第12話 なんかいい雰囲気
「ジークヴァルト様…次の新月は3日後ですわ…私思うにまだその力のことは隠しておいた方がよろしいかと思いますの…ですからフェリクスさんとヘンリックと私で護衛に当たりましょう…」
なるほどな…確かに1時間も祈りを捧げなきゃいけないし知らない奴からしたら
(王子湖の中で何ブツブツ言ってんだ草!!)
みたいに思われるかもしれねぇわ!!
しかもまだレベル1だし!
もうちょっとレベル上げて皆の前でバーンと奇跡起こして足動かない人とかが動けるようになったとか感動させるくらいまでになんなきゃな!!
でも15日ごとで一つとか何年かかるやら…。もっと効率的な方法今度ザスキアに聞かないとな!
「ジークヴァルト様?」
「解ったよ…フェリクスとヘンリックにも事情を話しておくか…」
そう言えば…本ヒロインも怪力使えるし…まさか来ないよな?
ちょっと嫌な予感する。考えるのやめよ!!
「でもクラウディアが強いのはなんか解るけど髪が汚れるのは辛くないの?」
「髪など…切れば大丈夫ですわ…」
血で汚れても切って捨てるということか。
「なんか勿体なくね?それ捨てた髪…」
「はあああ?捨てた髪が勿体ないと??おかしなことを!」
「だってさ!その髪集めて筆とかに使ったら売れないかな?鮮血姫の筆ってことでブランド化して他国に売るとか、カツラを作ったりできるじゃん!」
彼女は信じられない顔をした。
「よくそんな発想いたしますわね?ジークヴァルト様…私そんなこと一度も思ったことありませんわ!捨てた髪などゴミとしか思えませんでした…」
「そう?ただのゴミでもさ、宝の山になるかもしれないじゃん!?つまりクラウディアの髪は宝石と同じだ!」
「まっ…まぁ…そんなっ宝石だなんて!そんな!ジークヴァルト様はやはりおかしいですわ感性が…」
彼女はまた照れた。
前世の知識でゴミでも宝になるとか知ってるしなぁ、普通に通販でも拾った流木とか金になるらしいし。
「そうだこれからは鮮血姫の髪のブランドをうちの国の売りにしよう!!クラウディアのイメージも良くなるし商会は儲かって国を潤すんだ!!闘うだけが使い道じゃないだろう?」
と言うと彼女はまた震えた。
「ジークヴァルト様…素晴らしいお考えですわ!本当に生まれ変われましたのね!女神に愛されるくらいに!そうですわ?女神様はどんなお姿なのです?」
「えっ!どんなって…なんかキビキビしてる30代くらいのおばさんだよ。グレーの服着てる。髪は水色で一つに結んでる。胸普通。クラウディアくらいの身長。メガネかけてる。いつも書類持ってる。忙しそう」
とザッと伝えたら
「……ええ…なんだかイメージが…違いますのね…本など伝承で伝えられるザスキア様はこの世の美を結集したような美しさで済んだ輝く瞳に天使のような衣を纏い慈愛に満ちた女神と」
「まぁそう言うイメージにしとかないと格好つかないんじゃないの?クラウディアの方が美少女だし…」
「!!!ジークヴァルト様!女神様に失礼ですわっ!私のこと以前はブスって言いましたのに!」
「それは謝罪したろ!」
「…ジークヴァルト様は私のことがお好きなのですか?せせせ政略結婚では…」
「はっはあ?…おっ俺は…確かに髪ばっか褒めてるけど…最初はなんて怖い性格の女って思ってたけどやっぱり綺麗だと思うよ?意志もしっかりしてるし…俺に優しいともっといいのに…」
「………」
ん?あれ?
俺もしや今告った?
クラウディアは赤くなりもじもじしている。
「私…私は殿下の今のお心が好きかも…しれませんわ…」
「心…」
俺は痩せてこれでも美形になったと思ったのだがクラウディアは俺の外見のことを一切言わない。
「クラウディアは…外見に惑わされないんだな…」
「当たり前ですわ…外見はただの飾り!大切なのは中身ですわ…ジークヴァルト様は昔とは違い本当に澄んだ心になりました。私はそれが嬉しいのです!」
くっ!クラウディアはやはり可愛い!!
俺は思わずクラウディアの小さな手を両手で握る。ドキドキする。
クラウディアと目が合い見つめ合う。
あれ?いい雰囲気だ…。どうしよう…。
…キスとかしてもいいのかな?
とそこでバーンと扉が開き
「やあやあ!倒れたって聞いたけど大丈夫かな我が従兄弟ジークよっ!」
と空気を読まずローマンが入ってきた。
「ローマン様っいけませんよ!!邪魔しちゃ!」
フェリクスが止めに入った。
俺は手を離しローマンに
「何?見舞い?大丈夫だけど…」
「あっれー?こないだまで険悪だったのにどうしたの?折角婚約が破談になったら俺がクラウディアちゃんをお嫁にもらっても良かったのに仲直りしたのかなー?」
「だだだ…だれがやるかよっ!!」
と叫ぶとクラウディアは真っ赤になり部屋から走り去った!!
「あららっ…冗談だったのに」
とローマンはケロリとした。
*
「ヘンリック!!」
私は部屋に戻るとヘンリックに聞いた。
「なんでしょうお嬢様」
「ちょっと医者を呼んでくれないかしら?私何かおかしいの…さっきから動悸がするわ。不整脈かしら?」
と言われてポカンとするヘンリック。
「お嬢様…」
「ジークヴァルト様は私のこと…好いてらっしゃるの?ブスではなかったの?からかっているのでは?」
「ええー…。王子はクラウディア様のこと好きでしょう?」
「ふぐっっ!!」
顔を押さえてクラウディアは悶えた。
握られた手が熱い!心臓が熱い!髪が震える!
そしてあの天然で純粋な瞳に見つめられ私はおかしくなっているわ!!
ヘンリックはそれをにこにこ見守った。
「そ…そうだわヘンリック…実は殿下のことなんだけど…」
とクラウディアはもう一つの王子の能力のことや新月の湖での祈りのことを伝えた。
「ええっ!?本当に王子が奇跡の力を?でもそれ本当なんですか?力を見たのですか?」
「見ていないわ…でも嘘を言ってはないと思うの。もちろん頭がおかしいとも…思えない。力の使い方が解らないらしくて今度夢で女神様に聞いてくるみたいよ」
「はあ…ずいぶんあっさりしてますね、本当なら大事ですよ…国を揺るがすほどの…」
「治癒の力なんて過去の王族で最大限では死の直前にある人をも治した奇跡とも呼ばれているのに…。もちろん寿命とは別だけど」
「それにしてもお嬢様…殿下を森に連れて行くとは…」
「まだこのことは私とヘンリックとフェリクスさんしか知らないからその人数で行くわ…殿下が祈りを終えるまで1時間凌ぐわよ!」
「ご先祖が使ってた森ですか…侯爵家の西の森になりますね、あの森の湖って…」
「ええ…殿下には言わなかったけど…先祖が血を落とす為に洗ってたからか真っ赤に染まってるみたいだけど…」
「そんな湖で大丈夫なんですかあ??」
「私に聞かないでよ!とにかく本当に殿下が奇跡の力を持っているなら祈りの最中に湖の色が浄化され綺麗になるはずよ!伝承ではね!」
「それは見たいですね」
「殿下がホラ吹きではなければね」
とクラウディアは言ったが王子は嘘をついてなどいないのは目を見れば判っていた。
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