第3話 流石に夢見がちだった
「なぁフェリクス…この世界の人ってさあ…魔法とか使えないの?」
と言うとフェリクスが思いっきり怪訝な顔をした。
「何でしょうか?マホーとは?」
あっ!!これダメだわ。魔法無いわ!この世界!ライトノベルとかだとお決まりのように出てくんだけど無いのか。
「いや…何というか特殊能力とかさぁ…」
「ああ!特殊能力でございますか!それなら騎士団が使えますよ?マホーとかは知らないですけど」
「え?あんの?どんなことできんの?空飛べる?」
やっぱり剣と魔法だよな!でも悪役令嬢モノって恋愛ジャンルだよなぁ…ファンタジー兼ねてるやつもあるだろうけど…。
「空を飛ぶ?人間が?何を恐ろしいこと言ってるんですか!!そんなの東の帝国軍の連中を思い出すから辞めてください殿下!!私達の国は帝国軍に負けたのですよ!恐ろしい空中兵団によって!!」
とフェリクスがガクブルと震えだした。
ええーっ、うちの国の人間は飛べなくて東の国の人間は魔法とか使えるわけ?国ごとに能力使える奴とかあんの?
しかもうちの国負けたし絶対魔法使えないな。
「で何の特殊能力使えんのうちの騎士団は」
「はぁ…髪の毛を伸ばす能力とかですけど」
「………………えっ?」
何?髪の毛?ん?
「………………えっ?」
俺はそんなまさかと2回くらい「えっ?」って聞いたけどフェリクスは
「ですから髪の毛を伸ばす能力ですよ、うちの騎士団はだから全員長髪です」
「何だよそれえええ!意味何もないじゃん!!髪伸ばす能力って!!一生ハゲにならないだけ?まじか!?」
ていうか髪って別に勝手に生えてくんだろが!!
「いや、ですからね、髪の毛を伸ばして髪の先端に武器をくくりつけて敵にブン投げる戦術法をしていまして。万一敵に髪掴まれても髪切ってもすぐ生えますから」
「なんじゃそらっ!!なんつー原始的かつ微妙にカッコ悪い戦法!!負ける!そんなん負けて当たり前じゃないか!」
と俺が言うと
「ええーっ?うちの国の伝統的な闘い方なんですけど…」
マジかっ!!ダメだこの国終わってる!昔から変な闘いしてたんだ!!
こんなんなら俺東の国に生まれて魔法使いたかったわ!!
でもそうしたらクラウディアさんと会えなかったのか。
「そういや、俺とクラウディア嬢は何歳になるんだ?」
「ああ、殿下とクラウディア様は15歳ですよ」
えっ!若いな!てか15であんなスレンダーグラマラス美少女!!
でもこの世界では普通なのかもしれないなぁ…。
「そうだ…俺クラウディア嬢に酷いことをしたんだよね?パイ投げたりしたとか…。ねぇフェリクス…ドレスとか贈ったら喜ぶと思う?」
「どうでしょうか…こんなお金のない時に贈り物などしたら殿下の印象が悪くなるのではないでしょうか?」
「ええ?マジ?一応王族なのに?……そうだ!なら花とかどう?」
「王宮内で育てているものは戦争で生き残ったものを集めたものでして…それを全て摘み取ってしまうのは何というか…」
「全てなんて言ってないから!もう1本くらいでいいから!!」
「それは逆にバカにされてると思われるのでは?」
「ぐうううっ!!」
どうしろと?
「なら花を俺が自ら育ててそれをプレゼントすればいいんだ!!」
「何ヶ月もかかりますよ?」
「………」
「そう言えば…クラウディア様は歌が好きなようですよ…戦争前はよくご家族で歌劇を観に行かれていたそうです」
「なるほど!!歌劇!じゃそこへ招待を!!」
「戦争で焼けてしまいましたけど」
ダメじゃん!!
あ…でも一つあるにはある!金もかからないし!
