第7話 馬に乗れたぞ!!
建国記念日の失態以来、俺は2~3日沈んでいたがいつまでもあの女のことを考えても仕方ない。忘れよう。悪役令嬢がダメなら本ヒロインがいるだろう?痩せてカッコよくなって本ヒロインと結ばれればいいことだ。
そのうち出会うであろう本ヒロインに俺は期待を抱き痩せることにした。それから白馬のセレドニオにも毎日会いに行く。最近ちょっとだけ触らせてくれるようになったし餌も俺の手から食べてくれたのだ!これは進歩したぞ!
よしよしと馬を撫でる。
世話係のカールも最近俺と気軽に話せる友達くらいにはなった。中年だけど。
「ジークヴァルト様の熱意でセレドニオも心を開いてきたというか食料になる心配はないと判断したかですな」
と冗談で笑うカール。
「だから喰わないっての!」
カールはにこりと笑うと
「どうです殿下…セレドニオに乗ってみますか?」
「えっ……でも俺……いや…もうちょっといいや」
だいぶ以前よりはマシになったと思うけどこんなデブが白馬に乗っても決まらないだろうな…。
「そうですか…判りました」
カールとセレドニオと別れて俺はまた部屋で腹筋を始めた。散々汗かいて風呂入ってそれからペンを取り手紙を書いた。
(拝啓…クラウディア嬢へ
建国記念日のことお詫び申し上げます。大変失礼な物言いをしてしまいました。足を踏みまくってすみませんでした。結果最悪な転倒をしてすみませんでした。後、泣かせてすみませんでした)
そう書いて蝋を垂らして王家の紋章の判子を押してメイドに渡しておいた。
俺はベッドに入り本を読むようになった。今までなんとこの国の文字が読めなかった!必死でトレーニングの合間に勉強してなんとか文字を覚えたのだ。
この国の歴史書や馬の乗り方、髪の毛の戦術法、女神ザスキアのこと…。東の国のこと。
大体読んでいるうちに寝てしまうが。
*
「今日も来たの…。鬱陶しいわ」
私はヘンリックから手紙を受け取りそれを暖炉に投げて焼いた。
「中身くらい読んでも…」
とヘンリックは言ったけど
「必要ないわ!どうせ悪口が書かれているのよ!私のことブスって言ったのよ?ヘンリック!私はブスかしら?」
「いいえ!クラウディア様は大変お美しいです!」
「そうよ!大体失礼なことをしたのは向こうよ?なのに性格ブスですってえええ!?信じられない!性格が悪いのは向こうよっ!」
「でもジークヴァルト様はまだ痩せようと努力しておられるようですよ?やはりクラウディア様がお好きなのでは?」
「好きな相手にブスとは言わないわヘンリック」
「でも…ローマン様があの場を収めましたが流石に王子にあのようなことをしたのはお嬢様に非がおありでは?キスも偶然でしょう?」
「狙ってやったかもしれないじゃない!!」
「はあ…」
ヘンリックは溜息をつく。
*
それからまた数ヶ月が過ぎた。
俺はついにとうとうここまで来たかという体型になった!シックスパックとは言えないけど4つくらいは割れてる腹に少し筋肉とシュッと引き締まる身体に後顔も細くなり美形が降臨している。鏡の前でガッツポーズを取った!
「長かったああああ!!」
俺はやり遂げた!!
それに最近メイド達が俺を見て頰を赤らめるようになった。
樽体型の時は嫌悪の表情しかされなかったのにな。やっぱり女なんか外見が良ければいいんだな!きっとあのクラウディアもそうだろう!
あの女が今の俺を見たらどう思うのか…。
……おっと!もう辞めよう!
あの女に時々手紙を出してるけど返って来たことなんか一度もない。婚約破棄もどうせもうすぐだろう。…もうすぐ俺は誕生日を迎える。16が近い。俺の誕生日パーティーにはあの女も来る。そこで婚約破棄してやる!断罪だよ!本ヒロインがパーティーの場にもしいたら俺そっち行くから!
「あの女!見てろよおお!」
そして俺はいつものようにセレドニオの所に行った。今日は…セレドニオに乗ってみようと思う!
馬小屋に着くとカールとセレドニオが待っていた。
「殿下!ついに乗るのですね?」
「おう!セレドニオ!頼むぞ?」
セレドニオを撫でながら俺は乗馬の本で学習した記憶を頼りに俺はまずセレドニオの左横に立ち手綱を握り立髪に手をかける。次に鎧に左足をかけ右足で地面を蹴りひらりと鞍に跨り騎乗に成功した。セレドニオも大人しくしている。よしよしいい子だ。
「殿下!お見事です!素晴らしい!」
「いや、まだ乗れただけ!次は走るぞ!」
俺は背筋を正し前を見つめセレドニオに合図した。最初はゆっくり歩き次第に走る俺とセレドニオ!
馬と心を合わせて一緒に走るのだ!
「いいぞセレドニオ!お前は最高の馬だ!」
心地良い風と共に俺たちは仲良く走った。
カールも感動して泣いている。
白馬の王子様…今日俺は一つ夢を叶えたのだ!
転生してから初めて嬉しい出来事かもしれない。痩せたことも嬉しいけど!
セレドニオから下馬し俺は櫛で立髪をすいてやる。セレドニオも嬉しそうに見えた。
*
「お兄様…本当に半年で痩せてカッコ良くなりましたわ」
エリーゼが感心した。ユリウスも
「凄いや兄上…これでクラウディアお姉様も納得してお嫁に来てくれるよね?」
「はっ…はあ?あんな女知らないわ。俺は自分の為に痩せたんだよっ!むしろ婚約破棄してさっさと次の相手を見つけるよ!」
と俺は魚をもぐもぐ食べた。
「どうかなぁ…クラウディア姉様程のお相手はいないと思うよ?」
「それはどうかな?ユリウスくん…もしかしたらとっても可愛らしい子が来るかもしれないよ?」
そう本ヒロイン…どうせ俺狙いの本ヒロインならすぐに結婚できるだろう。あんな顔だけの女と違ってな!
「なら兄上は何故未だに謝罪の手紙を出しておられるのですか?気がないなら辞めればいいのに」
「…あんなの…俺が悪者にされるのは釈だから出してやってるだけー!」
「まぁクラウディア姉様もお返事しないってことは読んでないね」
「なぁ、その姉様っての辞めろよ、破棄するって言ってんだからあいつはお前たちの姉様にならないの!」
「ええ…兄上は姉様が他の男性と結婚しても良いと?折角王家に赤髪の最強のお子ができるかもしれなかったのに!」
「し…知らん!」
「やだよぉ!クラウディア姉様じゃなきゃやだああっ!」
「何で君たちはそんなにあの女がいいんだ!?あいつ最悪だろ!」
「強いし綺麗だし優しいし完璧だよね」
ユリウスくんが言う。
俺優しくされたことないんだけど!?俺以外には優しいんだな!?
もう手紙も書くの辞めるわ!
*
それから数回届いていた手紙がやっと来なくなった。最後に届いた手紙を放置していたらしくまだ焼いてなかったわ。
私は一回くらいどんな悪口を書いてるのか見てやろうと手紙を開いた。
そこには…信じられないことに謝罪文があった。
「………」
私は暖炉を見つめた。
まさか、最後だから手切れみたいな感じよね。
これで婚約破棄に近付いたわ!
あの豚の誕生日に呼ばれて終わりよ!
ふふっ………。
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