第13話 やべー!俺女子力たけーし!

「おお…おはようクラウディア…師匠」


「おはようございます殿下」


 俺たちは訓練場でいつものように待ち合わせたが3日前からこんなかんじだ。

 もちろん剣の訓練はきちんと教えてくれるけどクラウディアがあんまり目を合わせてくれない。


 俺もちょっと意識しちゃって集中力が!!クラウディアがそんな美少女だから悪いんだよ!絶対国一番の美少女だよね?こんな美少女他におらん!!


「そういえば、今日だよな祈りの日!」

 休憩にサンドイッチを齧りながら聞く。


「そうですね、夕刻には出発しましょう…。でも新月の日は魔物が多く出るのでジークヴァルト様は私から離れないでくださいね?」


「俺は魔物を斬れないの?」


「まだそんな腕ではありませんわ…魔物を見たことは記憶を失ってから無いのでは?」


「うん、無い…。どんなのなの?魔物って?」

 クラウディアは考えると


「平たく言うと産まれたての魔物は単なる肉塊ですわ…その段階で始末できれば後は腐るだけですわ。もし肉塊を放置して置くと成長して様々な化け物になるのです」


「ええっ!?何それ?オークとかコボルトとかじゃないの?」


「何でしょう?それは?」


「え?ああ…何でもありません…」

 どういう世界なんだ!?肉塊って!適当過ぎんだろ!!女神!!


「魔物は人の生き血を啜りに襲いかかってきますから…」

 ヒルかよ!!


「ジークヴァルド様は私が命をかけてもお守りしますから!」

 いや、騎士かよ!!


「クラウディア…嬉しいけど無理しちゃダメだぞ?」

 とサンドイッチを取ろうとして指先が少し触れ、ばっと離す。

 ああ、ダメだ!中学生かよ!前世でもまともに彼女作ったことなく死んだし!!

 友達とゲーセンで遊ぶくらいしかしてなかったし!


 王子らしくするったって礼儀作法はともかくキザったらしくするのも慣れてない。

 やっぱりクラウディアを守りたいって思うし。

 俺守られる側だけど。まじお姫様かよ俺!


「森までは馬で行きますが馬には乗れますか?乗れないなら私が…」


「えっ!!?乗れるよ!ていうか!クラウディアも馬乗れるのっ!!?」

 俺はショックだった!!


「はあ?乗れますわよ?当たり前ですわ」

 と聞いてますます凹んだ。


「ど、どうなさいましたの?そんなに落ち込んで?」

 だって…


「俺がクラウディアの髪を一房斬れたら…いい…一緒に馬に乗ってってお願いしようとしてたのに!何で乗れるのっ!」


「!!!?そんなことをっ!?」


「セレドニオにクラウディアと二人で乗るのが俺の夢なの!!いいじゃん!」

 クラウディアはまた赤くなり


「ダメ…今は師匠なんですから!そそそういうのはやめてください!」

 そういうのって何?


「今休憩中だし」


「ぐっ!ずるい!ならさっさと食べて訓練再開ですからね!!」

 と急いで食べるクラウディア。

 あっ…。


「クラウディア…ほっぺに玉子クリームついてるし!」

 と指先で拭うとクラウディアがまた真っ赤になった。


「ひっ!」


「あ…ごめんよ…はしたなかったか?どうも作法がまだ覚えきれないみたいだ」

 と慌てると


「こっこのっ!…天然女殺し!!」

 とか言われた。えええ!?俺女なんか殺してないぞ!?


 それから剣をまた振る練習を頑張った。

 ようやく夕刻に近づき準備してセレドニオのところに行くとヘンリックさんとクラウディアが既に来ている。フェリクスも俺について来ていた。


「おお、クラウディアの馬は黒いね。名前は?」


「アストリアと申しますわ」


「ほう、よろしくアストリア」

 アストリアはブルルっと鳴いた。返事してるみたい。


「では出発しましょう!ヘンリック!先導しなさい」


「はいお嬢様!」

 ヘンリックが先導し、フェリクスが後方に付き、俺とクラウディアは並んで走った。


 陽が暮れる前に俺たちは森へ到着した。

 森の外に馬が一頭いた。

 ん?誰かいる?


