入ったバケツと雑巾。


「様になってるねえ」


 茶化すように変態が声をかけてくる。どうやらいつの間にか着替えたようで、カーキ色の和服を身にまとっていた。


「どうしていつも出しっぱなしにするんですかね! 使ったものは元の場所に戻すのは幼稚園児でも知っていますよ!」


 そう言うと佐賀さんは珍しく申し訳なさそうにごめんねと言った。


「少し出かけてくるよ、留守をよろしくね」


 佐賀さんが出て行ったのと同時に鳴り響いていたタイピングの音は止まった。


「あの」


 声をかけてみる。びくっと彼は動いた。その後にパソコンのモニターから顔をのぞかせて不安そうな表情を見せる。


「そんなにおびえなくても何もしないですよ……」


 まるで自分が極悪人にでもなったみたいだ。


「……何ですか」


 ぼそりとした彼の重たい声は二人の間に落っこちた。とても会話のキャッチボールができる気がしない。


「あなたの名前を聞いてなかったと思って」


 佐賀さんが彼を名前で呼んでいるところは見たことない。いや、そもそも二人は会話することが多くない。


「必要ですか」


 いつもよりもワンテンポ反応が速い。


「名前は、業務に必要ですか」


 パソコンに隠れた警備員の表情は分からない。少しだけ見える頭頂部が俯いていることを示していた。


「必要ではないかもしれない……です」


 私は汚れた雑巾をバケツの水で洗い始める。確かに、掃除をするのに彼の名前を知る必要はない。


「ですが、私はあなたのことを知って、親しくなりたいと思いますよ」


 今のところはまだ転職するつもりはないので、私はそう付け加える。転職したほうがいいと本能は言っている気がするが、私は少しだけサガシヤというものに興味を持ってしまったのだ。なんてことを考えてみても警備員は特に何も言わなかった。よほど言いたくないらしい。雑巾をきゅっと絞って窓のほうに向かった。


「じゃああなたはいつ佐賀さんと出会ったのですか?」


 いつ、どうやって。あなたも出会いを視られたのか。あの人のその話は本当なのか。そんなことがあり得るのか。


「出会ったのは三年位前です」


 今度は普通に返事を返してくれた。垂れた長い前髪の隙間から彼の綺麗な瞳が見えた。


「ずっと閉じ籠っていた僕を社長は見つけてくれました」


 懐かしそうに話す声色はとても優しかった。私は窓を拭く。ガラスの向こうには広々とした公園が広がっている。私はその公園をなぞった。


「生きていたくないのに、死ぬ勇気もなくて。社長はそんな僕に生きる理由をくれたんです」


 それが、事務所警備員。ネットから依頼を得るための人員として、彼はここに来たということか。


「あなたは……どうして外に出たくないんですか?」


 聞いてもいいものなのだろうかと思いながら、おそるおそる口に出した。死にたくないけれど死にたい、それは少しわかる気がする。選んだものが違ったらこうなっていたかもしれないのだ。今度は乾いた雑巾を手に持って窓の水気をとった。


「あなたに……言いたくないです」

「そう……ごめんなさい」


 出会ったばかりの他人にこんなにずけずけ聞かれたいことじゃないだろう。配慮が足りていなかった。配慮が足りていなかったからあんなことになったのに、学習能力が欠如しているらしい。


「ただいまー」


 気まずい空気が漂い始めた頃に佐賀さんは事務所に戻ってきた。


「はいこれ、肉まん」

「ありがとう……ございます」


 彼は笑顔でコンビニの袋から中華まんを取り出した。なんで急にこんなものを買ってきたのか、そう思いながらも私は受けとった。アツアツかと思ったらそうでもない。すぐに食べれるように火傷しない良心的な温度で管理されているのか。ふと、中華まんを包む紙に書かれた文字を見た。コンビニの名前が控えめに書いてある。それはこの隣の建物の一階にあるコンビニだ。そこで買ったのだとしたら戻ってくるまで時間がかかりすぎている。はっとして佐賀さんを見ると目が合った。そして気づいたことに気づいたのか、彼は私にウインクして見せた。


