第4話 異文化交流と捉えれば

 ウェブ小説で使われる独特の表現ってありますよね。

 紙媒体の読み物からネットの読み物に来たわたしみたいなタイプだと、ウェブならではの表現を知らず、意味を正しく読み取れなかったりすることがあります。


 例えばよく目にするのは「目を細める」という表現。

 わたしは最初これ、例えばお祖父ちゃんが孫を見る目のように、対象を見て可愛らしさに目を細める=相好そうごうを崩すという意味に受け取ってしまっていたのですが、ウェブ小説では全く反対の意味で使われるのですね。

 例えば殺意のようなものを表現する場面みたいな、眼光鋭く目が据わるのに近いニュアンスで使われることが多いようです。


 たくさんネット小説を読むことで、あ、この表現はこっちの意味なんだなと理解できるようになりましたが、違う文化圏からやってきてその文化を知らないうちは、意味を正しく掴めてないということはしばしば起こるものですね。

 なんならその表現、日本語として間違ってないか? なんてうっかり上から目線になっちゃたりしがちで。


 だけどやがてそうじゃなくて、文化の違いなのだと気づきました。そう考えるとどっちが上とか下とかじゃなくなります。その土地で育った文化というものがあるわけですから、そこで読ませてもらう(しかも無料で!)からにはそこの文化を理解したり受け入れたりすることがまずは重要、そう思うのです。


 書き手側としても、元々の自分の文化と読み手の文化が異なるという意識が薄くて、読み手に意図したことを伝えられていないということをしばしば感じます。あくまでわたしの場合の話ですけど。


 ウェブの小説限定で言えば、読者に読解力を求めないお話の書き方というのが求められるのかなという気がしていて、わたし自身はそこはなるべく意識して書かなければ失敗します。

 それでもなかなか意味が伝わらず、ご意見やご質問を頂戴するのですよ。あ、カクヨムでは滅多にコメント自体をいただけるほどの人気がないのですが、なろうのコメントでたまにあるのですよね。まあ向こうでもそんなにコメントいただける方じゃないんですが。


 そういうコメントを頂戴する場合、大抵自分と読み書きのルーツが違うことに対して無意識的になっちゃってるのでしょうね。指摘を受けて、え? 普通に読んでたらそれ分かるんじゃない? とか考えちゃうのは自分がここの文化に理解を示していないのだと思います。


 卑屈っぽくなるかもしれませんが端的に状況を書けば、こんな素人のわたしごときが自作の小説を読んでもらえる場を無料で使わせてもらっているわけです。そこに紙媒体の文化をそのまんま持ってきて、読解力がー、理解力がー、文脈や前後関係がー、と上から目線で腹を立ててはいけないような気がするのです。


 一応ちょっぴりがっかりはするのですよね。こんなこと書かれるようじゃまだまだ全然ダメだな、わたしの小説もどき、って。大体今書いてる『TS女子になるって、正直結構疲れるもんですよね。』というお話も、割と空気読まないところありますもんね(汗)。その辺りはもう文化の違いがどうこうっていうより作者の作風というか、よく言えばイノベーションと捉えていただけるとありがたい面ではあります。


 まあそれはともかく、そうしたご意見、ご指摘、ご助言をいただいた場合、わたしの場合は簡潔に意味を解説して今後の執筆の参考にさせていただきますと返信することにしています。


 そうしてる理由なんですが、書き直す余裕がないというのがまず一番にあって、しかし今の書き方では伝わらないのだなという事実は思いに留めて今後の執筆には役立てさせていただきますと本当に考えています。そしてあれこれと詳しく説明しすぎると言い訳がましいなと感じられてしまうので、簡潔な説明に留めています。


 たまにそのせいでそっけない返信と思われるのか、わたしが不快になったのかと心配してくださる優しい方もいらっしゃるのですが、大抵はそうではなくて上記の理由でシンプルな説明を心がけているだけなんです。


 たま〜になんと答えたらいいのやらという場合もあるにはあるのですがね。

 あのお話、いきなり赤裸々な下ネタがブッ込まれがち(しかも赤裸々すぎてお色気度ゼロ)なので、小説家になろうの方では前書き機能を利用して、今回は下ネタがあるので苦手な方は読まない方がいいですよと注意書きを置いとくんですよね。にもかかわらず、読まなかった方が良かった類と感想をいただいたりするんですよね。そういう場合って返答のしようがなくて、ただただ、ご愁傷様でしたと返答するよりなかったです。


 あのお話って、男子の女性に対する夢を壊しまくるらしいですね……。本編の主人公のセリフでもそんなことを言ってますが、作者が思ってた以上のようです。そういう方々ってリアルな女性が身近にいたらきっと幻滅しまくってるのだろうなと思いますが、でもそこも文化の違いなんでしょうね。わたしはその辺りの理解や配慮に欠けていたようです。


 そもそもあの物語をTSものにしようと思い立った最初の種粒は、男女の違いから来る相互理解の難しさだったのです。だから主人公が男の子から女の子に変化することで、知らなかった女子のことを知る過程を話の中に盛り込みたかったんですよね。男子が女子になったらきっとこんなことを経験するだろうって部分ですね。


 子供の頃に図書室で借りて読んだ本に、『おれがあいつであいつがおれで』という山中恒さんの古い児童向け小説があって、コンセプトとしてはそこから得ているんです。そのお話はいわゆる男女の入れ替わりによるTSモノなのですが、お互いがそれぞれの立場を経験することで知らなかった側面を知り理解し合い惹かれ合うみたいな話だったと記憶しています。


 『TS女子になるって〜』は多少のミステリー要素とコメディ要素を盛り込んだ結果、お話の種の部分はそんなに伝わらないかもしれないと思ったのですが、いただいたレビューを拝見する限りでは、多少なりともその辺に引っかかってもらえてるのかなーと喜んでおります。


 一方でこんなの女性じゃないっ! いらんこと書いてんじゃねーよっ! っていうご意見も、どこかの掲示板では言われていたとかいないとか(汗)。だけど女性だって男子の脳内以外の場所にも存在してるわけですからね。多少は現実の存在として認識してもらったってバチは当たらないんじゃないかなぁって思っちゃったんですよねぇ。ま、その辺はお互い様でもありますが。


 おっと、さすがちらしの裏だけあって、だいぶ最初の話から逸れましたね。取り留めのない話をしてしまいました。

 あまり読まれていないのを逆手にとって書きたい放題してしまいました。


 ここを読んでくださる貴重な読者様へ愛を込めて。

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