いない

スイは恐らく召喚術でも使ったのだろうか。

何かがスパークしたような音がした。


『彼は大丈夫なのか?』

おっさんが言った。


『はい。華奢だけど強いっすよ。』


このおっさんと2人は少し嫌だ。


暫く歩くと、木が別れ、ある程度遠くまで見渡せる地点に来ていた。


『あっ。あれ見えますか。』


『………あれかね?』


俺が指差したのは数百メートル先。


そこには「大木」があった。


大木と言うには言葉が追いつかないほどの大木。

ビルよりデカい。


%近づくと目視出来るのは木の足下と中腹だけだ。


全長はわからない。

測れる気がしない。

太さは100メートルでは利かないだろう。

エバーグリーンで唯一、木肌は土色を保っている。上空の枝には緑も見える。


『ユグドラシルって呼んでます。』


『ははぁー。驚いた。これはてっぺんの方は雲を突き抜けとるんじゃないか?』


『ですね。見たことないっすけど。』


『あそこに、不死蝶が集まるのか?』


『あそこはどうですかね?わかりません。たどり着けないから。』


『たどり着けない?あっ。なるほどあの件か。』


『はい。ご存知「あの国」が最近ユグドラシルの所有権を主張してますよね。』



『迷惑な話だ。エバーグリーンは数十年前から我が国の自治下にあるというのに。』


『まあ、それとは別にあそこまで行く必要もないし拠点から遠ざかりすぎるのも危険ですから行く気もないですがね。』


『なんとかしたいなぁ…。』

おっさんが初めて政治家らしく見えた。


『あそこにも不死蝶はいるんだろうか?』


『いるんでしょうね。それかそれ以外の利権が眠ってるか。』


『むぅ……』



『さっ、着きましたよ!』


そこは確かに森の中ではあるが、目の細かい鉄条網に覆われているエリアだった。

暗すぎて奥が見えない。


『ここが「不死蝶の庭」です。一瞬で締めますから急いで入ってください。』


俺はおっさんを促す。


俺達は鉄条網の中に入った。


『く、暗いな…?』


『はい、何故かここだけ植物が黒みがかってて。不死蝶は「光る」ので見つけたらすぐわかりますよ。』


『光るのか…不死蝶は…!』



おっさんは感動しているのか恐れ戦いているのか、呆然としている。


しかしおかしい。


入ってすぐにでも一匹くらい見付かるのだが。


(おかしいな…。)


『不死蝶はどこだね?』


『いや、ちょっと待って下さい…。』


俺は進む。不死蝶を探して。


(どっかに固まってんのか?)


『おいおい、どんどん行かないでくれ。こっちは不慣れなんだ。』


『…。』


見渡しても、気配がない。


左右を見渡し、

一応上を見渡す。


そして次の瞬間頭部に衝撃を受けた。


『かか、カミヲくん!!』


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不死蝶を探して 大豆 @kkkksksk

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