「あの……」


 声とともに事務所のドアが開かれた。背の低い幼そうな少年が顔を覗かせた。


「いらっしゃい、お待ちしていました」


 警備員はパソコンと彼を交互に見た。


「……イルさん、ですか?」


 イル、先ほど猫探しの依頼をしてきたアカウントのユーザー名だ。


「うん……イルは猫の名前なの」


 少年は目が腫れているように見えた。いなくなってしまった猫のことを思ってずっと泣いていたのだろうか。


「どうぞお座りください」


 佐賀さんは少年をソファーに座らせる。この少年が依頼をしてきた人なのだろうか。依頼の文面からしてももう少し大人だと思ったのに。それに、今時はこんなに幼い子供もSNSをする時代なのだろうか。


「お名前は?」

「そうた」


 パソコンから離れた警備員はこの少年、そうたくんに熱いお茶以外に出せるものがないかを探してる。


「イルのアカウントは君の?」

「違う、それはお姉ちゃんの。お姉ちゃんは忙しいから、おれが来た」


 こんな怪しい事務所に一人で行かせたのだろうか。


「わかった、じゃあ今からお姉さんに会いに行こうか」

「今からですか?」


 思わず聞き返してしまった。


「イルを探すためにはまずイルを知らないとね。出かけるよ、あすみさん」


 佐賀さんは上着を羽織った。


「留守をよろしくね」


 水の入ったグラスを持っていた警備員はこくりと頷いた。そうたくんの背中に手を添えて二人は事務所を出ていく。


「ちょっと待っ……これ、片しといてください!」


 私は握っていた雑巾をバケツに戻し、中華まんは近くのテーブルに置いた。物が多すぎて戻ってきたらゴミと間違えてしまいそうだ。


「待って下さいよ!」


 コートを手に取って事務所を飛び出した。行ってらっしゃい、そんな小さな声が聞こえた気がした。






「ここがおれの家」


 事務所の最寄り駅からから電車で二回乗り換え、一時間ほどで目的地に到着した。この子は乗り換えアプリも見ずに電車の乗り換えをして見せた。一人で電車に乗るのに慣れているのだろうか。

 少年が指した先にはごく一般的な一軒家があった。白っぽい外壁に灰色の屋根、小さな庭がついていて芝生は所々剥げている。庭の手入れはあまりしていないらしい。


「お姉さんを呼んできてくれる?」


 佐賀さんは少年にそう言った。少年は右のポケットから鍵を取り出して、背伸びをしながら鍵穴に刺した。


「なんで忙しいお姉さんが自宅にいるってわかるんですか?」

「簡単だよ」


 佐賀さんは得意げにスマホの画面を見せてきた。それは受信メールのようで「投稿時間は不定期、投稿数多い、深夜にも投稿は多い」と書かれていた。要点だけまとめて送られてきたようだ。送り主を見ると「ネスティー」と書かれていた。


「ネスティーって誰ですか?」

事務所うちを根城にしている人は一人しかいないでしょ」


 ああ、警備員か。私たちが事務所を出てからイルさんの投稿を調べ上げたのか。


「彼はこれでもうちのれっきとした従業員だからね」


 佐賀さんは鼻が高そうだ。かちゃん、玄関が開いてそうたくんが顔を見せた。


「入って」

「君が入社してからの初依頼だね」


 前回のは入社前だと認めるのか。


「お邪魔します」


 家の中はかなり暗かった。玄関には華美なヒールが散乱していて、隅には埃がたまっている。


「……いらっしゃい」


 リビングとみられる広い部屋には高校生くらいの女性が座っていた。カップ麺、コンビニ弁当、レトルト食品、冷凍食品、あちこちにゴミが広がっている。何かが腐ったような臭いが鼻を突いた。思わず手で塞いでしまいそうになる。できることなら今すぐにここから立ち去りたい。


「お金の話?」


 彼女はこちらに背を向けたままスマホをいじっている。隣の和室との戸は開かれていて段ボールがいくつか置いてあった。あれらも全てゴミなのだろうか。


「イルがいないとそうたの相手する奴がいなくなるから困るんだよね」


 そうたくんは私たちから離れて遠回りして台所へ行き、蛇口を捻ってコップに水を入れた。


「見ての通り、親いないから割引きしてよ。お金ないの」


 そのコップすら最後に洗ったのはいつなのだろうと心配になる。少年はそのまま飲み干してコップを適当な場所に置いた。


「学校は?」


 彼女もまだ大人とは言い難い高校生くらいに見える。


「見てわかんない? 働いてるのよ」


 よく見ると彼女はSNSに投稿する文章を考えているようだった。インフルエンサーとして働いているという意味か。私には全く働いているように見えないが。


「そうたくんだよ」


 いつもは適当な佐賀さんの声が少し尖って聞こえた。


「行きたきゃ勝手に行くわよ! 私、あの子の親じゃないの!」


 音をたてて勢いよく立ち上がる。手から滑り落ちたスマホはたくさん貼られたプリクラを見せた。彼女はよほど腹を立てたのか佐賀さんを見上げながら睨む。


「仕事しないなら帰れ」


 二人はしばらく目を合わせていた。


「そんな怖い顔しないで下さいよ」


 佐賀さんはいつもみたいに優しく笑うとなるべく早く見つけますね、と言って外に出た。


「怖いお姉さんでしたね……そうたくんが心配……」

「彼女にも思うところはあるんだろうよ」

「どういう意味ですか?」


 彼女はひどい姉じゃないか。両親がいなくなってしまったら、そうたくんを守るのは彼女の義務だ。そもそも姉弟なら普通親を亡くしても一緒にいたいと思うものだろう。


「君はこれから立派なサガシヤになってくれ」


 佐賀さんはそう言って笑った。私の思考は間違っている、そう言いたいらしい。


「私は清掃員なので探しは担当外です」

「補佐も君の仕事だよ」


 オレンジ色に染まった空を鳥の群れが横切った。あんなに汚い家で猫を飼えるものなのだろうか。


「あの家で猫を飼えると思いますか?」

「あんなに物があったら無理だろうね」


 続きは事務所に戻ってから話そうか、佐賀さんは来た道を戻っていく。

 大丈夫だろうか。私は漠然と嫌な予感を察知した。あの家で、子供二人が生活することはあっていいことなのだろうか。警察に言うべきなのでは。けれど私たちへの依頼はただ猫を探すことだ。余計なことをしていいものなのだろうか。子供を保護するのは大人の役目では?


「帰りますよー」


 私の悶々とした思考を取り払うように佐賀さんの声が聞こえた。なぜだろう、この人の言うことを信じられるのは。


「あの二人が心配なんですよ」


 小走りで彼に追いついて隣を歩く。


「そうだね。心配だね」


 佐賀さんにも思うところはあるのだろうか。それともあの二人の未来でも視たのだろうか。




「おかえりなさい」


 警備員は社長の椅子に腰掛けてパソコンを操作していた。


「言われたことは調べておきました……」


 カタカタとキーボードを叩き続けながら話す。よく同時にできるものだ。電子機器はそれほど得意でないからどうやったらそんなことができるのか不思議でならない。


「助かるよ」


 佐賀さんは羽織っていた上着をハンガーにかける。


「社長の予想通りだと思います。確実に結果が出るまでもう少し時間がかかりそうですが」


 帰りの電車でずっとネスティーにメールを送っていたのはそういうことか。


「何を調べていたんですか?」

「あの子たちさ……」

「社長!」

 

 言いかけた佐賀さんの言葉を警備員は遮った。今まで聞いた中で一番大きな声で思わず体がびくついてしまった。


「どうした?」


 ネスティーはパソコンの画面を見るように促した。


「東京都で火事……? この動画あの子たちの家のすぐ近く!」


 私は佐賀さんを見る。さすがに火事となっては穏やかにはいられない。彼は脱いだばかりの上着を手に取って、荒々しく事務所を出て行った。ハンガーは床に落とされていた。


「本当にあの子たちの家か、調べてまたメールしてください!」

「は、はい」


 私も急いで後を追いかける。帰ってきたと思ったらまた飛び出していく様子を一階の従業員さんは不思議そうに見ていた。


「あっ……!」


 外に出ると、佐賀さんは向かいの駐車場に止めていた白い車に乗り込もうとしていたところだった。


「待って、私も行きます!」


 車が動き出す前に私も助手席に乗り込む。


「渡しとく」


 佐賀さんは乱雑にスマホを私に渡してきた。あの家の子供たちが無事であることを願ってきゅっとスマホを握った。


「飛ばすから」


 声色に余裕のなさが見えた。宣言通り佐賀さんは少し雑な運転で進んでいく。車が動き出して少ししてからスマホが鳴った。メールではなく電話だった。


「もしもし!」

「……火事は五分前に近隣住民の投稿によって発覚。僕らが火事に気付いたのはこの投稿のすぐ後です」


 私が電話に出たことに少し驚いたようにも感じたが、彼はそのまま話を続けた。スピーカーにして、佐賀さんに言われてボタンを押す。私もかなり焦っているのだろう。いつの間にかものすごく手が冷たくなっている。


「消火は?」

「もう消防車は到着したらしいです。鎮火したかは不明」

「火元の家は?」


 最新の情報を必死に調べている音が聞こえてくる。


「まだ何とも……動画を元に推測するとほぼドンピシャ。誤差は前後左右に二、三軒分くらいだと思います」

「目撃者は、その動画を撮影した人の身元は。放火の可能性は」

「佐賀さん?」


 彼の表情は険しかった。まるであの二人の心配の他に何かあるみたいな。


「……僕は警察ではないので」


 何でもできるわけではない。ハンドルを握る手が震えている。


「社長が……望むなら……やります」

「……いや……すまない」


 佐賀さんは黙ってしまった。やりますって何を?警察みたいなことを調べるということなのか。信号が青に変わり、車は発進した。


「またなにか分かったら連絡します」

「お願いします……」






 車内は重い空気で満ちていた。二人の心配と、佐賀さんの動揺と、警備員の発言と。いろんなことが頭の中を回る。

 いや、今は二人の無事を祈るだけだ。頭を振って余計な思考を払い落とす。電車を使うと遠回りになる道も車を使うことでかなり時間が短縮される。それでも、車を走らせている時間がとても長く感じた。


「煙が……!」


 そこには黒煙が立ち昇っていた。かなり激しい火事なのかもしれない。偶然通りかかったであろう歩行者たちが立ち止まって黒い柱を見上げている。緊急車両のサイレンが鳴り響いて、車の立ち入りの規制線が見えた。佐賀さんはその手前で車を降りて、少しも躊躇わずに規制線を潜り抜けた。


「入っていいんですか!」


 私は一瞬悩んで、結局潜り抜けた。混乱している現場。消火の指示が、怒号が飛び交っていた。そして私は先ほど訪ねた家が轟轟と燃えているのを見た。絶望だ。何も言葉が出ない。見上げることしかできない。


「危険なので下がってください!」


 あの子たちは。まだ幼い、子どもたちは、どこ。まさか、あの中に?


「ご家族の方ですか?」


 別の消防隊が私たちに近づいてそう言った。


「保護者の代理のようなものです」


 佐賀さんは冷静だった。


「子供が! この家には子供が二人いるはずなんです!」


 消防士の腕をつかんで私は叫んでいた。


「二人の子供は無事です。偶然外に出ていたようで」


 消防隊は私たちを救急車の方に連れて行く。煤で体中を黒くした少年少女が私たちに気づいた。


「あ……っ」


 二人は堰を切るように泣き出した。どれだけ心細かっただろう。私たちは駆け寄って抱き合った。そして声をあげて泣いた。


「二人は私が引き取ります」


 佐賀さんは私の肩を優しく叩いた。


「お二人はご親戚ですか?」


 消防隊の人はそう聞いた。親戚ではないが、家の様子を見る限り今のこの子たちが頼れるのは私たちだけだろう。


「……特殊警察の麻野千宜に連絡をしてください。二人は彼の下で保護します」

「失礼しました! 直ちに確認させていただきます!」


 特殊警察? 佐賀さんはそんな人と繋がりがあったのか。兎にも角にも、私は今この子たちと離れたくない。足早に彼は去っていく。


「……帰るよ、三人とも。さあ立って」

「帰るって私はあんたたちに……」


 少女は佐賀さんと目を合わせることなく口を開いた。震えた声、炎が俯いた彼女を照らし出す。


「何言ってるの、帰るのよ」


 震える声で私は少女を見た。弟と比べるとひどく煤だらけで、腕にはいくつもの擦り傷、切り傷があった。それが、彼女がどういう人かを物語っていた。この子たちと一緒に帰らなければ。瞳いっぱいに涙をためて、私は二人の腕を引く。


 帰りの車の中で警備員からいくつもの着信があったことに気づいた。折り返しの連絡がなかったことで彼は心配したと少し不貞腐れたようだったが、彼女たちが無事であることに安堵していた。

 そして、そうたくんは事務所に、お姉さんは私の家に泊まることになった。あんなことがあった後で姉弟を離れ離れにするのは心苦しい。そう思いながらも彼女たちはそれを承諾してくれた。






「上がって」


 私は佐賀さんの車から降りてようやく家に帰ってこられた。朝、この部屋を出たのがはるか昔に感じるくらい、長い一日だった。


「まずはお風呂ね、すぐ沸かすから待っていて」


 バタバタと部屋を歩き回って、出しっぱなしのものを片付ける。彼女はその間玄関から動こうとしなかった。その瞳はどこかぼんやりしていて、現実を見ているように感じない。無理もないだろう。自宅が燃えて、もしかしたら自分たちも一緒に燃えてしまっていたかも知れないんだから。私は彼女に近づいて、冷たくなった手を包んだ。


「お風呂でゆっくりしておいで」


 肩に力が入っている彼女に早く安心してもらいたかった。彼女は少しだけ握り返して頷いた。

 何か暖かいものを食べさせてあげよう。私は慣れた手つきで冷蔵庫から野菜を取り出す。近所の直売で安く買えた白菜がある、二人でお鍋でも囲むことにしよう。立派な人参もたくさん入れよう。相手は女の子といえども育ち盛りだ。火は怖がるかもしれない。電気のコンロで調理を進める。


「あの……」


 十五分ほどして彼女はお風呂から戻ってきた。ゆっくりしていいのに、他人の家では落ち着かないのだろうか。


「こっちに来て」


 私は一人掛けのソファーに彼女を誘導する。ドライヤーのコンセントを入れてソファーの後ろに回った。


「ド、ドライヤーくらい自分でできます……」

「いいから、やらせてほしいの」


 遠慮がちの彼女の細い髪を手で梳いていく。ドライヤーの音が二人の沈黙をかき消した。彼女は膝の上で拳を握っていた。こんなに幼いのに。まだ子どもなのに。


「……いっぱい食べて、いっぱい眠って」


 そして早く普通に生活できるようになって欲しい。ドライヤーのスイッチを切って背後から彼女を抱きしめた。


「こんなに……肩の力を入れる必要なんでないのに……」


 彼女の拳の上に涙が落ちた。


「あなたをこんなに苦しめているものは何?」


 私の声もきっと震えていた。


「私はあなたたちを守りたい……」


 彼女は嗚咽を漏らした。小さな肩を震わせて、その両手で顔を覆って俯いた。


「ご飯にしようか」


 私はできるだけ明るい声で言った。

 そのまま私たちは一つのお鍋を囲んで、布団を並べて眠りについた。






「おはようございます」


 そうたくんの姉、ゆいちゃんを連れて私は朝早くから事務所に向かった。期待していたわけではないが、いつも通り事務所は散らかっている。事務所の応接間でそうたくんと警備員が眠っている。机の上にはたくさんの空き缶があった。オレンジ、リンゴなどのジュースに紛れてチューハイがある。


「よく寝てる」


 ゆいちゃんはそうたくんの寝顔を愛おしそうに見ていた。弟のことをなんとも思っていないなんて絶対にありえない。


「最近は夜、目が覚めることも多かったから……」


 彼女なりに心配していたのだろう。やっぱり彼女たちは家族なのだ。


「おや、音がすると思えば」


 隣の部屋から佐賀さんが現れる。大きな欠伸をして社長の椅子に座った。


「君の依頼だけど」


 佐賀さんはそう言って机の上の紙をひらひらさせた。


猫はどこにいるのかわかったよ」

「どこに!」


 そっと唇に当てられた長い人差し指。思わず大声を出した少女に、佐賀さんは静かにするようジェスチャーした。


「君のSNSを漁らせてもらったよ。投稿していた文章、写真、動画。ご丁寧に位置情報が残っているものも多かった。今どきはこんな風に色々分かってしまうなんて怖いねぇ」


 パラリパラリと一枚ずつ紙を捲っていく。


「ある日、君の投稿から猫の姿が消えた」


 つまりそれが、この依頼の始まりということ。


「けれど変化したのはそれだけじゃない。君の自宅が変わっている。テーブルの色も、陽の射し方も変わった。『家を出た』という意味では、いなくなったのは猫じゃなくて君たちだろう?」


 ゆいちゃんがそれに反応して佐賀さんから顔を逸らした。


「あともう一つ、君には嘘がある」


 追い詰めるような言い方。当事者でない私でさえもこの人に恐れを抱いてしまうような、そんな空気。


「本当の依頼は違うね」


 佐賀さんは紙をびりびりに破いた。


「待って! それは……」

「君たちがいなくなった理由は何かなぁ」


 佐賀さんの目は少しも優しくなかった。きっとこの人は全部知っている。それでいて、彼女にこんな態度をとっている。


「大人をあまり舐めるな」


 ただの破片と化してしまった紙がばらまかれる。彼女は悔しそうに唇を噛んだ。最初の佐賀さんへの態度の仕返しでもしているみたい。


「義母を……居場所を……」


 彼女は言葉に詰まりながら膝をついた。


「教えてください……お願いします……」


 声を絞り出しながら、そのまま頭を深く下げた。


「ゆいちゃん!」


 こんなことをさせるなんていくら何でもやりすぎだ。彼女の肩をつかんで頭を上げさせる。佐賀さんに向かって声を上げようと彼を見て、表情がいつもみたいに緊張感のない顔になっていることに気が付いた。


「……大人は理不尽だし、狡い。力がある分厄介だね」


 佐賀さんは立ち上がってゆいちゃんの前にしゃがみこんだ。


「失う覚悟はあるかい?」


 彼女は佐賀さんを潤んだ瞳でまっすぐ見ながら頷いた。

 そして彼女はぽつりぽつりと黒猫のイルを探している経緯を語り始めた。

 ゆいちゃんとそうたくんは血の繋がりがないこと。若くして未婚の母となった女性と結婚したのが義父だった。その後、母は姿をくらませ、義父に育てられることとなった。数年後に義父の企業が成功したことと再婚によって生活が一変してしまった。


「ちゃんと二人の子供としてそうたが生まれて、私はただの邪魔者でしかなくなったの」


 義父は海外に単身赴任してしまい、居心地の悪さは言うまでもなく。


「でも、そうたは義母よりも私になついた」


 義母は次第に二人に暴力を振るうようになった。自分を監視する人間はいなくなり、思い通りにならない子供と莫大な財産が手元に残った。そして、ゆいちゃんはそうたくんを連れて、クレジットカードを持って逃走することにした。そこが火事現場になった、以前に義父と二人で暮らしていた家だった。

 ところが、平和な時間はそう長くは続かなかった。すぐにカードが止められてしまった。お金がなければ何も手に入れることはできない。意を決して家に戻ると、そこには義母がいた痕跡は何も残っていなかった。義父の財産を全て持ち去ってしまったのだ。もうどうすることもできないと思っていた、彼女はそう言った。


「そんな時にネットでサガシヤを見つけたんです」


 義母のことを話すと義父にまで連絡されてしまうかもしれない。ようやく成功した仕事を邪魔したくなかった。探す対象を猫だと言った理由を彼女はそう語った。


「本当に優しくしてくれたんです……」


 だからって彼女たちだってこのままじゃ死んでしまう。保護者である以上、連絡しないわけにはいかないだろう。


「さて、行こうか」


 全てを聞いて佐賀さんは立ち上がった。


「今からですか?」


 私は聞く。まだ二人は眠っているのに。けれど、佐賀さんはお構いなしに出かける支度を始めた。


「失う覚悟があるのだろう?」


 佐賀さんは再度確認する。


「そうたを……私はどうなってもいいから、そうたが幸せになれるように」


 実の息子だけなら不自由なく育ててくれると信じて。佐賀さんはそっと彼女の頭を撫でた。


「必ず正義が勝つ世界ならいいのだけれど、この世は不条理だね」


 力のない者の願いは何の犠牲もなしに達成されることはない。そうだとしても、私は二人が一緒に笑っている未来がいいし、正義が勝つ世界がいいと思う。たぶん、それを願う。


「お願いします」


 ゆいちゃんははっきりと言った。

 義弟の幸せを求めて、彼女は戦う決心をしたのだ。






 事務所を出て私たちは車に乗り込んだ。車内には昨日とはまた違う緊張が走っていた。佐賀さんはカーナビに目的地の住所を入力して車を発進させた。都内の一等地、高層マンションの一室にその人は暮らしているようだった。


