第8話 断罪できないだとっ!?
今日は俺の16の誕生日で祝いの日だ。
朝から熱い目でメイド達が見てくる。
散々嫌悪したのに掌返してくる女共め。
貴族達もこぞって登城し、ホールは瞬く間に人が埋まる。
俺は白に赤の刺繍の入った正装で現れ皆から注目された。
「!!?あれが殿下!?」
「3か月前とは比べようにならないくらいだ」
「本当に痩せて凛凛しくなってる!」
「なんて素敵なんでしょう!!」
「私と踊ってくれないかしら…」
「どうも婚約者と仲が悪いようよ?これはチャンスでは?」
あちらこちらからザワザワと声が聞こえる。何だこいつらやっぱり掌返して!
それより肝心のあの女はいるのか?
見渡すと隅の方で彼女は黄色いドレスを纏い目を瞑っていた。
は?寝てる?
どんな顔するか見たかったのに!
寝てるだとおおおお!??
いや寝てるわけないよな?立ってるし。
俺はとりあえず挨拶する為に壇上へ上がった。
「皆…本日はブッシュバウム王国第一王子ジークヴァルト・ゼッフェルンの16の生誕祝いのめでたい日だ!ゼッフェルン王家にさらなる繁栄が訪れることを切望する!我が息子がこの半年間自らの努力と鍛錬により肉体を改造し、皆の目にも逞しく見えることだろう!これからの王家を背負って立つ王子を何卒よろしく願う!」
と父上…現国王アルトゥル・ゼッフェルンが挨拶し、次は俺が喋ることになった。うええ苦手だわ。
「ええ…皆俺の16の生誕にお集まりいただき感謝します。この国は敗戦国となりまだ貧困に喘ぐ民も多くおります。まだまだ大変な世情の中ではありますが、5年でここまで復興を遂げたのは皆様の功績があってこそです。
弱者に手を差し伸べこの国が慈愛に溢れた新しい国になることを願います!俺はその為にこれまでの堕落した自分を捨て生まれ変わることを誓います!皆どうぞまだ若輩者の俺が先の未来で良き王となれるよう支えていただきたい!」
と頭を下げ、一瞬皆が鎮まり返った。
ヤバイ!なんかしくじった!?
すると盛大な拍手が沸き起こり
「王子殿下万歳!」
「ジークヴァルト殿下万歳!!」
「おめでとうございます!殿下!!」
「殿下は最高のお方だ!!」
等と称賛されまくった。
ふとクラウディアを見ると無表情であった。
一応パチパチと拍手はしているが。
「素晴らしい演説でしたよ!ジーク!母は感動しました!貴方ときたらこれまでお菓子を食べているだけだったのに!立派になって!」
と母上…現王妃カタリーナ・ゼッフェルンが泣いた。薄いオレンジの髪を編み込み、目は藍色の夜の瞳だが40代でも若々しく美しい容姿の王妃だ。父上は今の俺がそのまま老けた感じ。
ユリウスも金髪碧眼の美少年だし、エリーゼは金髪に藍色の母似の瞳だ。
「母上…昔の俺は忘れてくださいね」
と苦笑いする。
と、そこで母上が
「ほらジーク!婚約者のクラウディア嬢がいらしたわ!お相手なさい?ふふふっ」
「ああ…いや母上…実は…」
「お久しぶりでございます、王妃様、国王陛下!」
と礼を取るクラウディア。
「まぁ!クラウディアちゃん!いつ見ても素敵な髪に綺麗なお顔だわ!!本当にうちのジークのお嫁に来てくれて私早く孫の顔が見たいわ!きっと素敵なお子になるわね!今から楽しみで楽しみで仕方ないのよ!まだ結婚もしてないけど、私孫の衣装を考えてるわ!うふふふっ!」
はっ母上ええええ!
物凄く楽しみにしているううう!
今から婚約破棄の断罪しなきゃいけないのにいいい!!
チラリとクラウディアを見るとこちらも気まずい顔をしていた。たぶん断りに来たのだろうな。
「ほら!ジーク!クラウディアちゃんとダンスを!こないだみたいにお熱いのは控えてそれは二人の時になさい!うふふふっ!」
げっ!このタイミングでまた踊れと!?
ヤバイぞ!その前に断罪せねばっ!!
しかし母上はクラウディアの手を握り締め
「ジークをよろしくねっ!クラウディアちゃん!」
とすんごいニコニコ顔で迫っている!
クラウディアは流石におほほほ…と力なく笑う。
この雰囲気をぶっ壊して母上が涙に濡れる事なんかこの場でしたらどうなるか…ダメだ、無理いいい!
俺は仕方なく…
「クラウディア嬢…踊っていただけますか…」
と半ば白目になりつつ聞くと相手も白目で返した。
「ええ…ジークヴァルト様…」
それ以上何も言わず俺たちはただ踊った。今度は足を踏まれない。少しは許してくれたのか?
彼女は俺の目を見ないし痩せたことにも一切触れない…。
「あの…俺変わったろう?」
何とか聞いてみたら
「そうですわね…」
と一言それだけしか返ってこない。もっと痩せて素敵ですわねー!とか痩せたくらいでいい気になられましてもー?とか言われてもおかしくないのに…。
何このモヤっとするやつは!
「これで逃げられそうもありませんわね…」
え?そっち?さっきの母上のことで?それとも半年できっちり痩せたというお前の言いつけを守ったからと思われてる?
ヤバイぞ!ますます婚約破棄できない!
元気がないのも婚約破棄できないからか!
全てが合点する。
そんなに俺が嫌いなのかこいつは!!と!
「別にお前が望むなら婚約破棄してもいいんだけど」
って言うと信じられない言葉が返ってきた。
「私が悪うございました…。殿下の手紙の最後の一通を読みました。その前のは悪口が書かれていると思い込み焼き捨てましたから。今まで申し訳ありませんでした…。私の約束通り半年でこんなにも努力なさった殿下と婚約破棄などできましょうか…」
ええ?痩せたのお前をギャフンと断罪する為に頑張ってたなんて言えないいいい!!
しかも何でここでしおらしくすんのっ!いつもの覇気どこいった?
「ジークヴァルト様…どうか私の愚行をお許しください。そして良き王妃となれるよう邁進いたしますわ」
と彼女は華が咲いたように美しい笑みを俺に向け俺の心臓がどくりとおかしくなった。
うぐっ!!勘違いしてるよ!クラウディア!お、俺は君を断罪する為に頑張ったのにこんなのってないよ!
何でそんな優しい顔をするんだ?俺が痩せてカッコよくなったから?やっぱり見た目?
俺はどうすればいいんだよ??
俺は真っ赤になりダンスを終えた…最後の手が離れる時一瞬目が合った。
うぐっ!!瞬間ズキューンと俺の心臓に弾丸が撃ち込まれた気がした!
ヤバイ!!
可愛い…。
…俺…やっぱりクラウディアが好きなんだ…。
彼女が俺から離れると群がる男が大勢、
「クラウディア嬢!私と次を!」
「ずるいぞ!私と踊っていただきたい!」
「俺とに決まってんだろうが!!」
とモテモテだ。そりゃそうだろう。
俺は風に当たる為バルコニーへと出た。
もはやあの笑顔が頭から離れない。
これがクラウディアの作戦か何かで結婚してやるから一生尻に敷かれてろだったら怖いけど。
とそこまで考えてると
「ジークヴァルト殿下?」
と頰を林檎のように染めた可愛らしい少女が現れた。背は小さいけど胸がめっちゃでかい!!
「は、俺に何か用?」
「いえ!偶然私も先程からここにいましたら殿下が風に当りに参りましたの!何て奇遇な!ああっ!私申し遅れましたわ!トラウトナー伯爵が娘レーナ・トラウトナーですわ!以後お見知り置きを!」
と礼をするレーナ嬢。溢れそうな谷間見えてますよ!わざとですか?
はっ!俺は察した!こいつっ!まさか!
本ヒロインかっ!!?
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