*
ということで次の茶会の日に俺はクラウディアさんを呼んだ。
「はぁ…何ですかまた急に呼びつけて。何かする気ですか?」
彼女は椅子に座ってブスーっとしている。
「えー…僭越ながら俺の歌を贈りたいと思います!心を込めて作りました!!」
そして俺はタンタンと足でリズムを取る。
そして指をビシリと決めて歌い出した。
「YO!YO! HEY! そこのツンツンしたお嬢さん!君は俺の天使だYO!俺のハートは鷲掴み!赤い髪は綺麗だYO!!どんなシャンプー使ってる?
俺の心に咲く赤い花!いつも大事に育てるZE!
この気持ちは一生モノ!君に捧げる俺の愛!
出会えたことが奇跡的!例え世界が終わっても俺の愛は止まらない終わらないイェー!!」
俺は前世で培ったラップで告白してみた。
クラウディアさんはポカンとしていたが次第に真っ赤になり震えだした。感動したか?
いや…
ブツリと音がしたような気がする。
「わ…私こんな出たらめで気持ち悪いリズムのお歌は初めて聞きましたわ!ジークヴァルト様は私を馬鹿になさっているのですね?貴方が王子でなければ殴っていたかもしれませんわね…淑女としてしませんけども!!」
怒りで顔や髪が真っ赤!いや、髪は元からか!
「あ、あのーですねーこれはラップと言いましてあのーそのー異国のー文化のー…特徴的な愛の歌と言いますか…」
俺は噴き出す汗を拭いつつ説明したが無駄だった。
「もう用がないなら私帰ってよろしいですか!?ジークヴァルト様!!」
「…はい…ごめんなさい…」
そうだよな…この世界にラップがあるはずないからせめてウケを狙って笑って貰おうとしたんだが…怒らせただけで終わった。
普通にピアノとか練習すれば良かった。
「クラウディア様…殿下がこれを…」
とフェリクスが王宮内で育てている薔薇に似たような花を5本包んでクラウディアさんに渡した。
クラウディアさんはそれとフェリクスを見て白い頰を赤くした…
「まぁ…フェリクスさんありがとう!!」
えっっ!?何この雰囲気!!
「いえ…殿下からですよ…」
とフェリクスも照れていた。
おい!お前たち…何なの?そういうことなの?
できてるの?いや…これは両思いだけど言えないやつ?何だと?
おい女神!どういうことだこら!!
しかし答えは極めて明確だ。前の俺が最悪な奴でこの最悪な体型で女にモテることなど皆無な件!誰もに嫌われている件!!
「………」
俺はくるりと後ろを向いた。
「クラウディア嬢…貴方との婚約を破棄します」
「えっっ!?急にどうしたのです??」
どうしたもこうしたもあるか!このクソ女があああ!!俺の心はもうズタズタだわ!転生したと思ったらもうフラれたも同じだわ!
「殿下!?考え直しを!クラウディア様はこの国に必要な方です!」
「必要なのはお前ら互いだろうがああ!この裏切り者があああ!!もう知らん勝手にイチャついてやがれ!!クラウディアさんなんか俺全然好きじゃないからっ!ちょっといいなって思っただけだし!もういいし!俺みたいな樽なんかもうほっといてくれよおおおお!」
と俺は叫びその場から走り2回くらいずっこけて足に血が滲むが起き上がり走り去った。
「なっ…なんなの?あの豚…それよりフェリクスさん!この花は魅了の効果があるのよ!貴方知らなかったでしょう?」
「えっ!そうなんですか?ど、道理で…。あっ殿下勘違いしてますよ…」
「ふっ…まぁいいわ!これで婚約破棄ですわねおーほほほほほほ!」
と笑うクラウディアだがフェリクスが無情にも
「あのー…クラウディア様…正式な婚約破棄は現国王様と王妃様の前で書面を交わさないとできませんよ」
と言われクラウディアばガーンと白目になった。
その様子を影で見ていた弟のユリウス王子は
「何あれ…面白い!兄上本当に記憶無くしてクラウディア姉さんに惚れてら!!」
楽しそうなことになったとユリウス王子はクスクス笑った。
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