第9話 本ヒロインあざといっ
レーナ嬢はクリクリとした愛らしい瞳を向けアピールしてくる。
間違いない!こいつ本ヒロインだ!!あざとっ!!
俺は目線を逸らした。
「ジークヴァルト様…もし良ければ私とも踊っていただきたいですわ…」
熱っぽい視線で彼女は俺に近づいてきた。
俺は手をかざし胸を視界に入れないようにした。
「いやっ!結構!!ははは!ちょっと疲れているのでね!もう少し休みたい!」
よしっ!断った!
「まぁ!それでしたらお庭のベンチで一緒に休みませんこと?あの辺りなら人気もなく静かですわ!さあ!行きましょう殿下!」
と強引に彼女に腕を取られ胸を押しつけられて困惑する!ヤバイあんなとこに連れて行かれるとヤバイ!
そこで
「ジークヴァルト様…どこへ行くのですか?その令嬢はどなたかしら?」
クラウディアあああ!!!
「いや…あの…」
「初めまして鮮血姫…クラウディア様っ!私トラウトナー伯爵が娘レーナ・トラウトナーと申しますっ!殿下とは先程お知り合いになって!殿下が休みたいと申されるので静かな場所にご案内申し上げようとしてましたの?」
とレーナ嬢がまたわざと胸を押しつけた。
クラウディアがワナワナと髪を揺らしている。
これは!怒ってるじゃん!!
「あらまぁ!静かなところでねぇ!!そうですか!ジークヴァルト様は婚約者を放置しトラウトナー伯爵令嬢とお二人で休みたいと!」
「いや違うぞ?レーナ嬢が強引に引っ張るから!」
俺は弁明したがクラウディアの怒りは収まらない!
ヤバイ!嫌な汗がまた吹き上がる。
とにかくこの巨乳ヒロインから離れようと俺は腕を離そうとするが
レーナ嬢は物凄い力で俺を離さない!
何だこいつ!めっちゃ怪力なんですけど!!
「うっ!」
鍛えてる俺でも腕潰れるんじゃないかくらいの力で縛りつけ俺は痛みに顔をしかめた。
その様子にやっと気付いたクラウディアが髪を一本剣のようにシュルリとレーナ嬢の首に突きつけ
「お離しなさい?無礼ですよ」
と言う。レーナ嬢とクラウディアは睨み合ったが
「クラウディア様怖ーい!流石鮮血姫ー!」
と腕をようやく離した。
なんつうあざとい奴だ。
周りがいつの間にかザワザワしてクラウディアがまるで悪者のようになった。
「まぁ見まして?クラウディア様…このような席で小娘一人に髪を向けるとは!」
「鮮血姫流石だな!」
「侯爵家だからって礼儀がなってないのはどちらかしら?」
「可哀想に!レーナ嬢震えているぞ!」
とザワザワする。
俺は堪らず
「クラウディア!行こう!」
「えっ!?」
と彼女を連れて広間を出た。
そして人気のない部屋に入りまた謝罪をした!
もうこればっかり!俺何回頭下げるんだよ!!
「何故謝るのです?」
「だってあんなの…クラウディアが悪者みたいにされたじゃないか!」
「まぁそうですわね…でもジークヴァルト様がキッパリ断ればこんなことにはなっていませんでしたわね?」
「いや、だって!見ただろ!?あの子凄い力なんだ!腕がまだ痛いよ!何なのあの子は!」
「レーナ・トラウトナー伯爵令嬢…彼女は見た目の愛らしさに反して敵の腕をも砕く異能の怪力一族の末裔と噂で聞きましたわ。要するに戦闘民族ですわね…その力は徐々に弱まってるらしいですが何代かに一人はそう言う怪力を受け継いで生まれてくるらしいですが…」
「ウゲッ!そうなの?俺腕折られてたかもじゃん!」
「ですから掴まれる前にキッパリお断りすれば良かったのです!隙が多いのです貴方は!まだまだ鍛錬が足りませんわ!」
「そんな…知らなかったし!」
そんな怖い一族いたのか!つか何で悪役令嬢も本ヒロインも強いんだよ!
俺王子なのに鍛えてるのに弱いじゃん!ヘタレじゃん!!
「まぁ、私が助けて腕が折れなくて良かったですわね!礼を言って欲しいものだわ」
ふふん!といい気になるクラウディアに
「はあ?俺があの場から連れ出してやったんだぞ?お前こそ礼を言えよ!」
と俺が言うと
「あんな中傷どうってことありませんわ!私は侯爵家の令嬢ですもの!下賤な下位の爵位の者になんと言われようといちいち気にしませんわ!」
えええ!?
「じゃあ助けなくて良かったのか?俺の振る舞いは無駄だったと?確かに隙を作った俺が悪かったけどね…」
と言うと彼女は少ししおらしく
「別にそんなことは言っておりませんわ…私は何を言われても気にしないだけで…昔から言われ慣れておりますゆえ、今更なのですわ」
「昔からそんな酷いこと言われてたのか!クラウディア!誰だそいつ!いいか!お前の髪は綺麗だし鮮血姫なんて言われなくてもいいんだぞ!」
と俺が怒ると彼女は髪と同じだけ初めて赤くなった!
うわぁ…これは…。
「なっ!!なな…何を!私は本当にこの髪で敵や魔物を貫いてますし鮮血姫と言われても当然ですものっ!!綺麗などと世迷言を!」
「だってお前と初めて…あ…記憶を無くして初めて会った時にも思ったよ。本当に綺麗な赤い髪だと。鮮血姫なんて知らなかったし…。そんな風に呼ばれるならもう闘わなくていいじゃん!」
「ジークヴァルト様…」
彼女は力が抜けヘタリと座り込んだ!
「大丈夫か?クラウディア!?」
彼女は俺を見つめると
「うふふっ!そんな風に私の髪のことを言ってくれたのは貴方が初めてですわ!皆この髪を畏怖する者もただの戦力として称えることしかされませんでした…。私はそうして生きてきた。強くあらねばと…。有事の際に役立たねばと幼い頃より剣を使い修行しましたの…それがバルシュミーデ家の勤めでしたから」
「ちょっと本で読んだよ…国の為によく闘ってくれた…でも君は女性だしもう無駄な血が流れることのない国を俺が作りたい……手伝ってくれる?俺の側で」
俺は真っ直ぐにクラウディアを見つめた。
彼女はにこりと微笑んでくれた。
「それでは!明日から私が殿下に直々に剣の修行の師匠になりましょう!」
ん?
え?
「は?今何と?」
「ですから!剣の師匠ですわ!私より強くなって貴方が私を守ってくださるのでしょう?」
とこの婚約者はとんでもないことを言い出した!
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