「あらおかしいですわね…?誰かいますわ」


「知ってる馬とかはない?」


「知りませんわね…旅人か何かかしら?」

 クラウディアも分からないと言う。


「お嬢様、殿下ひとまず馬を繋いで野営の準備をしますね。祈りが終わると森の入り口でキャンプです。夜道は暗くて馬は走れません」

 そうだな…新月とは月がないから夜道もまじで暗いもんな。

 前世なら電灯とかあるからいいけどこの世界電気ないし。魔法も使えねぇし。

 後は松明とかだけど馬が怯えたら困る。


 俺はセレドニオを繋いでフェリクスたちとテントを貼るの手伝おうとしたら


「でで殿下!休んでてくださいよ!こんなの私共でやりますから!王子ですよ!貴方!」


「ええ?でも…人数少ないし男手あった方がいいじゃん?」


「「そういう問題じゃありません!殿下なんかに野営準備手伝わせたら私共の首が飛びます!」」

 フェリクスとヘンリックは声を合わせて言う。

 誰も見てないじゃん!


「てかクラウディアは料理の準備始めてるじゃん!俺だけ除け者じゃん!泣くよっ!」


「あー…お嬢様はこういうのに慣れてまして…」


「何でだよっ!クラウディアだって侯爵家の令嬢だろ?」


「なら殿下にはジャガーの皮むき出来ますの?」

 とじゃがいもにそっくりなやつを見せる。


「お嬢様!殿下にジャガーの皮剥きなんて!ダメですよっ!」


「あらヘンリック…やりたいと言ってるんだから大丈夫よ。かすり傷なら治せるんでしょ?」

 おお言ったな?クラウディア!じゃがいもの皮くらいむけるわ!俺こう見えて料理とか前世でしてたし!前世で弟に料理作ってたし!女子力たけーし!女子じゃないけど!


「ふふふ!お前ら俺がただの坊ちゃんだと思ったら大間違いだ!クラウディア!見てろ!俺が料理を作ろう!」


「はあ?」


「料理の名前や調味料とかは教えてね」

 と言い、俺はジャガーの皮むきをするすると手際よく行ったのを見てクラウディアにヘンリックにフェリクスはビックリしていた!


「おおお王子が料理してる!!こんなとこ見つかったら首切られる!」


「しかし何という手つき!どこで王子は料理をしたんだ!?」


「嘘ですわよね?まさかこんなっ!」

 ストンストンと野菜を切り鍋に入れて簡易な野菜スープを作ったり干し肉を使いちょっと焼いて調味料で味つけてとても美味しいスープができた…と思う。


「ほい!いっちょ上がり!」

 と言うと


「何ですのいっちょあがーりとは??」

 ああ、しまった。前世の癖が。


「とにかく食おう!なっ!」

 と皆の器に持っていく。


「殿下!私が盛りますから!!」

 とクラウディアに押される。


「ちょっともう!危ない!火傷するだろ!?」

 とそっと手渡す。


「あ…ありがとうございます…」

(クラウディアは照れている。とても可愛い)

 っていうウインドウ出そうだわ!!


 皆で火の周りを囲みスープを一口飲むと


「美味い!!」


「何ですのこれ!!とても美味しいわ!!」


「お嬢様のスープより全然美味いのでは?むしろお嬢様のは…」


「だまらっしゃい!ヘンリック!!」


「あはは!ビーフストロガノフとかカレーライスとかならもっと美味しいけどやっぱりこんなもんかー」

 と言うとまた皆見る。


「殿下?どういう料理ですかそれは?このスープよりも美味いと?…ゴクリ…」


「うん?あははまぁ…でも無理かなぁ…、本で見ただけだよ、幻の料理だから」

 あはは、前世のことあんまり言わないようにしないとなぁ…。


 するとそこでガサリと音がした。

 皆身構えた!

 暗闇からギュルって音がした。

 火を向けるとそこにはなんとあの巨乳の本ヒロインちゃんがよだれを垂らして立っていた。

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