第2話 馬に乗れない王子なんて嫌だ
「え?馬がいるの?」
と俺はフェリクス・フーデマンという従者に王宮内を案内してもらいながら俺の馬がいることを聞いた。
「はぁ…まぁおりますが…殿下は1度も乗馬したことはなくその…つまりですね…」
とモゴモゴ口を濁すのを察した俺。
「あ…うん、俺太ってるから乗れないんだね?」
するとフェリクスがギラリと腰の剣を俺に渡して
「ももももも!申し訳ありません!私めをお斬りください!!」
「いや、何で!!??」
フェリクスに何したんだよ過去の俺よ!
「とにかく見てみたいなぁ馬」
「解りました…後で夕飯にお出しするのですね?」
「いやするわけないでしょ!!見に行くだけだよ!!どんな馬なのか!俺記憶ないんだって!生まれ変わるから!前の俺忘れてくんない??」
「はっ…はあ」
フェリクスは怯えながらも馬小屋まで案内した。そこには恐ろしく美しい白馬がいた。
「おおお!やっぱり王子って言えば白馬だな!名前はなんて言うんだこいつ?」
「セレドニオです殿下」
と世話係のカールという中年男が現れた。
「ふーん、セレドニオか…触ってもいい?」
「それは!食べると言うことですか!!??」
カールが泣きそうな顔をした!
「違うよ!!毛並みとか触るだけだよ!食べるわけないだろ!!」
もうやだ!皆俺のこと凄い目で見てくるわ!どんだけ嫌われてたんだ!!
俺はそっと手を伸ばして触って見た。
しかしセレドニオはブルルっと走って行った。
馬さえも嫌ってるのか。
「セレドニオ!戻ってこい!食われるから!王子に食われるから!」
食わねえよ!!
くそー!この体型が全て悪いんだ!見た目が変わると人も変わるって言うし!!
「セレドニオ!待ってろよ!お前にいつか俺は股がってやるからな!」
俺は決心してまず、俺の部屋に大量にあるお菓子を全部出して見た。
出てくる出てくる。あちらこちらから!ベッドの下から枕から。額縁の裏。机の中。本の間。金庫。ありとあらゆる場所からたんまり出てくる!
「太るわ!!こんなん!!フェリクスさん!」
「何でしょう殿下?私目のことは呼び捨てでどうか!!」
「あ…?そうなの?…んじゃフェリクス…このお菓子さあ、街の孤児とか貧しい人に配ってくんない?後、お祖父さんとかから貰ったやつもついでに」
「だだだ!大公爵様からの贈り物ををを!!?孤児にいいいいい!!?」
フェリクスが気絶しそうだ。
「…俺…今後菓子断ちするから。おやつもいらない。朝はパンとサラダとスープ、夜はサラダと魚料理メインで肉は入れないで」
「あああ…ジークヴァルト殿下が本当に生まれ変わられた!!」
フェリクスはシェフにすぐ様伝えに行った。
そして俺はダイエットを始める。宮廷の庭をランニングしたり、スクワットに腕立て伏せ、腹筋、背筋を毎日最初は少ない回数から徐々に増やしていく。
汗は凄い出るしかなりしんどい。
でもやるしかない。
時折ユリウスやエリーゼがそれを見ていた。
見てろよ!お兄ちゃんは変わるから!
馬に乗れる白馬の王子様になるんだ!
トレーニングが終わると俺は毎日セレドニオの所にいって慈愛の精神で眺めた。
少しでも警戒心を解いて貰いたくて餌も持参したりしたが中々俺の手にあるものは食べようとしない。
くっ!負けるか!
*
「何ですって?あの豚王子が痩せるトレーニングを始めた?お菓子を…孤児に寄付したですってええええ!?」
クラウディアは従者のヘンリック・エアハルトからその報告を聞いて驚愕した。
「信じられない!何を企んでいるの?記憶を失ったフリをして!」
「ほ、本当にフリなのですか?」
「私は騙されないわ!何か企んでるのよ!あの豚よ?婚約者を決める時に貴方見てたでしょ?貴族の女性達を広間に集めて!」
「は…はい…あれはお嬢様にはお辛いことでした…」
「そうよ!あの屈辱!私はあいつを許せないわ!絶対に何かある!信じちゃダメよヘンリック!」
クラウディアはギリギリとハンカチを噛んだ。
*
そんなこととは露知らず、俺はトレーニングを終え風呂に入る。風呂に鏡がついている。
だらしない肉の塊を見てうんざりする。どう見てもモテない。前世の俺より酷い。
髪は金髪で目は青いけど体型が全てを台無しにしている。
「俺が痩せて馬に乗れるようになってクラウディアさんも一緒に乗れたら素敵だろうなぁ」
俺は美しい赤い髪の美少女クラウディアさんの見た目は結構好きだった。中身めっちゃ怖いけど!!身体はスラリと細身だけど胸はあるしやっぱり美少女だ。
しかし悪役令嬢がヒロイン位置で本ヒロインが悪役位置なこの世界…本ヒロインがいるってことだよな…。クラウディアさん大丈夫なんかな?なんかあったら助けたいけどこの容姿ではなぁ…つかこの姿じゃ本ヒロインも近寄って来ないんじゃないか?
「早く痩せないと!」
それから数日後、クラウディアさんがやって来た。とうやら前の俺が彼女を毎週定期的に茶会に来いと城に登城させる命を出していたそうで!!
「ご機嫌よう…ジークヴァルト様…あら少し痩せたかしら?気のせいねきっと…」
相変わらず機嫌が悪いり俺やっぱり何かしたんだ!でないとこの態度はない。
俺は恐る恐る聞いてみた。
「あの…クラウディア嬢…俺もしや何か失礼なことを?」
ガチャリとカップを置いてクラウディアは俺を睨んだ。
「本当に都合がいいわ!記憶喪失など!!貴方が私に何をしたか!そうね、ないと言うなら教えて差し上げましょう!貴方はあの舞踏会の抽選で!私に向かって「こいつにする!」と言ってミートパイを私のドレスに投げつけたわ!」
「えええ!!」
俺は驚愕した!なんてことをしたんだ!前の俺最低だ!
「ふん!まだ猿芝居?大方忘れましたー、とか言ってやり過ごす気だったのよね?もう演技はお辞めになられたら?」
「いやいや、そんな!謝罪する!本当にそんな酷いことをしてしまいごめんなさい!本当に記憶がないんだ!許してください!何でもします!」
「では婚約破棄を!」
「ええ…それはちょっと…」
「ほうら!やっぱり!そこだけはしないって何よ!やっぱり私達を騙して私を逃がさない気なのね!!」
まずい!クラウディアさんがますます怒る!
「…俺は貴方の為に痩せるんです!ちゃんと約束は守りますからそれまでどうか待ってください!」
俺はまた土下座した。
彼女は扇子で口を隠し
「なんて醜い豚…」
本来なら不敬罪でクラウディアさんは打ち首発言だろうけど僕は罵られてもとにかく痩せることを考えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます