第5話
ゆきの飼い主さんはめいちゃんっていう名前で想像通りとっても優しい人だった。ゆきをお迎えした時にはおいしいご飯もおやつもおもちゃもそろっていてゆきが新しい環境ではやく落ち着けるようにしばらくは触ったり抱っこしたりってあんまりしないようにしてくれた。おかげで新しいお家にあっという間に馴染むことができた。めいちゃんはゆきに「るび」っていう新しい名前をくれた。目がルビーみたいに真っ赤できれいだからだよって教えてくれたけどルビーってなんだろう?
めいちゃんは朝になったらお仕事に行ってくるねって言って夜まで帰ってこない。その間はお昼寝したりおもちゃで遊んだりして一人で過ごすんだけど、思えば産まれてからずっとひとりっきりになったことがないからめいちゃんのいない時間はすごく寂しい。めいちゃんが帰ってきたらおもっきり甘えて遊んでもらうんだ。
人間との二人暮らしっていうのはもっと酷いものなのかと勝手に想像してたけど全然そんなことない。想像の10倍、いや100倍は楽しい。こんなに楽しい毎日があるなんて知らなかった。めいちゃんにもらわれてよかったなぁって心から思うよ。
ある日めいちゃんにお出かけしようかって言われて体に変な紐みたいなのをつけられてた。何されるんだろうってドキドキしてたらすごく広い公園に連れて行ってもらえて、ここで好きなだけ遊ぼうって言ってもらえてクタクタになるまで走り回ったの。ちっちゃい頃からの夢が叶ってるびの人生でこの日が一番楽しかったよ。もこちゃん、夢が叶ったよ、もこちゃんも元気かなぁ。
ときどき公園に連れて行ってもらえる日ができて、その日はくたくたになるまで遊ぶからお家に帰ったきたら眠くて眠くて仕方ない。なのにめいちゃんがるびの頭をなでたりするからもう気持ちよくて、こんなに楽しい毎日がいつまでも続く夢を見ながらぐっすり眠っちゃう。ずっと一緒だよ、るびっていう声が遠くから聞こえてくる。
幸せな毎日が続いて、るびの体がだんだん重く疲れてくるようになった。公園に行っても前みたいに走り回れないし、眠っている時間も増えたような気がする。この間公園に行った時にあんまり走らないでゆっくり遊ぶるびにめいちゃんがシロツメクサ?っいうお花で冠をつくって頭に乗っけてくれた。こういう風にゆっくり過ごすのも悪くないね。めいちゃんはどうしてそんなちょっと悲しそうな顔をするの?めいちゃんとのお別れが近いなんてことはるびにだってわかってるから、めいちゃんにはニコニコ笑っていて欲しいな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます