第4話
ペットショップはそこそこに自由に生きてこれたゆきにとってかなり異質な空間だった。常にケージの中に閉じ込められて人間たちがかわいい、あの子がいい、なんて品定めしていく。なるほど、たしかにちっちゃい子供たちの方がもらわれていく確率が高いんだね。どのこも愛想振りまいてなるべく優しそうな人間にもらわれようと必死になってるのを毎日見ているとなんだか辟易してしまった。ゆきはもう大人だから、どうせもらってくれる人なんていないだろうなぁって思ってたから特に媚びを売るでもなくいつも通りまったり過ごしていた。ここに来てどれくらいたったかなぁ。
「すみません、この子里親募集って書いてるけどどうしてなんですか?」
お昼寝から目を覚ますと女の人がゆきのケージの前で店員さんに話しかける声が聞こえた。
「この子はブリーダーさんのところでママをしていて、このあいだ引退したんです。なので新しい飼い主さんを募集しているんですよ。」
そうそう、ゆきはもう大人だから隣のケージにいるちっちゃい子の方がいいと思うよ。
もう一言二言会話をしてどうにもゆきを抱っこしてみることになったみたい。ゆき抱っこ苦手なんですけど…
ケージから強制的に出されて女の人の膝の上に乗せられる。安定してない気がしてちょっとこわいな。
でも優しく背中や頭を撫でられて悪い気はしなかった。今までも抱っこされたり、撫でてもらったことはあるけどなんとなく違う気がする。この人がゆきのこともらってくれるのかな?もうゆき赤ちゃんじゃないけどいいの?
「あなたかわいいね。私のお家に来てもらってもいいかな?」
そう言われてゆきは声が出ないからお返事できない代わりに女の人の目をじーっと見つめた。
これから一緒に暮らすゆきの飼い主さん、なんだかちょっと寂しそうなお顔してるのね。
これからよろしくね。そんな意味を込めてぷすっと鼻を鳴らしたら優しそうな笑顔をみせてくれた。
ゆきの飼い主さんはゆきのことをおうちにお迎えする準備をするために3日後に迎えに来てくれることになった。快適に暮らせるようにって色々店員さんに聞いていて、この人のところで暮らすのがだんだんたのしみになってきた。どんな毎日になるのかな。昔から夢だった原っぱで思う存分走り回ることも出来たりするのかな。もこちゃんが前にゆきちゃんがいい子にしてたら将来できるかもねっていってくれたからいい子でいよう。お迎えに来てくれる日が本当に楽しみだなぁ。
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