「どうやって調べたんですか?」


 私は印刷された資料をパラパラとめくる。破いてしまったことを心配していたが、元々二部印刷していたようだった。


「うちには情報のスペシャリストがいるからね」


 そういえば昨日私たちが戻ってきたときに、調べたと言っていたような。あの時間で見つけてしまうなんて。事務所警備員に感心する。


「手に入れたお金で遊びまわっているらしいね」

「ホストにギャンブルって……」


 義母はかなり散財しているようだ。


「イルもその人のところにいるのだろうけど、ちゃんとお世話されているのかは怪しいかもしれない」


 後部座席に座っているゆいちゃんは一人で何かを考えているようで、ずっと黙っていた。彼女はどうするつもりなのだろうか。そうたくんを義母の下に行かせるつもりなのだろうか。


「そろそろ車を止めようか」


 駐車場の少ない都内で空きを見つけるのは大変だ。佐賀さんはカーナビをチラチラ見て、駐車できる所がないか探し始めた。高層の建物がずらりと並んでいる街は窮屈に感じる。このどこかに義母がいるのだろう。

 どうにか車を止めて、私たちは街を歩きだした。俯いたまま歩くゆいちゃんが心配でたまらない。


「この建物だね」


 広々としたエントランスが見える。セキュリティーの万全さは言うまでもない。どうやって中に入るつもりなのだろう。佐賀さんは何の躊躇いもなく義母の部屋番号を押した。


『はい?』

「お届け物です」


 佐賀さんはカメラににこりと微笑んでそう言った。なんて人だ、義娘を届けに来たとでも言うつもりだろうか。義母は何の疑いもなくエントランスのドアを開けてくれた。


「恐ろしい人……」

「入れたんだから問題なし」


 エレベーターに乗り込む。景色を見る余裕もなく、ただただ増えていく数字を見つめていた。どんな人が待っているのか、私の緊張はピークに達していた。何も言わないゆいちゃんはずっと両手を握っている。


「ここだ」


 私たちは息をのむ。インターフォンを押そうとしたとき、ドアが開いて誰かが出てきた。その人の肩が佐賀さんの腕にぶつかる。


「おっと、失礼」


 その白髪の少年は軽く頭を下げた。


「いえ、こちらこそ……」


 佐賀さんは少し不思議そうにしながら少年が去るのを見送ろうとしていた。


「ご、ごめんください!」


 玄関で私はそう叫ぶ。閉じてしまいそうだったドアを間一髪で引き留めることができた。これで、確実に話すことができる。


「はい、どちら様?」

「花島さんですね? お子さんのことでお話があります」


 玄関に歩いてくる女性に、私は強気で言った。ドアの隙間からゆいちゃんを見たのか、花島さんの表情が変わった。


「残念だけど、この子私の娘じゃないわ。帰ってくれる?」


 彼女は踵を返して部屋の奥に戻ってしまおうとする。


「そうたは……あなたの息子でしょ」


 ゆいちゃんは花島さんを睨んだ。見下すような顔をする様子を見て、それだけでこの二人の関係がわかる気がした。


「要らないのよ、子どもなんて。勝手に野垂れ死にすればいいわ!」


「そういうわけにはいかない」


 私たちの後ろから声がした。その人は佐賀さんの隣にスーツを着こなして立っていた。身長は佐賀さんほど高くはないが、筋肉質な体つきと冷酷な表情をしている。


「親は子ども保護する義務がある。入籍している以上、あなたにもその責任がある」


 その人は彼女に見えるように一枚の紙を広げて見せた。


「それと、花島勉が窃盗の被害届を提出した」

「は?」

「重要参考人としてあなたを連行します」


 彼のその後ろからさらに体格のいい男が二人現れた。いつの間に。その二人はまるでドラマのように警察手帳を見せ、部屋の中に入った。


「意味わかんない! 不法侵入よ!」

「こちら麻野、花島を捕らえました」


 花島さんの言葉を無視して、無線で連絡を取っているようだった。麻野、どこかで聞いた気がする。


「失礼」

 

 麻野さんは私たちにそう言って去って行った。去り際に佐賀さんと二人は目を合わせているように見えた。連れていかれる花島さんの悲鳴が遠のいていく。そしてエレベーターが閉まるとそこには緊張感のない静寂が訪れた。私たちの突撃はあっけなく終わってしまった。

 ニャー、部屋の奥から鳴き声がして、最初の依頼対象が姿を現した。毛並みは艶やか、どうやらちゃんとお世話をされていたらしい。ゆいちゃんは部屋に入ることなくその場でしゃがみこんで名前を呼んだ。リンリンと鈴を鳴らしてイルは彼女の腕に抱きしめられた。


「帰ろうか」


 佐賀さんはそう言っていつもみたいに笑った。


「……そうたがあんな奴のところに戻らなくて済んでよかった」


 一階に降りてしまったエレベーターを待っている間にゆいちゃんはそう口を開いた。


「そうだね」


 私はなんて言ったらいいのか分からなかった。だって、彼女たちは仮にも親が罪人になってしまったのだ。ゆいちゃんが嫌がっていた義父への連絡はきっとなされているだろう。盗難の被害届も提出していたようだし。連絡したのは、おそらく。


「外、すごい人だかりができているよ」


 街を一望できるガラス張りのエレベーターはまるでそのために作られているように感じた。

 花島さんを捕らえるために集結したパトカーが三台、近くには数人の警察官と何事かと集まった一般人がいる。砂糖の山に群がる蟻のように見えた。降下するにつれて黒い点の一つ一つが人になっていく。


「私たち、どうなるんだろう……」


 イルをぎゅっと抱きしめて彼女は呟いた。


「大丈夫」


 佐賀さんは彼女の頭を優しく撫でた。


「君には素敵な親がいる。家族は血の繋がりじゃないよ」


 そう言われてゆいちゃんはスマホを取り出して、裏側に貼られたプリクラを見つめた。まだ幼さが残るゆいちゃんとスーツを着た男の人が並んでいる。嬉しそうに笑って腕に抱きついている少女と、恥ずかしそうに笑う男性。二人はとても幸せそうに見えた。


「君がその人を大切に思うのと同じくらい、その人だって君のことが大切だと思っているから」


 ゆいちゃんはプリクラに写るその人に触れた。もうすぐエレベーターが一階に着く。ドアの向こうの人影に私と佐賀さんは気づいた。


「ゆいちゃん」


 彼女は顔を上げて私を見た。開いたドア。そこに、いるはずのない大好きな人が待っていた。


「なんで……いるの?」


 その人はゆいちゃんに駆け寄って、抱きしめた。苦しい思いをさせてごめん、来るのが遅くなってごめん、そうたを守ってくれてありがとう。そんな思いが伝わってきた。


「ゆい」


 その人は愛しい娘の名を呼んだ。


 その人の熱を感じて、肩の上の彼女の顔がくしゃりと歪んだ。大きな目いっぱいに溜めた思いが溢れて、まるでプリクラを撮った頃に戻ったみたいに、子どものようにゆいちゃんは声を上げて泣いた。






「おはようございます」


 誰もいない洋服屋はいつもに増して暗く、厳かな雰囲気だった。定休日の毎週木曜日はいつもこんな感じなのだろう。荷物の散乱した裏口から入ったために入店を知らせるベルもない。棒読みのイラッシャイマセがないのもさみしいものだ。


 さみしいと言えば、三日間一緒に生活したゆいちゃんたち一家も昨日ここを去ってしまった。お義父さんが迎えに来た後も二人はしばらくサガシヤにいた。あのまま逮捕された花島さんに関しての法的な手続きとか、仕事のこととか、私はよくわからないけれど色々あったらしい。傷つくかと思われたが、二人は元気だった。逞しいあの子供たちならきっと新天地でもうまくやっていけるだろう。たとえそれが遠く離れた海の向こうだとしても。


 私とゆいちゃんと二つの約束をした。一つはちゃんと周りの人を頼ること、一人で抱えすぎないこと。もう一つは自分を愛すること、そして自分のことも守ってあげること。


 大人の理不尽に負けないような大人になります、そう言って去った少女は今、どこで何をしているだろうか。


「おはようございます」


 サガシヤは君たちの味方だ。この人はそれだけで、鼓舞も別れも言わなかった。


「おはよう、あすみさん」

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